1月28日に埼玉県八潮市で起きた道路の陥没をきっかけに、関西各地でも緊急点検が始まっている。私たちの道路は、本当に安全なのでしょうか。
■【動画で見る】『道路陥没』はどこで起きてもおかしくない 各地で下水管の緊急点検始まる

31日午後、和歌山市で始まった下水道管の緊急点検。 これから1週間、腐食の恐れが大きい29カ所で点検を行うという。
和歌山市企業局下水道部下水道管理課 神崎孝朗課長:やはりこういう事故を受けて、緊急的に点検したいなということでやっております。
■埼玉の道路陥没現場、日ごとに穴が拡大
1月28日、埼玉県八潮市の道路が陥没してトラックが転落。 穴は日を追うごとに拡大していて、現在も74歳の男性運転手が取り残されたままとなっている。

専門家によると、下水道の破損箇所から土砂が流れ込んだことで空洞ができ、その上を走っていたトラックが転落。 その後、トラックの荷台部分を引き上げた際、土砂にかかっていた圧力のバランスが崩れ、新たな陥没ができた可能性があるということだ。
現在、穴は直径およそ40メートル、深さ15メートルで、このうち8メートルが土砂に埋まっているとみられる。
■日本中のどこでも起こる危険性
専門家は、今回のようなケースは日本中どこで起きてもおかしくないと指摘する。

神戸大学大学院工学研究科 小池淳司教授:皆さん知っているところで言えば、博多駅前のところ、広島、こういったところは周辺の工事が原因で陥没事故が起こっている。(一方で)埼玉の件で言えば、下水菅の腐食・老朽化。これによって起こっているということは、ある意味でどこでも起こる可能性がある。
国土交通省は、大阪府や兵庫県など、全国7つの自治体に下水道管の緊急点検をするよう指示。これを受けて、兵庫県尼崎市など関西の自治体が次々と点検をスタートさせた。
■堺市では独自の点検作業スタート
記者リポート:堺市では、数カ所でマンホールを開けて内部調査を行っています。

30日から、市独自の点検作業を始めた堺市。 国の緊急点検の対象となる下水道管はありませんが、直径2メートルを超える古い下水道管については、カメラなどを使い中を確認する。映し出された水道管に大きな異変はないようだ。
担当職員:大丈夫ですね。管もきれいですし。異常ない、はいOKです」 31日に検査した下水道管では、腐敗などの異常は確認されませんでした。
■腐敗が進んだ下水管はどうなるのか
では、腐敗が進んだ下水道管はどのような状態になるのでしょうか。

自治体から依頼を受けた民間の調査会社が撮影した映像では、管の天井部分が変色している様子が見られた。下水道の中で発生した硫化水素により、管の上部のコンクリートが溶けているのだ。さらに、管が破損し水が噴き出るような状況も。
これまでは、点検でこのような異常を発見し、対策をとってきた。
■「緊急の対応必要なし」埼玉の事故現場はB判定だった
一方で、今回の埼玉県での事故は、こうした点検の”基準”を揺るがす事態となっている。

点検で、傷が深く外側の鉄筋が見えてしまっている場合は「A」判定で“早期に再調査”。
内側の骨材まで来ていると「B」判定で“5年以内に再調査”。 表面が変色していると「C」判定となります。
しかし、埼玉県の事故現場で2022年に行われた調査の結果は「B」判定。「緊急の対応は必要ない」という評価だったのにも関わらず、今回の事態が発生したことになる。
■想定外の事故にどう対応すればよいのか…
この状況に、自治体からは、対策が難しいと困惑する声もあがっている。

堺市上下水道局下水道管路部 藤秀樹さん:今まで検査していた中で、気づかない想定外の事故が今回起きたと感じている。堺市でも適正な維持管理に努めていきたい。
全国各地に潜むインフラ老朽化の危機。 最悪の事態にならないために、対策が急がれる。
■このままでは10年後、関西の大都市で多くの下水道管が耐用年数を超えることに
予期しない形で突然起きた道路陥没。道路を利用する生活者としては防ぎようがないが、点検のあり方を考える必要があるのかもしれない。

下水道管の耐用年数は50年とされているが、大阪市、京都市、神戸市の下水道管が現状どうなっているのかまとめる。
総延長というのは全部をつないだらこれぐらいの距離があるということだ。
そのうち50年を超えるものは、大阪市でおよそ半分、京都市で約21パーセント、神戸市では約20パーセントとなっている。
このまま何も対策をしないまま約10年たったとして2033年度には、50年を超える下水道管は最大で大阪市が67.4パーセント、京都市が約50パーセント、神戸市が45パーセントとなるす。京都と神戸は現在の倍以上が耐用年数を超えてしまうことになる。
■目に見えないインフラ投資「国民が寛容になる必要」専門家が指摘
インフラの老朽化が深刻な状況となっている。

関西テレビ 神崎博報道デスク:耐用年数の50年は一つの目安です、50年で補修なり交換なりしていきましょうということですが、実は今回の埼玉の事例では42年ほどしかたっていなくて、これだけ大きな破損が起きているということです。これまで50年だと思って構えていた自治体にとって大きなショックです。もっと早い年数でこんなことになることもあるということで、基準を見直さなければいけない事態になっていると思います。
私たちはどうすればよいのか。専門家の意見として、神戸大学大学院の小池淳司教授は、「国民が(地下の)目に見えないインフラ投資に寛容になる必要がある。予算確保とそれへの国民の理解は不可欠」と話した。

地面の中でのことなので分かりにくいですが、人命にもかかわる問題だ。
ジャーナリスト 浜田敬子さん:どうしても政治家の人たちも分かりやすい政策、例えば給食の無償化とか教育無償化とかを優先しがちなんですけれども、やはり誰にも関わるインフラなので、ここに対してどういうふうに今後対策をしていくのかというのは、私たちも理解を深めなければいけないですよね。
私たちみんなが考えていく必要がある問題だといえるだろう。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年1月31日放送)