映画の「盗撮」や「違法アップロード」。
8月21日には、劇場版「鬼滅の刃」を映画館で盗撮した疑いで、韓国籍の専門学校生(24)が逮捕されました。
横行する違法行為の実態を取材しました。
■映画の大ヒットの裏で犯罪行為が横行
取材班が訪れたのは夏休みの映画館。
【記者リポート】「平日の昼間にもかかわらず、大勢のお客さんでにぎわっています!」
歌舞伎を舞台にした作品「国宝」の大ヒットや、根強い“鬼滅人気”などで今、映画館は連日大盛況!
しかし、大ヒットの裏で、「盗撮」さらには「違法アップロード」が横行。
取材班は、違法行為を監視する“デジタルGメン”のもとへ!
【著作権侵害対策団体】「日本のアニメが放映された瞬間、海賊版サイトに出てくる」
【民放連の啓発映像より】「つかまるよマジで」
「newsランナー」緊急取材!狙われる“日本作品の実態”とは。
■「国宝」「鬼滅の刃」…“映画ブーム”到来
途切れることなくやって来る人たち…。
20日、大阪府・茨木市の映画館は子供からシニアまで大勢のお客さんでにぎわいました。
(Q.何を観に来た?)
【来館者】「鬼滅の刃の映画」
【来館者】「国宝。何年ぶりかしら映画なんて」
【来館者】「(クレヨン)しんちゃん!泣いた」
(Q.お父さんも泣いた?)
【来館者】「いや僕は…」
【来館者】「寝てた、寝てた、ちょっと寝てた!」
大ヒット中の作品、「国宝」は、実写の日本映画では22年ぶりに、興行収入100億円を突破!
劇場版「鬼滅の刃」は、興行収入なんと、257億円を突破!
勢いが止まらない映画市場。
【イオンシネマ茨木 金子尚行総支配人】「動画配信サービスもあり、映画館に足を運ばない方も多かったが、今は若い方中心に、映画館をご利用いただいている印象」
夏休みの今、まさに“映画ブーム”が到来しているのです。
■「盗撮」 そしてSNSで横行する「違法アップロード」
しかし人気の裏で、ある警告が…
【「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来の製作委員会」公式HPより】「本編映像を“盗撮した”映像がインターネット上に見られます、犯罪です」
7月、劇場版「鬼滅の刃」の製作委員会は、盗撮被害が多発していることから、「刑事告訴を含む厳正な対処方針」を公表しました。
そして8月21日、逮捕者も。
劇場版「鬼滅の刃」を映画館で盗撮した疑いで、韓国籍の専門学校生(24)が逮捕されました。
実際にSNSを見てみると、映画館の誘導灯とみられる光が映り込むアニメ作品が…
■SNSへの違法アップロード 「やめてほしい」「結末知ってしまった」と街の人
さらに、街で聞いてみると。
【街の人(18歳)】「『TikTok』を見ていて、(映画)まだ見てなかったのに流れて来たから、は?みたいな。結構多いですよ」
【街の人(10代)】「(SNSで)流れてきてバーって。僕は映画見る前に、知っちゃいました結末を」
【街の人(10代)】「自分は見んようにしとるけど、やめてほしい」
いま「盗撮」、そして「違法アップロード」が横行しているのです。
■「NO MORE映画泥棒」 映画館は「上映中に巡回」「目視では限界も」
では現状、映画館はどのような対策をしているのでしょうか?
上映前にはおなじみのカメラ男とパトランプ男が“罪の重さ”を伝え、盗撮や録音などをしないよう呼びかける動画。
【映画館で上映される啓発動画より】「劇場内での映画の撮影、録音は犯罪です」「不審な行為を見かけたら、劇場までお知らせくださいNO MORE映画泥棒」
そして映画の上映中には…。
【イオンシネマ茨木 金子尚行総支配人】「こちらのスロープから劇場内のチェックを行います。中は暗いので、携帯電話に触れている方は、光で分かったりもしますので、見逃さないように注意しています」
この映画館では、劇場内をスタッフが20分に1度、巡回。スマートフォンを触っていないかなどをチェックし、怪しい行動を見つけ次第、声をかけるということです。
しかし、目視では限界も。
【イオンシネマ茨木 金子尚行総支配人】「昔はビデオカメラも大きい物で分かりやすかったが、今はスマホであったり、見つけられないという部分もあるかなと…。周りのお客さまからの声も大事、見つけたらスタッフに声をかけていただきたい」
■盗撮を目撃し通報「ちゃんと取り締まって厳正な対処を」
そんな中、取材班は映画館で盗撮を目撃し、通報した人に話を聞くことができました。
【盗撮を通報したAさん(20代)】「携帯電話を最初いじってるのかなって思ったんですけど、その方は携帯電話を横にした状態で、何回もスクリーンに向けて映していて」
Aさんは8月、映画館で「鬼滅の刃」を鑑賞。前方で盗撮している人を見つけ、スタッフに通報しました。
【盗撮を通報したAさん(20代)】「『鬼滅の刃』って僕も大好きですし、クリエイターの不利益になる行動なので、ちゃんと取り締まって厳正な対処が必要だと思う」
また、違法な行為は、映画の世界だけではありません。
日本民間放送連盟は、「テレビ番組をインターネットにあげる行為も違法になる」と啓発しています。
それでも無くならない「盗撮」に「違法アップロード」を取り締まる術はあるのか?
