長野市のJR長野駅前で起きた殺傷事件から1週間が経過した。容疑者は逮捕されたものの、市民の不安は依然として続いている。事件発生後は2日でのべ4800人もの小中学生が登校を控えるなど、街全体に大きな影響を与えた。県や市は相談窓口を設置し、心のケアに取り組んでいるが、多くの市民がいまだ恐怖や不安を拭い切れずにいる。
「心が痛くて通れなかった」
1月22日夜、JR長野駅前で発生した事件では、男女3人が刃物で襲われ、49歳男性が死亡、37歳男性が重傷、46歳女性が軽傷を負った。4日後の1月26日、長野市の無職・矢口雄資容疑者(46)が女性に対する殺人未遂の疑いで逮捕された。

事件から1週間となる1月29日、長野駅前では多くの通勤通学の人が行き交う中、事件現場では花を手向け、手を合わせる人の姿が見られた。

献花した女性は「事件から1週間がたっても心がとても痛くて、(現場を)ここ1週間通れなかった」と語り、「これから先も覚えていきたい」と述べた。
「夜1人で帰るのが怖い」
事件の影響は市民の日常生活にも及んでいる。
女子高校生は「夜1人で帰ることが多くてきょきょろ周りを見て、怖い」と話し、女子大学生も「周りや夜道に気をつけたい」と不安を口にした。会社経営者の男性も「不安な心境になります。いつ自分の身にかかるか分からない怖さがある」と話した。

長野駅前の飲食店では、事件直後に予約のキャンセルが相次いだ。ウインズ長野店の田中正之オーナーは「ちょっと気分的に、静かな、落ち込んでしまっている方もいます」と街の雰囲気の変化を感じている。
子どもの不安に寄り添う
専門家は子どもたちへの影響を懸念している。
新潟青陵大学大学院の碓井真史教授は「大人は容疑者逮捕で安心できますが、子どもは必ずしもそれを理解できません。子どもが不安がっていることを否定しないで、抱きしめてあげることが必要」と指摘する。

長野県や長野市の保健所が設けた相談窓口には、1月28日までに42件の相談が寄せられた。
長野県保健・疾病対策課は「不安を感じる人がいたら寄り添って話を聞き、不安が長引く場合は医療機関や相談窓口に相談してほしい」と呼びかけている。
県と市保健所は当面、電話相談窓口を継続することにしている。
(長野放送)