お店で作った料理の宅配を代行する「ウーバーイーツ」と言えば、好きな時に好きなだけ仕事ができる配達員の働き方が注目されている。
そんな仕事のスタイルが、これから大きく変わるかもしれない。

10月1日、ウーバーイーツは事故に遭った配達員に「見舞金」を支払う「傷害補償制度」をスタートした。
さらに3日、今度はウーバーイーツの配達員が「労働組合」を結成し、働き方の改善を求めていくと公表。


2つの動きはウーバーイーツと配達員にどんな変化をもたらすのだろうか。

6月から労働組合の準備がすすめられていた

そもそも「ウーバーイーツ」は、アメリカの配車サービス「ウーバー」の子会社で2016年に日本進出。
今や登録しているレストランは1万軒を超え、配達員は日本全国に1万5千人以上いるとも言われている。

配達員は好きな時に仕事を受けられるメリットがある一方、アルバイトや社員ではなく「個人事業主」として働くため、これまでは勤務中事故にあっても労災保険が適用されなかった。

出典:ウーバーイーツユニオン準備会

そこで2019年6月から、配達員の待遇を改善する目的で労働組合結成の動きが本格化していた。
当時の労働組合側とウーバーイーツの対応については編集部でもお伝えした。
最近よく見る「ウーバーイーツ」の配達員が“労働組合”の結成を目指すワケ

労働組合結成前に開かれた準備会では、報酬や評価について不透明な点があるなど様々な問題が噴出。
また、仕事に必要なアプリが突然使えなくなるという失職についての不満や、配達距離が分からない状態で契約を結ばなければならないシステム上の疑問など、様々な話し合いが行われてきた。
そして、10月3日に行われた労働組合の結成大会には17人の配達員が集まり、今後は組合を通じて会社側に労働環境の改善を求めていくという。

出典:Uber

導入された傷害補償制度とは?

一方、ウーバーイーツは以前から配達中に起きた事故の対人・対物賠償保険を設けていたが、これまで配達員のケガは対象になっていなかった
1日に導入した「傷害補償制度」は、配達員が仕事を受けた時点から、配達完了か注文がキャンセルされるまでの間に起こった事故について「見舞金」が支払われる。
医療費については最大25万円、死亡した場合は最大1千万円で、それとは別に葬儀費用は100万円まで補償するという。配達員に追加のコストは発生しない。

ただし、配達員に事故の重大な過失がある場合や、故意に事故を受けた場合は支給されない。
また医療費を全額給付する労災保険とは違い、ケガをして休業している間の補償などは受けられない。

ウーバーイーツが新たに始めたこの制度について、労働組合はどう思っているのか?
逆にウーバーイーツは労働組合の結成をどう思っているのか?
まずは、労組結成を呼び掛けた全国ユニオンの事務局長である関口達矢さんに聞いてみた。

補償制度はもちろん望ましいが…

――ウーバーの「傷害補償制度」導入をどう思う?

会社の方で制度を作るということについては、もちろん望ましいことだと思っています。
ただ、補償の内容は詳細に見ないといけないでしょう。
発表されたばかりでまだ情報少ないんですが、今後どこをどう改善してほしいなどの要求していくことはあり得ると思っています。
(※取材は2日)

――問題点として挙げられている「透明性」とはどいういうこと?

配達員は、お店とお客さんの両方から評価を付けられますが、それが報酬などに反映されているのか「不透明」な状態なのです。
また過去には、ウーバーイーツが距離計算を間違えて、配達員に報酬を返金することが一部であったと言われています。しかし、それがどういう風に間違って、どういう風に計算して金額を決めたのか今一つ分からない
このようなことについて「透明性」を確保して頂きたいということです。

――アプリが停止して仕事ができなくなるってどういうこと?

