沖縄県で神の島と呼ばれる久高島(くだかじま)。この島の海で400年前から行われてきた漁で獲れるのがイラブー。この海の幸を活かした郷土料理はイラブー汁と呼ばれ、滋養強壮に優れ、琉球王朝時代から重宝されてきた。
久高島の400年の伝統の漁とイラブー汁について取材した。
琉球王朝時代の宮廷料理のひとつ
沖縄県本島中部・北中城村に店を構える創業43年の「カナ」。

ここで味わうことができる至極の一品は、地元の人だけでなく県外の人もとりこにする。
客の女性:
私は4回目です。食べる前は”興味”ですよね、どんなものなのかみたいな

客の男性:
神秘的過ぎて言葉にできないです

その料理は「イラブー汁」。琉球王朝時代の宮廷料理の一つで、滋養強壮に優れると言われている。

イラブー料理「カナ」・我謝泉さん:
浄血作用、解毒作用、いわゆるデトックス効果があると言われていて、食べてるうちに血行が良くなる

丸く筒状のものがイラブーと呼ばれるもので、表面を見ると鱗も確認できる。
このイラブーが獲れるとされる久高島へ向かった。
かつては女性が担った伝統の漁
沖縄本島から船で25分の距離にある人口約200人の久高島では、島の女性が神に仕える「神女」(かみんちゅ)になるための神事イザイホーが行われてきた。

※イザイホ―とは
久高島で12年に1度行われる神事。1978年を最後に行われていない。
神の島と呼ばれるこの地で400年以上も前から行われているのがイラブー漁。

イラブーとは、ウミヘビのことで、かつては漁をすることを許された女性のみが行っていたが、担い手の不足により現在は島出身の男性3人がその伝統を引き継いでいる。
漁は日が落ちて、産卵のために岩の割れ目にやってきたイラブーを狙う。
「素早く獲らないといけんよ、早さが大事」と漁の心得を話すのは、糸数勝治さん。

イラブーは光に敏感で漁は暗闇の中で行われ、竿や網などの道具は使わない。

イラブーは、猛毒があるとして知られるハブのおよそ60倍の毒があると言われてるが、手づかみして大丈夫なのか?聞いてみると

西銘武良さん:
最初は怖かったんですけど、慣れたら楽しみでもある
漁は旧暦の6月から12月まで行われ、日をまたぐ時間まで行うこともあり、西銘武良さんは、「漁の最中は暗い海で孤独」と話す。
イラブーの生命力が滋養強壮の源
漁で獲れたイラブーは、島にある保管小屋に集められる。
何も食べなくても数週間は生き続けるそうで、この生命力こそが滋養強壮の源となっている。

まとまった数になると燻製小屋へと運び。一週間いぶされ、水分が抜けて元の大きさから4分の1ほどになったイラブーは炭のように固くなる。

いぶされたイラブーは、たわしで磨き表面のすすを落としたあと室温が18度に保たれた保管庫に移動させるそうで、西銘さんは、「まだ内に熱があるため、冷やさないとカビが生える」と説明する。

島では今年1200匹ほどが出荷されるということで 近年では沖縄料理以外にもイタリア料理やフランス料理でも用いられているという。
母が守り続けた味を娘が受け継ぐ
久高島のイラブーを味わうことができる「カナ」では、母・藤子さんが守り続けた味を、娘の我謝泉さんが受け継いでいる。

豪快に専用の包丁でカットしたあと、圧力鍋でしばらく煮たイラブーの身。このあと手作業で小骨を抜いていく。

形を整えた後また煮込み、作業を続けることおよそ50時間。ようやく完成する。
沖縄テレビ・平良匠アナウンサー:
まずは汁から。優しい味で、うまみがギュッと詰まっています。歯ごたえはあるけど柔らかく身もクセがないですね

客の女性:
最初の時は恐る恐るという感じだけど、くせもなく臭みもなく
客の女性:
奥深いな。そういうものを食べられてすごい不思議で幸せな感じ
イラブー料理「カナ」・我謝泉さん:
久高島の人の思いも手間もかかっているので、イラブー汁のおいしさを感じてほしいです

ことしは巳年、この機会に沖縄のイラブー料理を味わってみてはいかがでしょうか。
(沖縄テレビ)