スマホで電動アシスト自転車探して利用

7月30日、31日の2日間、国内最大級のスタートアップカンファレンス「Infinity Ventures Summit 2020」が開催された。
2020年で13年目を迎えたイベントは、新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となった。
オンライン開催により多くの登壇者が駆けつけ、カンファレンスは活況に沸いた。
その中でも最大の注目を集めたのが、スタートアップ企業が登竜門として新規プロダクトを発表する「IVS Launch Pad」だった。
過去には「freee」「Wantedly」「クラウドワークス」などの企業が登壇するなど、スタートアップ企業がビジネスを加速させるきっかけとなってきた。

その「IVS Launch Pad」で「21世紀のJRになる」と訴え、2020年準優勝したのが、スタートアップ企業の「LUUP」。電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを展開している。
新型コロナウイルスの感染拡大で、シェアサイクル業界では、3密を避けるユーザーの利用が伸びている。
そんな状況下でサービスを急拡大させるLUUPとはどんな企業なのか。

緊急事態宣言解除後の5月25日から、LUUPは渋谷区を中心に小型電動アシスト自転車のシェアリングサービスを開始した。
ユーザーはスマホアプリで、町中に設置されたポートに置かれた、全長110センチメートルの電動アシスト自転車を探すことができる。

利用したいモビリティが見つかればスマホでロックを外し、LUUPのポートまでの移動に利用できる。
LUUPのビジネス展開の特徴の1つは、電動アシスト自転車を置く「ポート」を簡易なものにしている点だ。
LUUPのポートは、緑色のテープで囲っただけの簡易なスペースとなっていて、狭くても空きスペースさえあれば、1台からモビリティを置くことを可能としている。

ポートを設置するにあたっての心理的ハードルを低くすることで、短期間でのポート数増加につなげようという戦略だ。このため、個人経営の店舗、一般住宅の軒先にもポートが設けられている。
今後徒歩2~3分で必ずポートが見つけられるように、ポートを「高密度化」することで、利用者が歩く予定だった1~2キロの距離を、モビリティで移動できるようにしたいという。

もう一つの特徴として、「近距離の移動」をターゲットにしていることが挙げられる。
想定している電動アシスト自転車の利用時間は15分から30分程度。
また、初乗り料金は10分100円で、それ以降は1分15円に設定していて、タクシーの初乗り料金で行ける範囲を超えて利用しようとすると、タクシー料金を上回るような料金体系を意識しているという。
ゆくゆくは通勤での利用をさらに促したい考えで、例えば、通勤で駅に向かう際のバス利用で、自宅から最寄りのバス停までの移動に使ってもらうようなイメージだという。

LUUP代表の岡井大輝氏は当初、介護士派遣サービスを手がけたものの、駅から離れた自宅に介護士を効率よく派遣する移動手段がなかったため撤退。
このときの経験をふまえ、「モビリティ利用を通じてのコミュニティ作り」を意識している。

LUUP代表・岡井大輝氏:
若者も高齢者もモビリティに乗ってもらい、街の回遊率を上げることで、コミュニティ作りにつなげたい

将来的には高齢者でも利用できるように、椅子が付いた低速度の電動四輪モビリティを投入する構想などもある。
鉄道が発達した日本で、町中のすべての場所を「駅前」と思ってもらえるような社会を実現したいとしている。

今後は電動キックスケーターの配置も検討

岡井氏が目指す『あらゆる人がモビリティを利用できる社会』。
その実現に向けてカギとなるのが、今後配置を検討している「電動キックスケーター」の展開。
LUUPでは将来、欧米など海外では利用が進んでいる電動キックスケーターを、ニーズに応じて配置したい考えだ。
ただ、電動キックスケーターは原付自転車として扱われるため、利用する場合は車道を走行する必要があるほか、免許証を携帯しなければならない。
走行可能な機体については、原付の仕様に準じて、ナンバープレートの取得やヘルメットの着用などが必要となる。
LUUPでは、10月に東京・新宿区と千代田区で電動キックスケーターの公道実験を行う見込みだ。車道に加えて、自転車レーンを走行可能箇所に広げた実験などを行う予定で、その行方が注目される。

モビリティ市場では、「ドコモ・バイクシェア」が全国でシェアサイクルを展開し、利用を伸ばすなど、今後も激しい競争環境が予想される。
モビリティ領域の研究を専門とする、日本総研の泰平苑子研究員は、市場の見通しについて次のように指摘する。

日本総研・泰平苑子研究員:
モビリティ事業では今後、どの事業者と連携するかがより重要となってくる。
全国展開を目指す場合は、モビリティを置くポートにできる場所をたくさん保有する事業者とどう連携していけるかが大切。また、一つのエリアでサービスを展開する場合でも、地場の事業者をパートナーとして取り込んでいくことが必要。
これが勝敗の分かれ目となる。
また、電動キックスケーターをめぐっては、3密を避けられる手段として注目を集めている今が、規制緩和を議論するチャンスとなっている。
国との連携が重要なので、参入を検討しているさまざまな事業者が、協調して臨んでいくことが求められている

岡井氏と会ったのは東京・世田谷区内のカフェだった。最寄りとなる東急田園都市線・三軒茶屋駅からカフェまでは歩いて15分程度。また、バスで向かった場合でも最寄りのバス停から歩いて5分程度の距離だった。
岡井氏の構想では、このカフェへの道のりでもモビリティが活躍しそうだ。

LUUP代表・岡井大輝氏:
モビリティを利用することで、駅から遠いけど行ってみたい美味しい飲食店への送客や、街の魅力の再発見にもつなげてもらいたい

(フジテレビ経済部 西村昌樹記者)