自転車は原則として車道を通行

皆さんは自転車を利用する際、車道と歩道どちらを走行しているだろうか?

道路交通法では、自転車は軽車両と位置づけられており、自転車は原則として車道の左側端を通行する。自転車の歩道通行は、あくまで例外として条件つきで認められている。

しかし、一方でこんな調査もある。

au損保の調査によると、自転車で車道を走ることについて「危ないと思う」もしくは「やや危ないと思う」と答えた人の割合は約95%という結果が出ており、多くの人が車道の左側通行を危ないと感じているのだ。(全国の自転車利用者1000人を対象、7月3〜6日にインターネット調査)

資料提供:au損保
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こうした中、au損保とスポーツバイク専門メディア「Cycle Sports」が、専門家の監修の元、「自転車が車道と歩道それぞれで通行し、交差点進入時にどちらが危ないか?」という実証実験をしている。

その結果として分かったのが、車道から交差点に進入する方が、歩道の場合よりも、自動車ドライバーに認知されやすく、安全であるということだ。

まずは検証内容を、詳しく紹介していきたい。

車道と歩道の通行はどちらが安全?

〈検証1 自転車が歩道通行から交差点に進入する場合〉

自転車は、交差点に進入するまで「歩道」を通行。
この場合の自動車ドライバーの意識が及びやすい範囲が下の写真となる。

資料提供:au損保
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ドライバーからは、歩道通行している自転車は認知されにくいことがわかる。

またこの時、バックミラーと重なって自転車が見えなかったり、歩道の植え込みやガードレール等が自転車の気づきづらさを助長するようだとしている。

そして、交差点進入時の写真がこちら。

資料提供:au損保
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ドライバーの視界に突然現れるように見え、接触や巻き込み事故等の可能性が高くなるというのだ。

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一方で、車道の場合はドライバーにどのように見えるのか?

〈検証2 車道通行から交差点に進入する場合〉

自転車は交差点に進入する前は「車道の左側」を通行。この場合のドライバーの視界はこのように見える。

資料提供:au損保
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ドライバーの意識の及びやすい範囲に自転車が存在していることがわかる。

もちろんこのまま交差点に進入しても、ドライバーから自転車の存在が既に認知されているため、接触や巻き込み事故等は発生しにくくなるというわけだ。

資料提供:au損保
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以上のことから、「車道の左側」と「歩道」とではドライバーからの認知に差があり、交差点進入前には「車道の左側」を通行していた方が安全であることが分かった。

これは、あくまで1つのシチュエーションにすぎないが、自転車利用者は、車道と歩道なら、やはり車道の通行を心掛けるべきなのだろうか?

今回、実証実験に立ち会ったNPO法人自転車活用推進協議会所属で株式会社セルクル代表の田中章夫氏に詳しく話を聞いてみた。

ドライバーが自転車を認知しているかが重要

――そもそも自転車事故は増えている?

昨年までの過去3年間の全国の事故件数の推移をみると全体の交通事故件数は減少傾向にあります。⾃転⾞に関係する事故に限ると、こちらも減少傾向にありますが、その減少の仕⽅がより緩やかです。


――実証実験の結果、どう受け止めている?

この結果は私が14年⾃転⾞通勤で得たクルマのドライバーの⾃転⾞に対する対応内容と合致しています。⾃転⾞で歩道を通⾏した半年間、交差点でクルマのドライバーに気づかれずに事故を起こす直前、つまりヒヤリを何度も経験したのですが、⾞道を⾛った14年間は事故はもちろんヒヤリもほぼ皆無です。

これはクルマのドライバーが⾃転⾞の存在を認知していたか、認知していなかったか、の差によるものであると考えます。

交通事故発⽣の背景は認知ミスが約80%

――やはり自転車は、歩道でなく、車道の通行をこころがけるべき?

現状では⾞道通⾏を⾏うべきと考えます。これにより事故の発⽣確率は⼤きく減少すると考えます。

【理由】
交通事故発⽣の背景は「認知ミスが約80%」という報告もあります。つまり認知ミスをなくせば事故の約80%を防ぐことができます。この認知ミスの改善に⼤きく貢献するのが⾃転⾞の⾞道⾛⾏です。


――車道のほうが歩道より危険な場合はないのか?例えば、車道の自転車の横を猛スピードで走る自動車とか?

直近のデータ(2019年)で交差点での事故と単一道路での事故を比較してみることにします。
交差点での事故(出会い頭、左折、右折)の⾃転⾞とクルマの交通事故件数全体に占める割合はそれぞれ76.7%。

一方で単一道路と思われる追い越し追い抜き・追突の事故件数は4.7%です。つまり交差点での事故は追い越し追い抜き・追突事故の16倍以上です。

これは単純に追い越し追い抜き・追突事故を1回経験する間に交差点で事故を16回経験するということです。残念ながらこの追い越し追い抜き・追突事故が猛スピードのクルマによるものかどうかはデータがないためわかりません。

ただ猛スピードで⾛⾏するクルマの割合は全体の中では⽐較的低いのでは、と考えます。つまり猛スピードのクルマとの追い越し追い抜き・追突事故の発⽣確率はさらに低いと考えます。

※イメージ
※イメージ

「ルールを守る」「人を守る」行動を

――最近は自転車での宅配サービスの事故も増えている。どう思う?

宅配サービスで⾃転⾞を利⽤されること⾃体は何ら異論はありません。環境⾯からも⾃転⾞で移動可能な距離をバイクやクルマで移動、配達する⽅が疑問です。

ただ配達については時間の制約についてよりシビアな状態で移動される、つまり余裕を持った運転が困難になると推測します。これは判断ミスを増加させ、その結果事故発⽣の確率を上げる結果となります。

だからこそより⾼い安全意識を持った⽅々が配達対応する必要があると考えます。

――我々は事故を起こさないためにどんなことに気をつけるべきことは?

クルマ、自転車、両者がまず「ルールを守る!」。
でもルールがわからない状況では、「人を守る!」と考えて行動してください。

なぜなら交通ルールは人を守るために作られているからです。もちろん交通ルールを正しく理解し守ることが前提ですが、みんながそう考えて行動するとと事故のリスクは減ると考えます。

そしてそう考えることによってルール以上の行動が取れるのです。


自転車は歩道のほうが車道より安全という認識の人も多くいるかもしれない。しかし、今回の結果を踏まえ、交差点での事故を起こさないためにも、自転車は歩道ではなくやはり車道の通行を心掛けて欲しい。

 

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プライムオンライン編集部
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