広島の名産、冬の味覚・牡蠣。猛暑の影響で水揚げを遅らせたが、その分、身はプリップリに育っている。生産者らからは「待った甲斐があった」という声が聞かれる。水揚げ開始から1カ月の生産現場を追った。

遅れてやってきた「旬」の到来

牡蠣の殻とりの作業場は大忙し。

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水揚げされたカキの中身は…プリップリッだ。

国内生産量1位の広島の牡蠣の水揚げは例年10月1日だが、猛暑の影響で2024年は20日遅れのスタートとなった。水温が下がらないと、身が太らないため旬が来るのを待つことになった。

この夏は広島湾の水温が過去20年間で初の30℃を記録。水温が高いままだと、牡蠣の成長が止まってしまうため、生産者はただ「待つ」しか選択肢がなかった。

広島市にある水産加工会社「米田海産」の米田礼一郎社長は「出荷期間が短くなるのはマイナスだが、待った分だけカキの身は太り、よくなった。ギフト需要の増加も期待している」と語る。

猛暑で減少する供給量

しかし、すべてのカキが順調に育ったわけではない。

猛暑で死んでしまったカキも多く、一部の養殖いかだでは半数以上が死んでしまったという。米田社長は「夏場の暑さは人間にはどうすることもできない。カキが死んでしまえば元には戻らないので、環境に順応していくしかない」と夏の厳しい状況を振り返る。

猛暑の影響は生産現場だけでなく流通にも波及している。通常ならほぼ全ての生産者が水揚げを始めている時期だが、今は7割程度に留まっている。

広島市の水産加工会社「カネウ」の村田泰隆社長は「需要は旺盛だが、供給量が追いついていけない。牡蠣の数が少ない分、需給バランスが崩れている」と今は生産が追い付いていないことを吐露する。

量が減った分、味は濃厚に

猛暑で絶対量は減ったが、その分、残ったカキは栄養をしっかりと取り込み、味の濃さがあるという。村田社長は生産量ではなく質に期待をかける。

「残った牡蠣がエサを多く取り込み、味は良くなると思う。これから徐々にペースを上げ、シーズンを盛り上げていきたい」

一方で、生産現場では別の課題も。取材した五十川裕明ディレクターによると、中身のないカキを水揚げすれば、殻の廃棄が増え、堆積場がひっ迫する恐れがある。牡蠣殻を砕いて肥料にするなど、SDGsの観点からも再利用を進めている。

(テレビ新広島)

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