2024年のプロ野球、セ・リーグは巨人が4年ぶりに優勝し、パ・リーグはソフトバンクが4年ぶりに制覇、日本シリーズでは、リーグ3位から勝ち上がったDeNAが26年ぶりに日本一の栄冠を勝ち取った。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2024年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2025年シーズンを展望する。
第3弾は、2年連続Bクラスの雪辱を果たし、4年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた読売ジャイアンツ。
2024年は阿部慎之助新監督(45)のもと、「守り勝つ野球」を体現してきた。
決して得点力は高くない巨人。
【2024年 得点数 リーグ4位 462得点】
それでは、なぜ優勝することができたのか。
高い投手力 「ベテランエースの復活」
その大きな要因が「投手力の高さ」だ。
【2024年 防御率 リーグトップ 防御率.249】
【2024年 失点数 リーグ最少 381失点】
この投手陣を牽引してきたのが、24年シーズン15勝をあげ4年ぶりの最多勝に輝いた菅野智之(35)。
【2024年成績】
菅野智之 15勝3敗 防御率1.67
23年は自己ワーストの4勝、そこからどうやって復活したのか。
【2023年成績】
菅野智之 4勝8敗 防御率3.36
その道のりは順風満帆ではなかった。

菅野智之:
「僕自身も苦しんでいましたし、周りの見る目も大丈夫なのかなって、どちらかというと期待よりは心配の目を向けられるシーズンが多かった」
ここ数年は思うような結果が残せず、苦しんだという菅野。そんな苦境に喘ぐ中、24年にある強力な援軍が現れた。
菅野智之:
「内海さんと杉内さんが戻ってこられて、僕のことを必要としてくれているんだなっていう気持ちを感じて、なんとか杉内さんと内海さんを日本一のピッチングコーチにしたいなっていう…。
僕の頑張れる原動力になりました」

現役時代、菅野と共に巨人で戦った杉内俊哉(44)と内海哲也(42)。そんな2人の頼れる先輩が、コーチとしてチームに帰ってきた。
内海コーチ:
「成績的にも年齢的にも落ち目がくるところで、僕も杉内さんも経験した必ず通る道だと思っている。
一緒にやっていたメンバーだからこそ分かり合えることとかあったので、『ふさぎこむことなく、まだまだ先頭に立ってやってほしい』という想いを伝えました」
自分を必要としてくれるコーチ陣の思いが菅野の闘志に火をつけた。
復活をかけて臨んだ春季キャンプ、菅野の顔は明るかった。

菅野智之:
「本当にワクワクしていますし、久しぶりに楽しみなキャンプインを迎えられると思います」
キャンプ中、ウォーミングアップでは率先して先頭を走る菅野の姿があった。

そして、誰よりも早く一番乗りでブルペンに現れた。
菅野智之:
「目に見える変化をしていかないといけないなってことで、そういうふうにしていきました。
人から分かる変化だからこそ、自分自身も変われる大きな原動力になれると思うので」
「今年こそは変わる」、そんな覚悟を行動で表していった。
そしてシーズン開幕を迎えると、マウンドには打者を圧倒する菅野の姿があった。
菅野の代名詞と言えば、鋭く変化する「魔球スライダー」が思い浮かぶ。
それに加え、24年シーズン復活を遂げた球種があった。
菅野智之:
ストレートが良くなったっていう感じはあります。バッターと対戦してみて、去年まで捉えられていたバッターを押し込めていました。
ピンチの場面でもストレートを投げることが頭にきて、真っすぐを選択できることが、良くなっているなと実感します。
大きな武器として復活したという「ストレート」。そこにあった要因を、内海コーチが明かしてくれた。

内海コーチ:
「以前は下半身の使い方が、早くなったりしてつっこみ傾向にあり、腕が上がってこずに、低い位置から出てくるっていう悪い傾向にありました。
『下半身が動いて上半身に連動するように』っていうことは言ってきたので、それが上手くはまって、高い位置からのリリースができたのかなと思います。
『一番強く叩ける位置で、ボールをリリースできている』ってことなので、出力も高くなるだろうし」
近年、下半身をうまく使えず体が前のめりになっていたことで、ボールを離すリリースポイントが低い位置になっていた菅野。
しかし24年はリリースポイントが高くなったことで、より角度のついたパワーあふれるストレートを投げられるようになっていた。
その変化は全試合でバッテリーを組んだキャッチャーの小林誠司(35)も実感していた。
小林誠司:
「角度がつく分、回転数であったり、伸びとか質が上がってると思う。
智之自身がアドバイスもらいながら自分のものにしたと思うので、そこはさすがだなと思います」
ひたむきな努力が、菅野を「リーグ最多15勝」、そして「完全復活」へと導いた。
ベテランの姿はチームにも良い影響を与えていたに違いない。
そんな菅野は来季、メジャーへの挑戦を表明している。
ベテランエースがチームを離れる穴は大きい。
そこでカギとなってくるのは「若手の台頭」だ。
若手の台頭が、「連覇」そして「日本一」へのカギ
一番に期待されるのが、3年連続12勝をあげている若きエース・戸郷翔征(24)。
【2024年成績】
戸郷翔征 12勝8敗 防御率1.95

24年は開幕投手を任され、チームの勝利のためにフル稼働してきた。
特に正念場の9月には、中4日登板で優勝に貢献した。
そんな若きエースの来季年俸は3億円(推定)だ。(1億2000万増)
高卒7年目での3億円到達は球団最速記録であり、期待の高さがうかがえる。
戸郷の強みは「奪三振能力の高さ」。
24年は「キレあるフォーク」などを駆使し、2年ぶり2度目の奪三振王(156奪三振)に輝いた。
この奪三振能力を武器に、来季はリーグ最多勝と沢村賞を目指す。
戸郷翔征:
「僕にとっては3年連続の2桁勝利でしたし、節目の年だった。来年は最多勝と沢村賞を取れるように頑張っていきます」
そして、24年シーズン新たに台頭し、さらなる飛躍が期待されるのが井上温大(23)。
【2024年成績】
井上温大 8勝5敗 防御率2.76
6月から先発ローテーションに定着すると、「最速153km/hのストレート」を武器に自己最多となる8勝をあげた。
クライマックスシリーズでも登板を任され、6回1安打1失点の好投。初舞台でチームを勝利に導いた。
球団からの期待も高く、来季の年俸は約5倍増の3400万(推定)。(2730万増)
さらなる飛躍をし、自身初の2桁勝利を目指す。
井上温大:
「今年は今まで経験したことのない1年。自分でも頑張ったなと思います。来シーズンは2桁勝利を達成し、日本一になりたい」
心強い若手が台頭してきている阿部巨人。
リーグ連覇、そして13年ぶりの日本一へと期待が高まる。
(文・野村隆文)
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