16年ぶりに新たなリーダーが誕生した熊本県知事選や3年ぶりに行われた衆院選を振り返る。また、兵庫県知事選で指摘されたSNSをめぐる問題や来年夏の参院選に向けた動きをまとめた。
16年ぶりの熊本県の新リーダーに木村敬氏
2023年12月、熊本県政史上最長となる4期16年を務めた蒲島知事(当時)が、「次の知事選には出馬しないことを決断いたしました」と5期目への不出馬を表明。16年ぶりの新たなリーダーを選ぶ知事選に向けた動きが本格化した。
熊本県議会の最大会派・自民党は蒲島県政の継承を重視し、副知事だった木村敬さんに出馬を要請。木村さんは年明けに立候補を表明した。
一方、元熊本市長の幸山政史さんも『オール県民党』を掲げ、3回目の知事選に挑戦。事実上の一騎打ちとなった選挙戦は、自民党の組織力に加え蒲島知事の応援が後押しとなり、木村さんが幸山さんに10万票近い差をつけ初当選を果たした。
木村敬さんは「『今の熊本を取り巻く流れを変えてはならない。止めてはならない』この思いで訴えてきました。『この流れを続けていこう』そこで県民の意識が一つになった。その成果だ」と述べた。
TSMCの進出で熊本が大きな転換期を迎える中、木村知事の今後の県政運営が注目される。
熊本県内では自民圧勝 全議席守り抜く
石破総理就任からわずか8日、戦後最短での解散・総選挙となった2024年の衆院選は、全国では自民党派閥の裏金問題への批判が逆風となる中、熊本は4つの選挙区全てで自民党・前職が圧勝した。
自民党県連の前川收会長は「県内4人の候補者は政治とカネの問題については無縁だった。全国的に見てもかなりいい結果を出してもらった」と、選挙直後に述べた。
一方、立憲民主党県連の鎌田聡代表は「(熊本県は)保守が強く、(自民党と)組織力が違う。最大の理由は私たちの取り組みの弱さに尽きると思う」と、立憲民主党県連など県内の一部野党は全ての選挙区で候補者を一本化したものの比例復活もかなわなかった。
県内野党の『衆議院議席ゼロ』の状態が続いている。一方、全国的には立憲民主党と国民民主党が躍進。自民党と公明党は議席を大幅に減らし過半数を割り込んだ。
自民・坂本哲志国対委員長が国会運営に奔走
石破総理は「痛恨の極みでありますわが、自由民主党は心底から反省し生まれ変わっていかなければなりません」と述べ、30年ぶりの少数与党となる中、今後の政権運営は野党との連携が重要になる。
衆議院熊本3区選出で自民党の国会対策委員長を務める坂本哲志さん。円滑な国会運営に向けた野党との交渉に当たっている。
自民党・国会対策委員長の坂本哲志さんは「野党が一つになれば内閣不信任案が成立する。いつ、不信任案を出されるか分からない。野党がひとつにまとまれば、すべて野党の要望が通ってしまうというような状況。自民党の要望通りにならないのは、十分自覚しながら、野党と話し合いをしていかなければならない」と述べた。
政権運営のカギを握るのが衆院選で躍進した国民民主党。年収が103万円を超えると所得税が発生する『103万円の壁』の見直しを主張している。
坂本さんは「国民民主党は議席を3倍増させたわけなので、国民の声だと思って、受け止めなければならない。財源不足をどう埋めるか、ということも併せてやらなければならない。難しい政策判断を余儀なくされる。引き上げ幅の論議が非常に重要になる」と述べた。
選挙報道でSNSに見劣りするオールドメディア
『選挙』をめぐっては、SNSの影響力が高まっている。11月の兵庫県知事選挙ではパワハラの疑いなどで県議会から全会一致で不信任を議決され失職した斎藤元彦さんが再選を果たした。
兵庫県の斎藤元彦知事は「何が正しくて、何が真実か。そしてどうあるべきかということを、一人一人の県民が判断した。県民一人一人の勝利だ」述べた。
世論調査で厳しい戦いが予想されていた斎藤さんの当選に大きく作用したとされるのが『SNS』。
政治学が専門の熊本大学・伊藤洋典教授は「欲しい情報がSNS経由でしか入らない状況が、もしかしたらもう出来ていて、選挙戦の主戦場が新聞・テレビのオールドメディアから新しいところに移っているのかもしれない。それくらいの印象を受けた」と話し、この結果に驚いたと言う。
伊藤教授は「選挙報道の公平性・中立性の観念に必要以上に縛られている。報道の質・量ともにSNSに比べ相当見劣りする状況になっている印象」と述べた。
伊藤教授は「日本の選挙期間が海外に比べて短いことも背景にある」とした上で、「短期間で注目を集めるSNSの手法や奇抜な行動を取る候補者に、有権者が安易に流されないことも今後重要になる」と指摘する。
また、伊藤教授は「短期的に印象付けるだけの選挙活動は有権者にとっても意味がない。政策についての情報が有権者に届いて初めて選挙は意味がある。選挙そのものが意味のない『お祭り』みたいなものになってしまう危惧を感じている。今の時代に合った形に変えていくのが大事」と、選挙のあり方の変化についても述べた。
2025年夏の参院選 自民・現職に野党候補者は?
一方、2025年夏の参議院選挙。熊本県内でも1議席をめぐり、与野党の動きが加速するとみられる。
3回目の当選を狙うのは自民党・現職の馬場成志さん。10月の衆院選では自民党県連の選対本部で総選挙長を務め、次は、自身の選挙戦に臨む。12月8日には、現職の国会議員として八代市に入り、国交省の砂防事業の着工式に参加した。
馬場議員は「来年も厳しい状況の中で選挙戦に突入することが考えられるが、(県の課題や展望の)一つひとつを着実に手伝えるように働きたい。そのためには県民と会える機会を少しでもつくって、理解を広げる努力をしたい」と述べた。
一方、熊本県内の野党は候補者の擁立を急いでいて、立憲民主党県連の鎌田聡代表は「(衆院選の)結果も踏まえて、来年の参院選こそはなんとしても議席を獲得したいという思いで候補者選考を進めている。(これまでの野党共闘の)枠組みの外の政党にもしっかり応援してもらえる人を選びたい」と、これまでの『野党共闘』の枠組みを超えた他の政党とも連携を検討している。
また、日本維新の会・熊本支部の井坂隆寛幹事長は「候補者擁立を検討中」。参政党県連の髙井千歳会長は、「候補者を擁立する予定」としている。
こうした中、立憲民主党の野田代表と日本維新の会の吉村代表は、12月8日のフジテレビの番組に出演し、来年の参院選で野党の候補者の一本化を進める方針で一致した。
衆院選で、維新の前職として東京7区から出馬したが、立憲との候補者一本化ができず議席を失った元熊本県副知事の小野泰輔さんは、こうした動きについて「参院選の1人区(の候補者を)どうやって調整するかが一番大事。本気で(与党の)過半数割れを参議院でも実現するんだというそういう本気度合いをちゃんと国民に見せることだと思う」と述べた。
一方で、小野さんは今後、維新を離党し、熊本を中心に無所属で活動を続けるという。小野さんは「参院選はどこどこから(出ないか)みたいな話とか、あるいはどっかの首長とか、『どっかでやらないか』という声は当然いただいてはいる」と話す。
参院選などへの出馬の打診を受けていることを明かしたが、「政治家にこだわらず幅広く物事を見ていきたい」と述べた。
自民1強が続く熊本で野党がどう存在感を高めるのか、今後の参院選に向けた動きが注目される。
(テレビ熊本)