日本商工会議所は21日、「第3号被保険者制度」の将来的な廃止を提言した。専業主婦・主夫の年金負担が不要な現行制度は不公平との指摘があり、廃止により労働者不足の緩和や女性の社会進出促進を目指すという。
日本商工会議所が「第3号被保険者制度」解消を提言
連日のようにニュースになっている「103万円の壁」。パートの主婦などが直面している「別の壁」の問題で、新たな動きがあった。日本商工会議所は21日、将来的に「第3号被保険者制度」の解消を求める年金制度改革に関する提言を公表した。
この記事の画像(11枚)今回のテーマは、「“3号”解消なら専業主婦・主夫どう影響?」だ。
青井キャスター:
日本商工会議所が政府に提言したのは、第3号被保険者制度の将来的な廃止です。
まず3号について説明していきましょう。現在の年金加入者は、大きく分けて第1号から第3号に分類されます。
今回の提言に大きく関係してくるのは、約675万人いる会社員の配偶者など、年収130万円未満の3号に分類される人たちです。
日商企画調査部長・五十嵐克也氏:
年収の壁の問題の根っこにありますのは、第3号被保険者制度についてです。
この制度は、基礎年金制度ができた1986年に同時にできているわけですが、もはや時代に合わない世帯モデルをもとにしたものであって、被扶養者として保険料の本人負担がないということから、不公平じゃないかというような指摘も根強い制度です。
これを解消する検討をすべきという風に思います。
青井キャスター:
制度が導入された1986年当時、専業主婦などの第3号の人口は1092万人でした。結婚すると仕事を辞める女性が多い時代だったため、国は本人が保険料を支払わなくても国民年金に加入できるよう、配偶者が加入している年金制度で保険料分を負担することにしました。
青井キャスター:
理由は、以前の制度のままでは、会社員の配偶者が老後に年金が受け取れない恐れがあるためでした。
しかし、今やライフスタイルの変化で、共働き世帯が当時に比べて大幅に増えています。さらに提言では、第3号被保険者で居続けるために働き控えをする人もいることから、年収の壁の根本的な要因になってると指摘しています。
3号廃止の時期について、日本商工会議所は「将来的に」と話し、次のように提言しています。
日商企画調査部長・五十嵐克也さん:
これ(3号制度)を今、急にやめろと言っても無理です。無理ですし、基本的に3号のところにおられる方々に負担を求めるようなことにもなります。
そういう方々への配慮もあって、方向としてはこの制度を解消すべきだということでありますが、例えば10年、20年後に解消するということを目指して検討していただく。その決断は早いほうがいいと思います。そうしないと、皆さんの準備が進められない。
労働人口の減少に対応か
青井キャスター:
中村さん、3号制度の廃止、どう思いますか?
SPキャスター 中村竜太郎さん:
やはり40年前の古い制度だということとか、あるいはその不公平感、それについては理解はできるんですけれども、ずっと専業主婦だった人に急に働けと言われても戸惑うと思うんですよね。仮に廃止するにしても、段階的に変えていく、そういう配慮が必要なのではと思います。
青井キャスター:
では、3号の方に話を聞いてみましょう。
専業主婦(30代):
実際に金額がいくらぐらいかかってくるかで、生活が変わってくるかなと思います。今まで払っていなかった分を払わないといけないのは、家計にも負担かなと思います。
育休中(30代):
厳しいですね、かなり。世知辛いというか、どうしたものやらって感じです。フルで働くしかないのかな。どうなんだろう。
青井キャスター:
今回の提言の狙いは、何なのでしょうか。社労士の渋田さんが分析しました。
社会保険労務士法人V-Spirits・渋田貴正さん:
今、労働者不足が叫ばれています。これからどんどん労働者人口が減っていく時代になってくるので、そんな中、日本に今いる人たちの中で労働力を増やせないかということで、130万・106万の壁の範囲内にいる人たちに労働時間を増やして働いてほしいということです。
青井キャスター:
今、第3号は男性が約13万人、女性が約662万人と大部分は女性なわけですけれども、他にはどんな影響が予想されるんでしょうか。
社会保険労務士法人V-Spirits・渋田貴正さん:
日本は女性の社会進出というのが、まだまだ諸外国ほど進んでないと言われてるんですけど、それの一因は第3号被保険者制度という制度なんじゃないかということで、女性の社会進出の一助になるのが狙いです。
青井キャスター:
長年続いてきた制度の行方はどうなるのか、今後の政府の対応も気になります。
(「イット!」11月22日放送より)