北九州市のマクドナルド店内で、中学生の男女2人が刺された殺傷事件。

事件発生から6日目となった19日、福岡県警は事件現場付近に住む無職・平原政徳容疑者(43)を、男子生徒への殺人未遂の疑いで逮捕しました。

平原容疑者を乗せたとみられる車
平原容疑者を乗せたとみられる車
この記事の画像(12枚)

警察の調べに対し、「たしかにその行為をしました」と供述し、容疑を認めているという、平原容疑者。

逮捕の前日現場を取材し、捜査員の減り具合から「すでに容疑者の目星がついている」という可能性を指摘していた、元徳島県警捜査一課の秋山博康氏は…。

元徳島県警捜査一課 秋山博康氏:
発生から6日(目)なので、私からするとやっぱりスピード検挙で、本当に福岡県警の捜査員が不眠不休でやった結果だと思います。

元徳島県警捜査一課 秋山博康氏:
本来なら警察が1件1件防犯カメラを見つけるとか、車のドラレコ所有者を割り出して、そこからお願いに行って回収するものですが、今回は本部の警察の方から回収を求めた。これはもう住民の協力があって出た結果だと思いますね。
本件については将来ある中学生が2名被害者です。やはり住民が、一日でも早く犯人を捕まえてほしいっていう、そういう強い気持ちがあったと思うんですね。

真相解明に向け捜査が進む中、平原容疑者は、もっとも不可解な“犯行動機”については、口を閉ざしたままだといいます。

元徳島県警捜査一課 秋山博康氏:
やはり動機ですね。この動機っていうのは、本当に容疑者しかわからない部分なので、一番重要な、早く動機を取り調べによって解明してほしいと思います。

捜査と司法のプロが今回の逮捕を解説…今後のカギは“動機”

防犯カメラやドラレコなど、南北合わせて百数十台以上を5日間で精査。
地道な捜査の結果、警察は犯行に使われた黒のワンボックスを先に割り出し、さらに、周囲の防カメの中に事件後、特徴が一致する服装の男が犯行現場とは別の場所に立ち寄る姿を発見し、そこから平原容疑者にたどり着いたといいます。

今回の捜査方法について、元神奈川県警捜査一課長の鳴海達之氏は、優秀な捜査員が”非常に慎重に行った”のではないかと話します。

元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:
防犯カメラに映っていた映像が、平原容疑者に当たったということなんですけど、これはそのまま自宅に当たった訳ではなく、自宅に行く前の立ち寄り場所にたまたま当たっただけだと。
そこに捜査員が聞き込みにいくんですが、「この男誰?」と聞いたら皆さん警戒するので、そこは有能な捜査員をあてて、別の目的で聞き出すということをするんです。それが平原容疑者に結びついたと。

――逮捕の2日前から自宅を監視していたといいますが、なぜ逮捕をしなかったのか?
結論から言うと、その時点では逮捕状の請求に至っていないということなんです。
24時間監視する、第2の犯行を防ぐとか、いつでも逮捕できるようにしてるんですけど。
逮捕状というのはなかなか、カメラに映っているのは平原容疑者でしょ?というのを証明するのと、平原容疑者の車が犯行時間帯にマクドナルドにあって、「こういう点がこういう線で結びつくから、平原容疑者で間違いないんです」という証明をして、裁判官がそれを承諾したら、逮捕状を出してくれるものなので。
カメラに映っているのは誰が見ても平原容疑者でしょ?と言ったところで、逮捕状はまた別の話ですから、それ相応の時間がかかるので、この時間になってしまったのかなと。

逮捕時には、捜査一課特殊事件係の捜査員ら20人が集結し、平原容疑者が呼びかけに応じなかったことから窓などを割り突入しました。逮捕の際に、平原容疑者はリビングで椅子に座り平然としていたといいます。
自宅からは刃物と、犯行に使ったと見られる車が押収されました。

――窓ガラスを割ってまでして突入していますが、なぜ?
元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:

そうですね、窓ガラスを割って入るというのは私の経験上そんなにないことですが、今回の事件は中学生2人が被害に遭っているし、かなりの不安とか恐怖に住民を陥れている事件ですから、絶対に取り逃がしたくないという思いがあって、一課の“特殊”という立てこもりや誘拐を専門にする部隊を使って、「逃げられないんだ」という形を演出したのだろうと思います。

平原容疑者の自宅
平原容疑者の自宅

元横浜地検刑事部長 若狭勝弁護士:
窓を割って入ったことについては、「薬物の影響による幻聴幻覚でこのような犯行をしたのではないか」という可能性も、当然、捜査的に視野に入れておくと思うんです。
そうした場合、よくあるのは、インターホンを鳴らしてもすぐ出てこなくて、持っている薬物をトイレに流したりとか、証拠を消すような形にされてしまうとよくないというので、奇襲攻撃的にやったのではと。
薬物などを押さえるとか、いろいろな可能性を秘めてやるのが捜査ですから。警察が来たと思って本人が自殺をするとか、そういうような可能性を考慮して、今回は窓ガラスを割って入った方がいいという判断がされたと思うんです。

――今後の捜査のポイントは?
警察や検察が考えるのは、これだけ白昼堂々異様な方法で行っているので、そういう案件の場合は一般論として言えば、「精神的な問題でそれに基づいて」ということを、まずは当然、視野に置くんですね。
犯人であることは本人も自供しているので、今後のポイントは、そういう精神的な問題に基づいて犯行をしたのではないか、場合によってはそれによって影響があったとなると、無罪になったりすることもあるので、そこに相当視点を置くと思うんです。
捜査の焦点としては、動機の解明、それに基づいて「精神的な影響で起こしたわけではない」というようなことを、どんどん固めていく捜査が行われると思います。
(めざまし8 12月20日放送)