■365日24時間チェック体制“デジタルGメン”
取材班が訪れたのは、違法にアップされた動画などを監視する団体「CODA」。
経済産業省の支援のもと、著作権を守るため24時間、365日チェックするいわば“デジタルGメン”です。
【CODA 青山隆行管理本部長】「日本のアニメが放映された途端、映画館で放映された直後に、海賊版サイトに出てくる状況に。スマートフォンの普及があり、世界中で海賊版が氾濫するようになったので、全世界で日本コンテンツの海賊版対策を実施している」
日本のコンテンツの被害は全世界に及び、その被害額はなんと推定2兆円にものぼるというのです。
【CODA削除センター責任者】「こちらが海賊版サイトの1つです。日本のアニメが多数アップされています。これは映画館ぽいですね。日本ではないですね。あげてる人はベトナム人っぽい」
(Q.“違法アップロード”最近のトレンドは?)
【CODA削除センター責任者】「著作物名が分からない形で、エピソードの1~12と書いてあったり、『1から12が全部見られますよ』と」
■デジタルGメンでも「全て削除は難しい」
巧妙化する違法アップロードの手口。
CODAは映画会社や、出版社などの会員社から依頼を受け、動画投稿サイトやSNS、海賊版サイトなどあらゆるプラットフォームをチェックし、違法動画を見つけます。
そして依頼された会社から削除の要請を受けると、即座にそのプラットフォーム側に通知を送るのです。
削除の通知は、2011年度はおよそ6万2000件でしたが、2023年度にはおよそ88万件と、10倍以上に。
削除率はおよそ75%となっていますが、全て削除するのは難しいといいます。
【CODA 青山隆行管理本部長】「正規のプラットフォーマーだと、削除要請に応じてくれるケースがあり、削除率も高い。しかし、海賊版サイトについては、削除要請に応じてくれないケースがある」
アニメ、映画、ドラマと…世界で高い人気をほこる日本の映像コンテンツ。
大切な権利を守るために、みなさん違法な動画は見てはいけません。
■YouTubeに無断アップロードで5億円の損害賠償のケースも
映画やテレビ番組などを違法にアップロードしたときの罪は、「10年以下の拘禁もしくは1000万円いかの罰金または併科」です。
菊地幸夫弁護士は「民事で賠償請求される可能性もある」と言います。
【菊地幸夫弁護士】「違法なアップロードで損害賠償を請求されたという事例があります。“YouTubeに無断で作品をアップしていた”ということで、このケースだと5億円の賠償を命じられた、あるいは、漫画作品を海賊版のサイトに“無断であげてた”という例で、何とこれが17億円という賠償命令が出てるという事例もあります」
動画の違法アップロード以外に私たちの身の回りに起き得ること
・“違法動画”を自分用に保存する
・文字だけでネタバレをSNSに投稿
【菊地幸夫弁護士】「自分でダウンロードする。これは『誰にも分からないし、自分1人で楽しむんだからいいだろう』違うんですね。これも著作権法違反ということで、2年以下の拘禁刑200万円以下の罰金というような刑罰になっております。
ネタバレの方は、これも安易にやってしまうと、先ほどありましたね、『結論知ちゃったんだ』という方が、結局映画館に行かないと、配給会社が損しちゃうわけですね。…というような賠償請求を受けてしまう可能性もないとは言えないので、注意していただきたいと思います」
■違法アップロードの捜査は海外の警察との連携も まずは「映画の盗撮を止める」ことができること
警察庁でサイバー捜査課長を務めた棚瀬誠さんは、「取り締まりは難しいが、映画の盗撮なら止められる」と話します。
【棚瀬誠さん】「取り締まりは、難しいといえば難しいんです。特に違法にアップロードされたアップロード先が、もはや日本ではない可能性がありますので、日本の警察と海外の警察が連携をして、実際に捜査を進めていくことになります。漫画の海賊版サイトを検挙した例もありますので、難しいと言っても検挙はできるのですが、ただそこに手間隙がかかるとすると、この間の著作権侵害というのは引き続き継続しておりますのでここをどうするのかと。
今回、映画なので、映画はアナログで盗撮していますから、ここが1つ。アナログに対応できる。すなわちここを止めれば、違法にアップロードされないので、映画については映画館のスタッフとの協力も得ながら、少しずつ、止められるんじゃないかなと思います」
まず盗撮している人を取り締まることが鍵だということです。
(関西テレビ「newsランナー」2025年8月21日放送)