兵庫県知事に再選した斎藤知事を巡り「公職選挙法」違反の疑いが指摘されている。
具体的にどう問題にあたる可能性があるのだろうか。
元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士にスタジオで話を聞いた。
「ボランティアとして…」斎藤知事が説明
青井実キャスター:
さきほど、斎藤知事が取材に応じましたね。

宮司愛海キャスター:
会見で斎藤知事は、PR会社に対して「ポスター制作などで70万円支払った」「SNSなどは斎藤事務所が主体的にやっていた」と説明。
さらに、PR会社代表については「ボランティアとして個人で参加したと認識している」などと話しました。
青井実キャスター:
斎藤知事は先ほどこのように説明しましたが、高井さんが気になる点はありますか。
高井康行弁護士:
まず代表という人が、ブログをネットに載せましたよね。
その内容からすると、単にポスター制作だけを依頼したのか?ということは若干疑問に思います。
青井実キャスター:
また斎藤知事が「ボランティアとして参加していただいた」と説明した点は、どうご覧になりますか?
高井康行弁護士:
「個人がボランティアで選挙運動に参加すること」、これは全く違法性はありません。
多岐にわたる活動内容が記載
青井実キャスター:
こちらは違法性はないということですが、PR会社の代表はネットに公開したコラムで、選挙について何をしていたのか書いています。

宮司愛海キャスター:
兵庫県でSNS運用代行などを行うPR会社の代表は、例えば、「ポスター・チラシ制作」「選挙公報・政策スライド制作」「SNS運用戦略立案」ですとか、「プライバシーへの配慮」なども気にしながらSNS投稿したり、あとは「アカウントの立ち上げ・運用」「写真・動画作成・ライブ配信」と、本当に多岐にわたる広報活動をやっていたという風に書いていたんですね。
青井実キャスター:
知事選でさまざまな活動を担ったとしていますが、ここに問題点は何かありますか?
高井康行弁護士:
この活動が「選挙活動」に該当するかということ。「選挙運動」に該当すれば、これを有償でやれば、「運動買収」ということになるし、個人として無償でやったんなら、問題はないということです。
青井実キャスター:
ただ斎藤知事は、「ボランティアで個人で参加してもらっている」という説明なんでここは問題にあたらないんじゃないかと。
高井康行弁護士:
それが事実であれば。
「公職選挙法」ルールとは
青井実キャスター:
ここで、改めて「公職選挙法」のルールというものを見ていきたいと思います。
宮司愛海キャスター:
選挙中、公費でまかなうことが「公職選挙法」で認められている費用が、「選挙カーのレンタル料・ガソリン代」や「選挙活動用のビラ・ポスターの作成」など。
宮司愛海キャスター:
それから報酬に関しても規定があります。
例えば、「手話通訳」「要約筆記者」「車上運動員(いわゆるウグイス嬢)」、さらに「事務員」など、こういった方々に限って報酬を支払って良いという風に決まっています。
青井実キャスター:
選挙に必要なことであるので、支払いは可能ということですね。
高井康行弁護士:
もっと正確に言うと、「機械的作業」だから。
「配信」は選挙運動に該当するか
宮司愛海キャスター:
そうしたなか、こういった映像が入ってきています。
投票日の前日に行われた演説の様子ですが、斎藤知事が演説をしています。その横にいるスマホを掲げている人物が、PR会社の代表とみられる人物です。
選挙カーの上に乗って、スマホで斎藤知事の演説を撮影しているのか、配信しているのか…そういった様子がわかります。

