昨季は色落ち被害による不作で苦しんだ有明海のノリ養殖。今季は栄養塩が豊富で順調に生育。黒く良質なノリが摘み取られ、初入札では過去最高の高値をつけた。一方、2年連続の不作で廃業に追い込まれた漁業者も。
今季こそは…意気込む漁業者
有明海のノリ養殖は、晩秋から始まる前半の「秋芽網」と冬に本格化する後半の「冷凍網」の2期作で行われる。
この記事の画像(12枚)今季の秋芽網ノリの種付けは10月17日午後6時に解禁された。翌18日の早朝、漁業者が有明海沿岸の漁港から沖合へ向かう。ノリの種が入ったカキ殻つきの18メートルほどの網を次々に張り込んでいった。
少雨などによる海の栄養塩不足で色落ち被害が相次ぎ、昨季は2年連続の不作に苦しんだ有明海の養殖ノリ。今季は3年ぶりの日本一奪還を目指して漁業者は意気込んでいる。
海の栄養豊富で順調に生育
種付けから約1か月。11月中旬から秋芽網ノリの摘み取りが始まった。
11月20日、夜の有明海。佐賀市川副町の戸ヶ里漁港から約7キロ沖合の漁場で漁業者が15センチから20センチに成長したノリを摘み取っていく。
佐賀県有明海漁協によると、今季は種付け時期の水温が高くノリの成長に差が出ているが、栄養塩が豊富なため順調に生育しているという。
“色落ち”被害…消えない懸念
しかし色落ち被害への懸念は消えない。ノリの成長には海の栄養塩が欠かせないが、その栄養塩を食べるプランクトンが増殖し、いわゆる赤潮が発生すると、ノリの色落ちの原因となる。
このため県は2022年から二枚貝、サルボウを放流する対策を行っている。サルボウは有明海のノリの色落ちの原因となるプランクトンを食べるため、サルボウを増やすことで色落ち被害を減らすことが期待されるからだ。
今季も人工的に育てられたサルボウの稚貝約200万個が有明海に放流された。
今季の初入札では過去最高値
そして11月28日、佐賀県産秋芽網ノリの今季初の入札会が開かれた。
出品されたのは、前年と比べ1500万枚ほど多い約1億970万枚。全国から51社、約300人の買い付け担当者が訪れ、色、つや、香りなどを確かめていた。
佐賀県有明海漁協によると、今季は海の栄養塩が豊富なため質が良く、枚数も平年並みだという。また秋芽網ノリの初入札会では4年ぶりにノリを生産している全支所で色落ち被害のない”黒いノリ”が出品された。
入札会に参加した県外のノリ専門商社の担当者は、「(出品枚数が)1億超えて、まあまあ出してくれたとホッとしている。われわれも2年続けての不作で在庫も少なくなっているので、ぜひ豊作を期待している」と語った。
初入札会での販売額は約38億6470万円。平均単価は35円23銭で、平年を10円ほど上回り、シーズン初めての入札会では記録が残る1965年(昭和40年)以降、最高値をつけた。
2年連続の不作で廃業した漁業者も
一方、2022年からの2年連続の不作は漁業者に大きな打撃を与えている。漁協によると、近年の栄養塩不足による色落ちで悩まされていた太良町の大浦支所では、昨季まで5人いた生産者が廃業し、今季は生産しないという。
不作乗り越え日本一奪還へ
初入札会では好調なスタートを切った有明海の養殖ノリ。佐賀県有明海漁協の西久保敏組合長は、「昨年、一昨年の大凶作を受け、供給責任を果たすべく、質の良いノリを1枚でも多く生産できるよう生産者一丸となって取り組んでいく」と今季の漁への思いを語った。
不作を乗り越え、佐賀県有明海漁協は販売枚数16億枚、販売額232億円を目標に“日本一奪還”を目指している。
(サガテレビ)