2024年のプロ野球、セ・リーグは巨人が4年ぶりに優勝し、パ・リーグはソフトバンクが4年ぶりに制覇、日本シリーズでは、リーグ3位から勝ち上がったDeNAが26年ぶりに日本一の栄冠を勝ち取った。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2024年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2025年シーズンを展望する。
第2弾は、パ・リーグ2年連続最下位から2位へと躍進した北海道日本ハムファイターズ。

監督物語は最終章へ

「日本ハムを変えていく、プロ野球を変えていく、僕しかいない」
そう宣言した3年前の監督就任会見(2021年11月)。

それまでの3年間はリーグ連続5位と低迷していたチーム、きっと新庄監督が新たな風を吹かせてくれる。新指揮官の発言に、ファンはただならぬ期待を抱いた。しかし蓋を開けてみると、2年連続最下位と散々たるもの。ファン、そして我々も落胆の色を隠せなかった。
だが、今となってはそれすら新庄劇場、「勝負の3年目」に向けた確たる布石だったのだと感じる。

本拠地最終戦セレモニー(23年9月)
本拠地最終戦セレモニー(23年9月)
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監督就任2年目シーズンの本拠地最終戦のセレモニー(23年9月)で、新庄監督は次のように締めくくった。
「来年で3年目です。勝負の年です。新庄剛志、監督という名の物語は最終章を迎えます。ファンの方たちとともに頂点を目指したい。本気で死ぬ気で戦っていきます」

また、新庄監督はシーズンオフの期間中に、記者の前でこんな話をしてくれた。
「人生で今が一番楽しいんですよね。監督にさせてもらっていきなりポーンと優勝もいいけれど、なんかそういう人生って僕はあんまり、正直面白みがないといういか、楽しくないというか。ファンの方たちには本当に申し訳ないけれど、今年最下位、去年も最下位、ここからガーンと一気に上にいくというドラマをすごく楽しみにしているし、僕がそういう人生なんで」

いよいよクライマックスを迎える新庄劇場。日本一を約束した就任3年目、日本ハムの「快進劇」が始まった。

スローガンは…大航海

「一緒に船に乗ってくれますか?」
2024年1月11日午後1時11分、エスコンフィールドの大型ビジョンに新庄監督の姿が映し出された。チーム創設50周年、節目のシーズンスローガンは「大航海」。

ここには新庄流の粋な演出があった。ファンを何より大切にする「信条」で、案をファンから募集。集まった8608点の中から新庄監督自らが選んだのだ。

「ファンという宝物を積み込んだ船には、2年間辛酸をなめながらも着実に力をつけたクルー《選手・監督コーチ・スタッフ》も乗り込み準備は整った。荒波をものともせず、どのチームよりも長くシーズン(航海)を続け、歓喜を分かち合う瞬間を思い描きながら最後に光り輝く地(日本一)へたどり着く」と、3文字に込めた思いについて新庄船長は語った。

スローガンは「大航海」と伊藤大海投手
スローガンは「大航海」と伊藤大海投手

スローガン「大航海」の発表直後、開幕投手を担う伊藤大海はこのように語ってくれた。
「僕の名前(大海)が入っているというのが第一印象。穏やかな海に出るような状況ではない中で、新庄監督が思い切って舵を取れるよう、開幕投手として船旅に出る第一歩になるようしっかりと投げたい。そしてどこのチームよりも長く大航海できるシーズンにしたい」

ミレニアム世代の台頭

24年シーズンの日本ハムを象徴するのが2000年代に生まれた選手たち。

田宮裕涼選手
田宮裕涼選手

この世代で最もブレイクした選手と言えるのは入団7年目の田宮裕涼。
23年シーズン、出場10試合に留まっていた捕手が開幕戦でスタメンマスクを被った。その試合、2打数2安打の活躍を見せると、その後も7月後半までは打率3割台をキープ。本人が目標としているソフトバンク・近藤健介を彷彿させるバッティングフォームから量産される安打で、一時期は首位打者へと躍り出た。
”ゆあビーム”とファンから呼ばれる強肩、さらに走れるのも田宮の魅力。来シーズンは目標越えの「首位打者(24年シーズンは近藤健介)」を勝ち取ってほしい。

【2024年成績】
田宮裕涼(捕) 109試合 3本塁打 30打点 10盗塁 打率.277

水谷瞬選手
水谷瞬選手

前年の現役ドラフト(出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化する制度)でソフトバンクからやって来た一軍出場経験なしの未知数選手・水谷瞬が移籍1年目で、いきなり大輪の花を咲かせた。
5月に1軍昇格を果たすと、交流戦では歴代記録を更新する打率.438で交流戦首位打者になり、最優秀選手賞(MVP)を獲得。また、シーズンで4本の先頭打者ホームランを放ち、球団としては26年ぶり、北海道移転後初の快挙も成し遂げた。
ネガティブな印象を抱かれがちだった現役ドラフト制度の概念を、ミレニアム世代スラッガーが自らのバットで見事に打ち砕いた。

【2024年成績】
水谷瞬(外)  97試合 9本塁打 39打点 4盗塁 打率.287

207万人が湧いたエスコンフィールド

2年連続最下位から大躍進を遂げたチームはリーグ2位、エスコンフィールド初のクライマックスシリーズ・ファーストステージ開催を勝ち取った。
9月29日のレギュラーシーズン本拠地最終戦後には、応援にかけつけた約3万7000人の前でセレモニーが行われた。

本拠地最終戦セレモニーでファンに感謝の言葉を伝える新庄剛志監督(9月29日)
本拠地最終戦セレモニーでファンに感謝の言葉を伝える新庄剛志監督(9月29日)

そこで新庄監督が何よりも先にファンに伝えたのは感謝の言葉。「皆さんのおかげで2017年以来、7年ぶりに(観客動員数)200万人を突破することができました。ありがとうございます」
それに呼応し自然と湧きあがった割れんばかりの拍手と歓声。6年ぶりとなるクライマックスシリーズ進出までの航海を乗組員全員で喜び合った。

10月12日から行われたロッテとのクライマックスシリーズ・ファーストステージを2勝1敗で突破した日本ハムだったが、ファイナルステージでは敵地の福岡でリーグ王者に3連敗、日本一への大航海はここで幕を閉じた。

それと同時に、1年前の新庄監督の言葉が脳裏に浮かんだ。「来年で3年目です。勝負の年です。新庄剛志、監督という名の物語は最終章を迎えます」

「大航海は続く」

11月30日に発表された2025年のチームスローガン。その通り、航海はまだ終わっていなかった。

新庄剛志監督と小村勝球団社長
新庄剛志監督と小村勝球団社長

12月8日に開催されたファンイベントで、「2年で土台をつくり、3年目で日本一になり、新庄剛志らしく、カッコよくユニホームを脱ごうと思ったんですけど、残念ながら負けてしまい、来年も監督やらせてもらいます。よろしくお願いします」と新庄監督。
このメッセージに、ファンの気持ちを小村勝球団社長が代弁してくれた。「負けてよかったなと、ちょっと思っています(笑)」

ここまでの航路を糧に、新庄船長のもと目的地である光り輝く地(日本一)に向け、もう一度全速前進。みなさん、来シーズンも一緒に船に乗ってくれますか?

(文・長内陽一)

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