中学生2人が殺傷された北九州市小倉南区のファストフード店。事件から1週間後となる12月20日に現場を訪れた。

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入り口には多くの花や飲み物が手向けられていた。献花に訪れた人は「寒い時期に亡くなられたので、暖かいもので温もってもらおうと思って、お茶を持って来ました。同い年が亡くなられたんで、心が痛い」と静かに手を合わせていた。

ファストフード店で突然の凶行

事件が起きたのは、2024年12月14日午後8時半前。

店内でレジに並んでいた中学3年の中島咲彩さんと男子生徒が店内に入ってきた男から刃物のようなもので突然刺され、中島さんが死亡。男子生徒も重傷を負った。

刺した男は現場から逃走。警察は、通り魔的な犯行の可能性が高いとみて防犯カメラの捜査などから男の行方を追った。

犯行現場の防犯カメラに男の顔が捉えられていなかったことなどから捜査は難航。不安は市内全域に広がり、数千人規模の子どもたちが登校を控える状況となった。

「中学生被害の殺人等事件について 先ほど被疑者を殺人未遂の罪で通常逮捕しました」。解決まで長引くかと思われたなか、発生から5日、事件は急展開をみせた。

「確かにその行為を私はしました」

警察は市民などから提供された延べ百数十件の防犯カメラやドライブレコーダーの映像を解析。逃げた男が小倉南区に住む平原政徳容疑者(43歳)と特定。男子生徒に対する殺人未遂の疑いで逮捕した。

「15歳の将来ある中学生でこういう殺傷に巻き込んだというのも許しがたい卑劣極まりない犯行。(容疑者は犯行を)認めています。具体的な文言としては『確かにその行為を私はしました』と」。福岡県警の橋本浩輔・捜査一課長は怒りを滲ませながら会見で述べた。

記者会見する福岡県警 橋本浩輔・捜査一課長
記者会見する福岡県警 橋本浩輔・捜査一課長

事件現場から約1キロ離れた閑静な住宅街のなかの一軒家に1人暮らしをしていた平原容疑者。過去に自宅で奇声を上げて近隣から通報を受け、警察が駆け付けるトラブルも起こしていた。

容疑者の自宅
容疑者の自宅

近くに住む人は「お経みたいな、なんか歌の時もある。軍歌みたいな。そのほか太鼓の音かな?夜中に流れている」と話し、また別の人は「マイクで声を響かせる感じ。怒鳴り声が聞こえて。なんて言っているのかは分からないが、とにかく脅すような怖い声で怒鳴っている」と当時のようすを話した。

自宅で逮捕された平原容疑者は警察を前にしても動じる素振りは無かったという。

容疑者逮捕の報に保護者は…

容疑者の逮捕を受け、子どもが被害者2人と同じ中学に通っている保護者からは「安心。良かったって。逮捕されるまで、登下校もそうですし、放課後の遊びなども家族としては制限をしてましたので、遊べる喜びもあるし…」と安堵の声が聞かれた。その一方で「ただ、気をつけないといけないっていう意識は、子どものなかには芽生えてる」と不安視する声も聞かれた。

逮捕当日、中学校の校長から届いたメールには「被疑者逮捕の報道がありました。(略)しかし15歳という未来ある人生を奪われた中島さんはもう帰ってきません。とても悔しい気持ちが日に日に増し、まだ心の整理がつかない状態です。(略)一日も早く日常生活に戻れるように子どもたちと保護者と地域の方たちとともに前を向いて歩いていきます」と記されていた。

容疑者逮捕当日に中学校校長から届いたメール
容疑者逮捕当日に中学校校長から届いたメール

今後、子どもたちをどう守っていけば良いのか。「あまり縛りつけても子どもには良くないし、なかなか難しいところがあるかなと考えています。どう子どもを守っていくのか…。限界はあると思うが、時間の管理だとか、そのへんをちょっと意識しながら、見守っていくしかないかなと考えています」と保護者は悩みを口にした。

警察によると平原容疑者は、取り調べには応じているものの、動機についての質問には答えず、同じ質問をすると怒り出す場面もあるという。さらに平原容疑者が犯行時に使っていたとされる車を捜索したところ複数の刃物が見つかっている。

また事件発生時、平原容疑者は、帽子やマスクなどをつけず、顔を隠していなかったということなどから、捜査本部は計画性の有無について慎重に調べている。

SNSを中心に拡散されたデマ情報

容疑者の逮捕まで情報が錯綜し、根拠の薄い話が広く出回ってしまう状況も生まれた。西日本新聞社報道センターの坂本信博・総合デスクは「今回、警察は事件発生から3日で容疑者の目星をつけて行動監視をしていた。県警の対応は迅速だった。その一方で被害者や関係者を二重に傷つけるようなデマや、また無関係な人を貶めるような虚偽の情報がSNSを中心に広く出回ってしまった。言論の自由を守ることは大前提だが、SNSでのデマを拡散する行為を止めさせる対策や誤情報を打ち消すための対策などを考える必要もある」と警鐘を鳴らしている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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