「自然との距離感は、首都ヘルシンキも森や湖がシームレスに存在しており、都市部からも行ける便利さで自然が共存している。田舎育ちの私にとっては、理想的な環境でした。人との距離感は、“尊重と無関心の間 ”と名付けていて、あまり踏み込みすぎないけれど自分らしさを大事にしている距離感がすごく心地よく感じました」
衝撃を受けた2つの出来事
chikaさんのエッセイにはフィンランドで過ごす日常だけでなく、出会った人とのふとした会話がきっかけとなり、人生や仕事への価値観が変わったというようなエピソードもある。
起業編では「仕事観」や「休暇」に対する、周りにいるフィンランドの人々とchikaさん自身の考え方の違いが触れられている。

中でも、移住当初、就職先のすしレストランにいた同僚の仕事観は「自分の人生の時間の使い方を意識するきっかけになった」と振り返る。
「フィンランドで働いて2つ印象的なことがありました。1つは無給休暇、もうひとつがパート・オブ・ライフ。フィンランドでは1年に1カ月の長い夏休みがあると聞いていたのですが、それは勤続1年後から。私を含め全員がオープニングスタップだったので、休みが取れず、働く稼働日数としては、日本で会社員をしている以上に働いていました。
そのなかで同僚が、『無給でいい』と1カ月休みを取ったことに驚きました。私にその発想がなかったので。お金より休むことに価値を置いて、自分に必要な時間は自分で作り出すという姿勢を学んだのは大きいです」
もうひとつの「パート・オブ・ライフ」は、そのレストランのヘッドシェフから学んだと語る。