青井実キャスター:
ポスター制作の一環で、選挙カーに乗って撮影する行為というのは考えられるのか?法律上問題ないのか、このあたりはどうでしょうか?
高井康行弁護士:
基本的にはポスター制作と関係がないので、一環というのはなかなか苦しいです。
で、配信するということは、選挙運動に該当します。撮るだけならいいですけど、配信すれば、それは「集票活動」です。
青井実キャスター:
パックン、このあたりどう思います?
パトリック・ハーランSPキャスター:
ライブ配信というのは、わりと新しい技術であって、これはしっかり法律のなかで明確に禁じられているんですか?それとも判例がない?
高井康行弁護士:
ライブ配信は選挙運動ですよ、という規定はありません。
しかし選挙運動というのは「集票活動」のことですから、ああいう演説しているところをライブ配信すれば、それは「集票活動」そのものです。なので選挙運動にあたるということですね。
青井実キャスター:
票を獲得することにつながっちゃうということですからね。
パトリック・ハーランSPキャスター:
おそらくですけれど、斎藤さん側は、これはポスター制作と同じ「広報活動」の一環で、集票活動ではないという弁論もできるかと思いますけれど。
高井康行弁護士:
いや広報の仕方によっては、広報を「集票活動」という言い方もできるわけだから。
「これは広報活動です」と言っても、それは弁解したことにはならないですよ。
青井実キャスター:
これ、ボランティアですと言ってもだめですか?
高井康行弁護士:
ボランティアなら良いんです、選挙運動はボランティアでやるものなんです。
逆に言うと、ボランティアであれば誰が選挙運動をしても良いんです。原則的に。
コラム“書き換え”理由とは?
青井実キャスター:
ここで見ていきたいのが、PR会社代表がコラムを一部書き換えて、注目されていたということです。

宮司愛海キャスター:
どのように書き換えられたか、一部見ていきたいと思います。
写真についたキャプションとして、訂正前は「(社名)オフィスで『#さいとう元知事がんばれ』大作戦を提案中」という表現でした。
それが訂正後には、「オフィスで『#さいとう元知事がんばれ』を説明中」という風に表現が変わったんですね。

青井実キャスター:
これ訂正されたわけですけれど、「提案」というとよろしくない理由がある?
高井康行弁護士:
まず会社名が外れたというのは、会社名を載せていると、これは会社の業務としてやったという風に思われる可能性が出てくる。
それから「提案」という言葉を使うと、主体的に会社が色々考えて発案して、提案したという意味だから、会社の主体性が強くなると。
そういうことを、丁寧に丁寧にしていくかと、それが実態に反しているんじゃないのという風に考えて、正確に記載し直したという見方もできます。
どちらが正確かは、今の段階でわからないんだから。
「本人も気に入っていた」一文削除も
青井実キャスター:
あとさらにありますね。

宮司愛海キャスター:
こちら「SNS運用フェーズ」と書かれた表なんですが、
「フェーズ1:種まき」「フェーズ2:育成」「フェーズ3:収穫」といった票です。この票に添えられるように、「ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました。」という文章があったのですが、この一文と票が、まるごと削除されていました。

宮司愛海キャスター:
さらに、こちらの文章ですね。
当初、「『前知事がんばれ』ではなく『元知事がんばれ』としたのも、こだわったポイントです。ここは、ご本人も気に入っていました!」という風に書いていたんですけれど、「ここは、ご本人も気に入っていました!」の一文が消されていたと。
青井実キャスター:
高井さんどうでしょう、「本人も気に入っていた」を削除する理由について。

高井康行弁護士:
従来の表現だと、本人が深く関与していたという風に思われる可能性があるということを考慮したんだと思いますね。
それと、もう1つの「ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました」という文章は、会社の業務性が疑われる部分を消していると。
会社の業務でやっていたのか、個人でやっていたのかそれは分かりませんよ。どちらか分からないですけれど、変化している部分を指摘すればそういうことですね。
青井実キャスター:
今後、捜査などが動く可能性も言われていますが、どのあたり今後の展開で注目されていますか?
高井康行弁護士:
まず契約がどうなっているのか。実際に払われたのが70万円なのか。またそれ以外、金額を払う以外に役職を提供するとか、そういうことがなかったのかがポイントですね。
そのへんに関心を持ちながら、警察は報道を注視しているという状況だと思います。
青井実キャスター:
元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士に聞きました、ありがとうございました。
(「イット!」11月25日放送より)