2024年の「今年の一皿」に「うなぎ」が選ばれ、高級食材ながら手軽に楽しめる機会が増加していると評価された。
外国人観光客への人気や養殖技術の進歩が背景にあり、日本食文化の魅力を世界に発信する役割を担っている。

2024年「今年の一皿」は外国人観光客も魅了

2024年の世相を反映するおいしい一皿とは――。

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3日、ぐるなびが、その年の世相を反映する「今年の一皿」を発表した。

ぐるなび・滝久雄会長:
2024年、今年の一皿は「うなぎ」です。

特別な日に食べるような「うなぎ」が、いったいなぜ選ばれたのか。

ぐるなび 社長室・三橋茉希さん:
高級食材というところの地位は保ちつつも、気軽にうなぎを食べられる機会が増えている。飲食店として、うなぎを取り扱っている店舗数は、(ぐるなびのデータでは)2023年度よりも155%増加しています。

天然のニホンウナギの漁獲量が減る中、後世に残すための養殖技術の進歩も背景にある。

もう1つ、受賞に大きく影響したといわれるのは、インバウンド需要だ。

タイからの観光客:
ウナギ!ウナギ!おいしいです!

円安による影響で、2024年7月には1カ月あたりの訪日外国人客が300万人を超え、過去最高を記録した。

日本食への関心も高まっている。
千葉・成田市のうなぎ街道にある「川豊本店」で、食事をする海外からの観光客たちに話を聞いた。

アメリカ人観光客:
日本で一番大好きな食べ物なんだよ。

アメリカ人観光客:
飛行機に乗った時に、彼が『うなぎが食べたい』って言ったんだ。それが日本に来た理由なんだよ。

メキシコ人観光客:
うなぎおいしい!!

「うなぎの蒲焼き」という日本の伝統的な食べ方が広まり、多くの外国人観光客を魅了した。
こうした日本の魅力あふれる食文化を後世に伝えるために、「今年の一皿」が選ばれてきた。

2023年はSNSを中心に話題となった、具材をふんだんに乗せた「ご馳走(ごちそう)おにぎり」が、コロナ禍にあった2022年は、飲食店の味が手軽に自宅で再現できる「冷凍グルメ」が選ばれた。

ぐるなび 社長室・三橋茉希さん:
「今年の一皿」は、優れた日本の食文化を豊かな食の未来に向けて、発展・進化させていくために発表しているので、より国内外の発信と、食の継承に向けて広がりを見せていただきたいなと考えています。

思い込められ食文化を未来へつなぐ挑戦

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーー「ぐるなび」は、どんな思いを込めて、「今年の一皿」を行っているのでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
「ぐるなび」は、「食でつなぐ、人を満たす」というパーパスを掲げています。食の可能性を信じて、世界中のヒト・モノ・コトをつなげる。そして、人々が満たされる場を生み出すことを、自分たちの存在意義としています。

「今年の一皿」は、その年に流行した食を記録するという役割のほかに、食文化を未来につないでいきたい。そんな思いがあるようです。

堤キャスター:
ーー「今年の一皿」は、「大切にしたい一皿」でもあるわけですね?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
飲食業界の1年の成果を表彰するだけでなく、食のサステナビリティーにも貢献しています。

例えば、2023年受賞した「ご馳走おにぎり」は、日本人の米の年間消費量が減る中、外食や中食での米の消費を後押ししたいという思いもあったようです。

もう1つ、「今年の一皿」には、次の日本食ブームを世界でけん引する可能性もあるかもしれません。

堤キャスター:
ーーそれは、どういうことでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
「ぐるなび」は、「ぐるなび上海」や「楽天ぐるなび外国語版」など、早くからグローバル化にも取り組んできました。

日本食の世界的な人気を考えると、「今年の一皿」によって、海外でまだ知られていない日本の食が注目されるきっかけになるかもしれません。

さらに、「今年の一皿」が日本国内で確かな権威を獲得すると、将来的には、『ミシュランガイド』のように世界でも通じる「信頼の証し」として、親しまれていく可能性があります。

実践的パーパス経営の重要性示す

堤キャスター:
ーー「今年の一皿」を通じて、日本の食文化が広がったり、深まったりするといいですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
そうですね。今、パーパス経営が注目されていますが、それを掲げることが重要なのではなく、ビジネスを通して、実践することが肝要です。

その点でいうと、「ぐるなび」が行う「今年の一皿」は、実践的な活動として、高く評価できます。パーパスを掲げて終わりではなく、具体的な行動を示す企業が増えることを期待したいです。

堤キャスター:
「今年の一皿」に選ばれたうなぎは、物価高の中でも、価格の選択肢が増えたことで、身近な一皿になったように思います。
おいしい日本の食文化を楽しむ機会が、国内はもちろん、海外にも広がることを期待したいですね。
(「Live News α」12月3日放送分より)