コンピューターやインターネットを悪用した「サイバー犯罪」が全国的な問題となっている。こうした犯罪の実態を広く知らせるために先日、石川県警が開いたのが報道機関向けの体験会だ。石川テレビの記者も参加しサイバー犯罪の手口や警察の捜査について学んだ。

サイバー犯罪の巧妙な手口

年々被害が増加しているインターネットや情報通信技術を悪用したサイバー犯罪。12月6日に開かれた体験会ではどのようにして被害に遭うのか、犯罪の手口が紹介された。その一例として再現されたのはパソコンの修理業者を装ったサポート詐欺だ。

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男性記者の1人が被害者役となり犯人役の相手と電話でやりとりを行う。相手の指示に従い自分のパソコンにソフトウエアをダウンロードしただけで…。「お客さま、ウイルス除去の修理代にはお金がかかる。修理代、大体5万円くらい」。相手は「パソコンがウイルスに感染している」と偽の情報を伝えてきたうえで修理代金を要求。記者が「銀行振り込みで支払う」と答えると、相手は「1回自分のパソコン開いてもらえます?インターネットバンキング」と、犯人役はネットバンキングの口座残高を確認するよう指示してきた。

この過程で犯人役はIDやパスワードといった個人情報も電話で聞き取り、遠隔で口座にログインし、口座の残高が請求金額に満たないことが分かると…。「お客さま3万円しかないよね、お金。そしたら修理代5万円かかる、5万円。コンビニ払いにしてほしい、大丈夫?」パソコン上に遠隔で支払い用のプリペイドカードの画像を表示し、犯人役はしつこく購入を促した。

サイバー犯罪の捜査手法

こうしたサポート詐欺に対して県警は、警告画面が出たら慌てずにパソコンの電源を落とし、表示された番号には絶対に電話をしないよう呼びかけている。サポート詐欺を含むサイバー犯罪は、匿名性が高く痕跡が残りにくいことから犯人を突き止めるのは容易ではない。サイバー犯罪に特化した「サイバー犯罪対策課」ではどのように捜査しているのだろうか。

捜査手法を学ぶ記者
捜査手法を学ぶ記者

例えば犯人が撮影した写真が入手できたとき、その写真のデータには位置情報として緯度や経度が含まれている場合がある。その場合、地図サイトに緯度と経度を入力することで撮影場所が特定できるのだ。「さっきの画像の情報ですよね。これも同じように入力していくと…」と捜査官の説明に従って入力を進めると、写真が撮影された場所は警察本部だということが分かった。

実際の捜査では、押収したパソコンやスマートフォン、USBなどからも証拠を収集し、情報の解析を行う。サイバー犯罪対策課の小島直樹次席は「いまやサイバー犯罪というのは、刑事事件の捜査だけに留まらず、交通事件や警備事件とか警察部門のあらゆる分野で知識が必須になってきている。そのために我々としては警察職員全体のレベルアップを図り県民の安心安全を守っていきたいと思っています」と話した。サイバー犯罪対策課では2024年度から月に1回、警察学校で「サイバー教室」を開き捜査に必要な知識や技術を身につけてもらう取り組みも進めている。

年々増えるサイバー犯罪の相談

一方で、石川県内ではサイバー犯罪の相談件数がかなり増加している。県警に寄せられたサイバー犯罪の相談件数は、1400件余りだった10年前と比較すると2023年は年間で3019件と、この10年で約2倍に増加している。中でも多いのが偽サイトでの詐欺やSNS型投資、ロマンス詐欺、悪質商法の類いだ。2024年10月には小松市内の60代男性がSNS型ロマンス詐欺で、約2億2400万円がだまし取られる被害もあった。インターネットは便利な反面、詐欺や不正利用などの危険もある。サイバー犯罪に巻き込まれないためにも正しい知識や対処法を知ることが大切だ。

(石川テレビ)

石川テレビ
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