仕事をする上で重大な悪事を働いたら解雇されても仕方ありませんが、「何回か交通事故を起こすとアプリ停止になる」という話が一部であるようです。

アプリ停止は事実上働けなくなること。
例えば小さな自損事故などペナルティが軽そうなものも重そうなものも一緒くたに扱われているようで、それでは困るという声が上がっています。

――「配達先の距離がわからない状態で契約する」というのはどういうこと?

例えば、ウーバーイーツと同じようなアプリを使っている宅配便ドライバーは、どこの倉庫からどこに届けるのか最初から分かっています。
ウーバーイーツの場合、お店の場所が分かるだけで、届け先不明の状態で仕事を受けるか決めることになります。
距離によって報酬が変わるので、最初から明示してもらいたいと考えている人は結構いるのです。

傷害補償制度ができたのは組合のおかげ?

――組合としては「労災保険」にしてほしいのでは?

現行法の中で配達員は労災保険の対象にはなっていません。
おそらく労災保険の補償を求めて裁判をしても、いい結果にはならないでしょう。
そういう意味で、保険会社と契約してこのような制度を立ち上げるのは「次善の策」だと思います。

――傷害補償制度ができたのは組合のおかげ?

いいえ、正確にはまだ要求を出していませんので。
ただホームページにこちらの考えを掲載するなどしてきましたので、多少は意識してくれたのかなとも思います。

出典:ウーバーイーツユニオン準備会

ウーバーイーツにも聞いてみた

一方、ウーバーイーツはなぜ今になって「傷害補償制度」を導入したのか?
そして労働組合の結成をどう思っているのか?担当者に聞いてみた。

――なぜ今「傷害補償制度」を導入することになった?

配達パートナーは、Uber Eatsのサービスを支えてくださっている重要な存在です。
今後も配達パートナーに安心で安全に配達いただくために、必要な制度だと考えたからです。

当補償制度については長期にわたり協議を続けてきました。
Uber Eatsは新しい働き方であり、適切な制度を開発することは容易ではありませんでした。
三井住友海上火災保険様とは2016年ごろから協議を開始し、2017年7月より自転車の配達パートナーに対人対物保険を適用(その後2019年4月に全パートナーへ適用)、その後も協議を重ね、この度傷害補償制度の提供開始に至りました。

――もしかして配達員を社員やアルバイトとして扱うことになった?

いいえ、配達パートナーは「個人事業主」です。
Uber Eatsが提供するプラットフォームを活用してレストランパートナーとお客さまに配達サービスを提供いただく仕組みで、柔軟に働くことが可能になっています。

――事故で自転車やバイクが壊れたら補償してくれる?

本補償制度は配達パートナーご自身の怪我などを補償するものであり、事故による自転車やバイクの破損は補償対象ではありません。

「今後も配達員のニーズと真摯に向き合っていく」

――労働組合の結成をどう思う?

多くの配達パートナーがUber Eatsの仕事のフレキシブルさに価値を感じてくださっている中で、同時にこの個人事業主という働き方の質と安全性を高めるために、日々取り組んでおります。
1日には、従来の対人・対物賠償責任保険に加え、配達パートナーご自身の怪我などを補償する傷害補償制度の提供も発表いたしました。
我々は常に、Uber Eatsにおいて配達パートナーにより良い体験をしていただく方法を模索しており、今後も彼らのニーズと真摯に向き合っていく所存です。

――「なんでアプリ停止されて働けなくなったか分からない」という声があるようだが?

我々は、サービスを使う全ての方を対象にした明確なコミュニティガイドラインを持っており、万が一それに反する行動があった場合、アカウントを停止させていただくこともあります。

――「配達距離が分からない時点で契約するのはおかしい」という声については?

配達先を事前に提示していないのは、過度なキャンセルを防ぎ、かつプライバシーに配慮する目的です。
日々配達パートナーにより良い体験をいただく方法を模索しており、今後も取り組みを進めてまいります。


新しい働き方として注目される一方で課題もあったウーバーイーツ。
労働組合はまだ正式な要求を出していないが、より働きやすい環境に向かって双方が一歩ずつ歩み寄ったと言えるのかもしれない。