図面のない構想段階から気軽な製作相談ができる、ものづくりDXプラットフォーム「プラッとものづくり」。大田区発の「I-OTA・大田区グループ」には全国から100社近くの中小製造業が参画しています。「I-OTA・大田区グループ」の特徴のひとつが、日本国内だけでなく、海外企業に向けても積極的にPR活動をしていること。大田区発の町工場グループは、海外に向けてどんなアプローチをして、どんな反響を得ているのでしょうか? 海外向けの活動を担当する「海外分科会」の新井さん、國廣さん、栗原さん、辻村さん(以下、敬称略) に座談会で聞きました。
日本の町工場グループが、海外へ積極アプローチしている理由
――「I-OTA・大田区グループ」のような“共同受注体”は日本でもまだまだ珍しいスタイルだと聞いています。そのなかでも、いち早く海外に目を向けてPRをしているのには、なにか理由があるのでしょうか。
栗原:海外でも「ものづくり」は盛んですが、「頭で考えているモノを実際にカタチにする力」はまだまだ大田区の町工場が長けていると考えています。町工場集団ならではの知識やノウハウの部分でお手伝いできるのではと思い、海外分科会で積極的にアプローチしています。
――そう考えたきっかけはあったのでしょうか。
栗原:「プラッとものづくり」ができる以前ですが、「I-OTA」のチームで「ケナフ」という繊維素材の抽出装置を作ったのがきっかけですね。マレーシアのベンチャー企業から相談を受け、大田区内の装置メーカーが参加して共同開発しました。 海外の企業と仕事をすると、日本での案件とはまた違った観点や条件があって、「海外でも我々の知識が役立つことはたくさんあるんだな」と気づくことができました。
――実際に海外の企業と仕事されたことがきっかけだったんですね! ちなみに、海外分科会は具体的にどんな活動をしているのでしょうか。
栗原:展示会に出展したり、逆に展示会に出展している企業を見に行ったりすることもあります。事業をプレゼンするピッチ大会にも参加したことがありますね。
國廣:初めて海外で「『I-OTA・大田区グループ』はこんなチームです」と話したとき、漠然とした課題をもった方々が、外国人・海外にいる日本人問わず、こぞって相談しに来てくれたのは嬉しかったです。僕らは小ロットでも量産でも、バラエティに富んだものづくりができるのが強みなので、どんな課題をもった方の相談でも受けられるのはよかったなと。
栗原:ワンストップでものづくりができるのも強みですね。「ここに1回相談すれば最後まで完結できる」と思ってもらえると、強い関係性が作れます。
――海外といっても広いですが、特に注力しているエリアはありますか?
栗原:シンガポールですね。資金源や新しいアイデアはあるけれど、それをカタチにできる企業は少ないといった観点から、ターゲット国としました。シンガポールという国自体が東南アジア諸国へのハブ機能を持っているので、まずはシンガポールから、各国にクチコミが広がっていくという将来展開も見据えています。 11月中旬にはまたシンガポールへ行き、現地の展示会にも参加予定です。
脱「ものづくり屋さん」を目指して、案件対応を強化
――アプローチの結果、海外からの問い合わせや受注は発生しているのでしょうか。
國廣:受注はまだないものの、問い合わせ段階で進行しているものはいくつかあります。3Dプリンタやトイレのお掃除ロボット、医療機器まで、相談の幅は広いですね。医療機器開発の会社では、「自社で試作品を作っているものの、コストと品質が見合わない」というお悩みを抱えていらっしゃいました。適切な素材の知識がないままに作ろうとすると、コストパフォーマンスが悪くなってしまうものです。樹脂については海外分科会メンバーの栗原さんが詳しいので、どんな樹脂が適切かつ、安価にできるのか相談のうえ、日本国内で製造する話が進んでいます。
辻村:シンガポール国立大学との連携も進んでいますね。学生が立ち上げたベンチャー企業のプレゼンを5~6社聞いて、協業できそうな会社とNDA(機密保持契約)を結んで詳しい話をし始めています。
――シンガポール国立大学との取り組みはもうすぐカタチになりそうな状況なのでしょうか。
辻村:私たちのなかでも悩みながら進めていて、もう少し時間がかかりそうです。シンガポールの隣国であるマレーシアと比べてしまうと、どうしても日本への発注はコストがかかるというネックもあります。また、まだまだ学生たちは私たちのことを「単なるものづくり屋さん」として見ています。そこを払拭して、上流工程からものづくりコンサルティングとして一緒に仕事ができたらとは思いますね。
國廣:それもまた、案件によってフェーズも異なるから難しいところだよね~。ほぼ出来上がっている段階での相談もありますし……。まずは、いろんな案件をこなしていくしかないのかなと思いますね。まだ海外での展開は始まったばかりで、10件にも満たないですし。さまざまな案件を対応するなかで仕事の幅を増やしていくやり方は、日本でも海外でも変わりませんね。
図面は共通言語。意外にも少ない海外の壁
――海外の企業とやりとりする際、苦労する点はありますか?
栗原:待ち合わせは時間通り来ないよね(笑)。
一同:ああ~~~!
――あるあるなんですね(笑)。逆に、やりやすい点はあるんでしょうか。
國廣:英語さえできれば、コミュニケーションは取りやすいですね! 日本人のなかには、職人気質でこちらからヒアリングしていかなければならない人もいるけど、外国人は自分から課題感や悩み事を全部話してくれる傾向があります。むしろ、ビジネスは日本人より外国人のほうがやりやすいかも……なんて思いますね。
――海外の企業とは、図面のやりとりも支障なくできるものでしょうか。
新井:図面は世界共通言語ですから、特に支障はありませんね。普段から英語の図面に触れる機会もありますし、珍しいものでもありません。ミリとインチの違いはありますが、これは海外案件をやっていくうえで避けられない部分なので、慣れていくしかないでしょう。個社の仕事でも、「『ミリ』のネジかと思ったら、『インチ』ネジかよぉ~! 」なんてうっかり、よくありますもん(笑)。読めない言葉もスマホの翻訳アプリで確認すればいいですし、町工場の現場でもみんな意外と気にしていませんね。
「日本のものづくり窓口」となってメイドインジャパンの復権に貢献したい
――海外分科会の今後の展望について教えてください。
國廣:プラッとものづくりを通して、メイドインジャパンの復権を遂げられたら嬉しいなと思っています。現在、アジア諸国は人海戦術で安く製品を量産していますが、そうも言っていられない時代が来ますし、人海戦術では品質は属人化します。自動化・省力化の競争がどんどん激しくなる時代だからこそ、我々の技術力の出番かなと。
――アジア諸国の製造業の自動化・省力化に向けてイノベーションを提供するのは、SDGsへの貢献にもつながりそうですね!
國廣:そうですね。この取り組みを広げていくためにもまず、実績を1つ作ることが目下の目標です。実績があれば、海外の企業はもちろん、大田区をはじめ全国の町工場の仲間企業にも、「海外とこんな仕事をやっているんだ」と目に見えて分かるようになるので。大田区、ひいては日本のものづくりが盛り上がるきっかけになってほしいです。なお、海外向けの問い合わせフォームも今年オープンしたので、今後さらに「日本のものづくり窓口」としてプラッとものづくりが海外へ浸透していくことを願っています。
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