琉球王国時代に祭祀を司った最高位の神女・聞得大君の儀式と行列が8年ぶりに南城市で再現された。参加者は全員が南城市の市民たち。伝統を誇りに思う地域の人々の心で琉球王国時代の神聖な景色がつくりあげられた。

南城市に生まれたことを誇りに思う

琉球王国の最高神女・聞得大君は、祭祀をまとめ、国の繁栄を祈る役割を担っていた。

琉球王国の最高新女・聞得大君
琉球王国の最高新女・聞得大君
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聞得大君がその職に就任するとき、琉球最大の聖地・斎場御嶽で行われた儀式が「お新下り」。聞得大君の一行は、首里城から一日かけて斎場御嶽まで練り歩き、夜中に就任儀礼を執り行ったといわれている。

日が暮れた時間に合わせて、南城市で再現された当時の行列。聞得大君を務めたのは地元出身の琉球舞踊家の新里春加さん。

聞得大君役 新里春加さん:
南城市に生まれ育ったということをすごく誇りに思っていて、市民が作り上げるお新下りの行列に参加させていただくということが光栄です

参加者の最高齢は88歳

行列に参加した全員が南城市の市民たち。本番に向けて、2週間前から歩き方や所作などの練習に取り組んできた。

参加者の最高齢は88歳の屋比久一男さん。

屋比久一男さん(88):
もう歳だから最後だろうと思って。歩いてみて、普段車で(斎場御嶽)まで行っているので、こうしてゆっくりゆっくり歩くのがないから、結構長いんだなと

今回の行列には若い世代の姿もあった。

向陽高校2年 時志駿之祐さん:
聞得大君の御輿を一緒に担ぐ役です。光栄なことだと思います

向陽高校2年 盛根勝大さん:
地域行事はたくさんあると思うんですけど、知る機会があまりなくて今回が初めて

お新下りの開催にあたって再現されたのが聞得大君の正装。
色鮮やかで繊細な龍や鳥などの刺繍が施されているのが特徴で、その煌びやかな様は、聞得大君が琉球王国にとって最も重要な「オナリ神」であったことを象徴している。

屋比久一男さん(88):
「似合ってる?」
「裁判官。裁判官だからこんなシンプル」

高校生の時志さんと盛根さんも衣装を身に着け当時の役人になりきった気持ちで本番に臨む。

向陽高校2年 盛根勝大さん:
実際に衣装を着てみて、自分もこの祭りの一員になれたんだなという実感がします

向陽高校2年 時志駿之祐さん:
ちょっと慣れていないのでドキドキというかそういう気持ちはあります。みんなと一緒に成功させたいなと思います

本番当日、一行は聖地・斎場御嶽へ向かう

聞得大君役 新里春加さん:
神聖な斎場御嶽の中で、たくさんの人が集まって再現ができたということは、神聖な気持ちにもなりましたし。みなさんいろんな思いで見ていただけたんじゃないかなと思います

聞得大君が人々の幸せを祈り大自然の神への感謝を奉納

屋比久一男さん(88):
いい天気だったら良かったんだけど雨で、これもまた良いかもしれない雨で。いい思い出になる。これで最後になると思うので

屋比久さんの娘:
圧倒されました。今回8年振りにあるということを聞いたので、父が88歳という年齢もあるので、最初で最後かもしれないという思いで。よかったですね琉球王朝があったんだなということを実感しましたね

屋比久さんの孫:
よかったです、初めて見たので感動しました

伝統を次の世代へ

地元の伝統に触れた高校生たちは、琉球王国時代の景色を今後につなぐ経験となった。

向陽高校2年 時志駿之祐さん:
やり切った感もありますし、無事成功できてよかったです。
見られ慣れていないところもあったんですけど頑張って担ぎました

向陽高校2年 盛根勝大さん:
今回祭りを通して地域のこういう行事に参加できたということは、将来においても良い経験だと思うので、これからもこういう機会があれば参加してみたいなと思います

南城市役所 観光商工課 米盛須美恵さん:
南城市でお新下りが行われたことは、なかなかこういう機会がないと知ることがない。斎場御嶽がある南城市だからできることなので、それを大切にして、宝ですので次の世代につないでいけるように頑張っていきたい

お新下りの再現を通して、伝統が地域の人々の手により守られ、次の世代に受け継ぐ大事な1ページが綴られた。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
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