「彼の口癖でした。勤務初日に『仕事は大事だけど、一番は自分の家族や人生、そういったことも大事にしたい。健康に気をつけて休みを取るように』と、みんなに伝えていました」
chikaさんは「私が無給休暇を選んでまで休まなかったのは、働き続けることが私にとってのコンフォートゾーンだったんです。働くことで自分が必要とされる人になれる、と自己犠牲のようなことをしていました。でも同僚やシェフの話から、それは長くは続かないと気づいたんです」と話した。
フィンランドで学んだ「休む」こと
こうした「仕事観」を学んだchikaさんだったが、個人事業主として働き始めると、日本での会社員時代やすしレストランなどでがむしゃらに働いていた生き方の余韻が残り、休みの作り方がわからなくなったという。
そして、「休み方」について、起業時に頼りにしたヘルシンキ市の職業安定所にいたビジネスアドバイザーからも指摘を受けたと話す。
「休みを取らずに働く人は個人事業主には多いと言われて、アドバイザーから起業する際に休みの取り方まで教わることができました 。起業することは簡単でも続けることは難しく、自分を律しないと長く続かない。ビジネスも大事だけど休むことも仕事の一つ、だと。行政の方からそういった話をされるなんて、本当に驚きました」

著書には移住2年目の秋にはじめて2週間のホリデーを取り、ドイツやスイスなどヨーロッパを旅行したエピソードも盛り込まれている。

「スイスのアルプス山脈は、自分の歩みを振り返るきっかけになりました。移住後の歩みと山登りの過程が重なり、泣けてしまいました。地面を踏みしめながら歩いて、ふと見上げて後ろを見ると、登りはじめでは見えなかった遠くの山脈まで見えて。歩いて登ってきた分、景色が見える。自分もちゃんと登ってきて、ゆっくりだけど見える景色も増えたのだと実感し、自分を認めてあげる時間にもなりました。ホリデーのあとは新しいスタートを切れた気がします」
2025年は移住して4年、起業して3年を迎える。後編は、起業当初に陥った「孤独」と移住4年目の展望について聞く。

週末北欧部chika
北欧好きをこじらせてしまった元会社員。大阪府出身。フィンランドが好き過ぎて13年以上通い続け、ディープな楽しみ方を味わいつくした自他ともに認めるフィンランドオタク。会社員のかたわらすし職人の修業を行い、2022年4月よりすし職人として移住の夢を叶えたが、職場の倒産により個人事業主に転身。こじらせライフをSNSアカウント『週末北欧部』にて配信中。著書に『北欧こじらせ日記』シリーズ(世界文化社)、『マイフィンランドルーティン100』(ワニブックス)、『かもめニッキ』『世界ともだち部』(講談社)などがある