2025年1月20日(日本時間1月21日未明)、第47代アメリカ大統領にドナルド・トランプ氏(78)が就任した。不法移民対策やパリ協定からの離脱など就任直後に42本もの大統領令に署名するなか、各国が注視しているのが『関税』の追加だ。
「返り咲き」の影響で広がる懸念
トランプ大統領は既に2月にもカナダとメキシコに対し25パーセントの関税を課すことを明らかにしているほか、中国についても10パーセントの追加関税する方針を示している。

日本については言及していないが、選挙期間中、主要な貿易相手国に対し一律10パーセントから20パーセントの関税をかけると発言していたトランプ大統領。九州・山口からもアメリカへの輸出産業は、総額1兆6千800億円もの金額が動いている。トランプ大統領「返り咲き」の影響は既に表れ始め、懸念は福岡でも広がっている。

福岡・広川町で創業70年を超える農業用機械メーカー『オーレック』。主力は自走式の草刈り機。国内に限らず、今は全体の約2割が、海外での売上げで、ヨーロッパやアジア、そして北米に販路を拡大している。オーレックの常務取締役、今村健人さんは「これから大きくしていこうと考えている我々には、すごく懸念材料のひとつになっている」と不安を隠さない。

「最近は特に北米の方ではゼロベースで設計開発。現地に合わせた機械というのも企画開発を行いまして、最近はそういった機械が評価されることで今は売上げも伸びて行っているという状況」(今村健人・常務取締役)という矢先のトランプ大統領就任。

農業や緑地管理に使われる草刈り機だけでなく、その技術を活用して開発した「除雪機」がアメリカでは人気で、これからますますの事業拡大を狙っていたが、関税の問題が浮上したのだ。
“輸送費高騰問題”が浮上
「新たに行われる関税に関しては、ちょっと私たちも未知数で、非常に懸念をしていますが、現在、直接的に受けている影響としては、コンテナの費用がすごく高騰していて、輸送費が結果的に上がってしまうという影響は受けています」と今村常務は表情を曇らせる。海外輸出の際に使う船便のコンテナ輸送費が早くも高騰しているというのだ。

アメリカが中国に対し追加関税を表明したことで、中国がアメリカに向けて「駆け込み輸出」をしている状況で、輸出用コンテナの確保が難しく、結果的にコストが上昇しているという。今村常務は「コンテナ輸送のコストとかが直に業績に影響してくる。今後、成長戦略を描く上で、経費の高騰はやはり気にしている」と輸送費の高騰が、懸念材料のひとつになっていることを主張する。

早くもさまざまな動きが出るなか、トランプ政権は福岡、そして九州全体の経済にどのような影響を及ぼすのか。
九州経済支える自動車産業への影響
「やはり金額でいうと一番大きいのが自動車産業。輸出に関連すると自動車、或いは、それに付随するタイヤとかエンジン、フレーム、そういったところを作っているメーカーに与える影響が一番大きい」と語るのは、九州経済調査協会研究員の河村奏瑛さん。九州の経済を支える一大産業である自動車産業への影響を指摘している。

門司税関のまとめによると山口県を含む九州経済圏の輸出先としてアメリカは3番目に大きく、総額は約1兆6千800億円。その6割以上を自動車やその関連部品で占めている。

九州での競争激化を背景に日産自動車は、北九州市若松区の響灘地区にEV=電気自動車のバッテリー工場を新たに建設することを発表した。地元から大きな期待が寄せられている新工場建設だが、トランプ大統領は各国への追加関税に加え、パリ協定からの離脱を決めるなど各国のEV市場への影響が指摘されている。

日産自動車の坂本秀行副社長は「当社の問題、九州の問題、日本の自動車産業の問題になりますので、なんとしても乗り越えなければならない」と決意を新たにする。

円安が進めば冷え込む消費
一方で私たち消費者の生活に影響はあるのか。「アメリカの政策金利と日本の政策金利の差が開くので、最終的には円安が進行する。円安が進行することで、引き続き物価の高騰が進み、それによって消費者の消費マインドが今以上に冷え込んでしまう。一番恐れられる波及効果ではないか」。河村研究員によると関税でアメリカ国内の物価が上昇し、インフレが進めば利上げする可能性が高まり、結果、円安が進行しかねないと指摘する。

「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領の手腕は果たして世界にどれだけの影響を与えるのか。福岡でもその警戒感は高まっている。
(テレビ西日本)