子供からの「赤ちゃんはどこから来るの?」という疑問に、「お空から飛んできたかなぁ」や「コウノトリが運んできた」などと答えている人は性教育について学び直しが必要かもしれない。長崎市内の学校や保育所などで性教育を行う女性が身近な、でもあまり人に聞きづらいという性の質問にズバリ答えた。
小学4年男児に「ママと一緒にお風呂入りたい」と言われ・・・
長崎県大村市の国立病院機構長崎医療センターの麻酔科の医師であり、性教育認定講師でもある岡田恭子さん。

岡田さんは2020年から学校や保育所などで性について学ぶ講座を行っている。岡田さんは子供だけではなく、大人への教育にも力を入れていて、この日は、小学4~6年生の子供を持つ保護者と「性」に対する座談会を開いた。
座談会では、家庭での様々な悩みが集まった。

4年生の男児の母親:4年生になる息子から一緒にお風呂に入りたい、4年生だしそろそろ一人で入ったら?と言うけど入ろうとしない。私自身、一緒に入ることが「嫌」だと思うようになってきたけど、ママと入りたいというのを拒むのもどうなんだろう
小学4年生になると、個人差はあるものの男女ともに体つきが変わるころ。息子の体の変化を感じつつも、子供の気持ちも蔑ろにはできない母親の葛藤がある。この悩みに岡田さんの答えは。
医師・性教育認定講師 岡田恭子さん:「ママも一人で入りたいしさ」って伝えていい。お兄ちゃんとずっと小さい頃から入っている女の子がいつまでも一緒にお風呂に入っている家庭があって、女の子は楽しいからお兄ちゃんと一緒に入りたいと言う、ずっと一緒にいると大人になってくる実感がない。正解はない、個別の事情がある。ただ公衆浴場が異性が入れる年齢が10歳以上から6歳以上に年齢が引き下げられた。それはなぜか。あなたの体を狙った大人がいる、あなたの体はあなたが自分で守らないといけない認識があるかが大事
「お風呂いつまで問題」については疑問に思う親も多いが、岡田さんは「それぞれの生活環境や発達状況があるため、一概に何歳までと決められない」としながらも、「子供の体つきが変化する前に別々に入るのがいい」と話す。また親が違和感や抵抗感がある時はその気持ちを子供に素直に伝えていいとしている。
高校生になったらセックスしていいの?
このほかにも性についての疑問や不安は大人も子供もつきない。

子供からの質問に大人がどう答えたらいいか、子供の行動にどう対処したらいいかなど、Q&Aで岡田さんの答えをまとめた。

Q.生理ってなに?
A.毎月、赤ちゃんのベッドを準備したお布団が出血とともに出てくる。毎月約100cc出血して、腰がねじれるような腰痛や頭痛、腹痛などの生理痛があって、ひどい人は立ち上がれないほどの人もいる。ホルモンの影響で気持ちが不安定になることもある。女性はその痛みや精神的な負担に耐えながら仕事や家事・勉強などをしている。「それが毎月来るつらさと大変さを想像してみてほしい」と伝えることも大事。
Q,子供がエッチな動画を見ていたら?
A.広告やYouTubeなどでうっかりアダルト動画流れてトラウマになることもある。「ビックリしたね、あれはお金をもらって仕事・演技としてしている。同意がない、避妊をしない、女の人が嫌がるような行為はしないで。(年齢によっては)まだ見てほしくない」と伝えるなど
Q.高校生になったらSEXしていいの?
A.自分の体をどう扱うかは自分で決めていい。ただ「お互いにしたいという明確な同意」「お互いに嫌だと言える関係性か」「お互いの体の仕組みを知っていること」「避妊・感染症に対する知識を持っているか」「妊娠・感染した時に相談できる相手がいる」ことを理解した上で行う。

Q.自分の性器を触っている子供に何といえばいいか。
A.自分の体は自分のもの、見ても触ってもいい。触る時は自分だけのスペースで、清潔な手で優しく触ること。
「嘘をついたり、ごまかさない」一緒に勉強することが大事
そして「赤ちゃんはどこから来るの?」という質問。
一度は子供から聞かれたという人も多いかもしれない。5歳までに9割の子供が質問するという質問に親が「お空からぴゅーんと飛んできて」や「コウノトリが運んできた」などと答えると、子供は幼いながらも「ごまかされた」「嘘だ」と感じるため、「あまり聞いちゃいけない話だったのか」と、子供がその手の話をしづらくなると岡田さんは語る。
岡田さんは「子供はその仕組みを知りたいわけではない。幼稚園や小学校にお腹の大きな先生がいて「赤ちゃんがいるんだよ」と言われ不思議に思い、そう質問してくることもある。」とした上で子供の理解度に合わせて親がどこまで伝えたいかで答えが変わってくるのだという。
言葉の理解度がまだ低い幼い子には絵本などでイラストを見せることもおすすめだ。子供は経験していないので絵を見て「気持ち悪い」という感情を持つことは少なく、「お母さんとお父さんの卵が一緒になって大きくなったら赤ちゃんになるんだよでいい。「受精の仕組み」や「妊娠の経過」を事細かに説明する必要はない」という。
仮にその場できちんと答えられず、返答に困った時は「いい質問だね、調べておくね」や「お母さんも知らなかったから一緒に勉強しようか」と真摯に返すことで、子供はその時に答えをもらわなくても、「また聞いていいんだ、相談してもいいんだ」と信頼関係の構築にもなり、その後トラブルに巻き込まれた場合でも深刻化を防ぐことにもつながる。ごまかしたり、嘘をついたり、否定しないことが大切だ。
医師の仕事の休みの日は性教育認定講師として、学校や保育所などで性教育の授業を行う岡田さん。自身も中学生と高校生の子供を持つ母親だが、もともと性について話すことが苦手で家でも話をしたくなかったため、自分の子供に対して性教育をしてこなかったという。しかしある日、小学4年生の時娘が学校からナプキンを持って帰ってきて「あ、この子に生理のこと教えていなかった」と気づき、その後学校での性教育があまり十分とはいえない状況に、「学校だけに任せずに自分が教えなくてはいけないんだ」と性教育の本を買いあさったという。しかし、性は相手もいることだから自分の子供だけ教育してもだめ、地域で底上げする必要性も感じ、性教育認定講師として活動を始めた。

岡田さんは「性について学ぼう、子供に教えなければと肩肘をはる必要はなく、子供との何気ない会話の中で普段から体についての話題に触れたり性への認識を共有すること、子供も大人もそれぞれの気持ちを尊重し、共感することも大切だ」と、多くの人に性を学ぶきっかけをと活動を続ける。
(テレビ長崎)