ことし4月、産地偽装事件が起きた京都の高級ブランド「間人ガニ」。 先週末、事件後初めて漁が始まった。京都のブランドは信頼を回復することができるのか。
■【動画で見る】超高級食材「間人ガニ」産地偽装 タグ不正使用に手を染めた水産会社「事件直後はクレームの電話鳴りやまなかった」
■一杯4万円の値が付くこともある超高級食材

初セリの卸売市場に響くセリの声。漁が解禁され、仲買人が求めるのは京都府京丹後市の名産品「間人ガニ」。 その特徴は漁場と港が近いことによる「圧倒的な鮮度」。
さらに水揚げを許されているのが、たった5隻の小型漁船のみという「希少性」だ。 『幻』とも言われ、一杯4万円の値が付くこともある超高級食材「間人ガニ」。 もちろんそのお味は…
犬伏凛太郎記者リポート:すごい甘いです。身がぎっしりつまっていて、歯ごたえがありおいしいです。
一般的なズワイガニと「間人ガニ」は一目見てわかる違いがある。 それはこの緑のタグ。このタグをつけられたズワイカニだけが「間人ガニ」を名乗ることが出来るが、このタグをめぐり、7か月前、業界に激震が走った。
■タグの不正使用が発覚 倉庫には大量のタグが

ことし4月、京丹後市にある水産会社の元役員の男(42)ら2人が間人漁港で水揚げされていないズワイガニに「間人ガニ」を証明するタグを不正に装着していたことが発覚。 罰金の略式命令を受けた。
これは関西テレビが入手した動画。水産会社の倉庫には…
本来、認められたカニ漁船のみが取り扱いを許される緑のタグが大量に保管されていたのだ。 水産会社の男は漁船関係者の女からタグを譲り受け、産地偽装に及んでいた。
京都府漁業協同組合 西川順之輔組合長:一生懸命やってきたことが一日にして奈落の底へ落ちるということで、今後また間人ガニのブランドをしっかりと見直してまた元に戻るよう努力したい。
■QRコードなど新たなタグ導入 ブランド守る新たな取り組み

事件以降、京都府は新たにQRコードなどが付いた新たなタグの導入を決め、水揚げされた日や漁船名などを確認することが出来るようになった。 こうした対策を現場はどう捉えているのか。漁を許された5隻の漁船のひとつ、愛新丸の船長が取材に答えた。
愛新丸 佐々木学さん:先代たちが築き上げてきてブランドは確立されている状態だった。甘えてたんでしょうね、自分たちも。 (間人ガニ)ブランドを自分たちがどういうふうに守っていくのか。2度とこういう不正が出ないように。
これまで漁船が業者から購入していたタグは、京丹後市の職員などの立会いのもと直接手渡されるようになり、渡した数と使用した数が照合されるようになった。
係員:あれ、ちょっとわからなくなった。
始まったばかりで手探り状態だが、何とか地域のブランド食材を守ろうと取り組んでいる。
愛新丸 佐々木学さん:間人ガニだと証明できるように、きちんと(タグで)通し番号つけます。間違いなくつけます。
■産地偽装の水産会社 「事件直後はクレームの電話鳴りやまなかった」

対策が進む一方で、産地偽装に手を染めた水産会社は今、どうなっているのか。漁の解禁が迫った先月末、取材班が現場に行くと…
犬伏凛太郎記者リポート:現場となった水産会社の加工場です。7か月前と外観は変わってないが、屋号のみが変わっているようです。
事件から7か月、会社の新しい代表が取材に応じた。
水産会社の新代表:東京の料亭から『間人ガニ』を求められたりするので、仕方なく…。
会社はタグを不正に付け替えていた男を解雇。いまは新しい代表の女性が切り盛りしているといいます。
水産会社の新代表:事件直後は『うちへ売られていたのは偽物だったのか』とクレームの電話が鳴りやみませんでした。事件以降、間人(たいざ)の他の会社とは、取引が全くできなくなりました。
■東京の料亭から『間人ガニ』を求められたりするので、仕方なく...

なぜ男は産地偽装に手を染めたのか問うと…
水産会社の新代表:間人は小型船なので(海が荒れると)何週間も漁に出られないことがあります。 それでも東京の料亭から『間人ガニ』を求められたりするので、仕方なく津居山のカニ(ズワイガニ)にタグをつけたんだと思います。
取材で見えてきたのは市場から求められる間人ガニの量と供給できる量の不一致。 なぜこのようなことが起きるのか。
間人漁港は小さな港のため大型漁船は入港できず、小型漁船は海が荒れると漁に出られなくなる。 実際に、今年の漁解禁を翌日に控え、その準備を取材していた時にも…
愛新丸 佐々木学さん:もう出れん、出港なしです。もう無理です。しけで。
■京都府「需要が多いは勝手な言い訳 。販売者は説明責任を」

高いブランド力による需要と供給量が安定していないという希少性が産地偽装の背景にあったのだ。 京都のブランド食材としてアピールしてきた府は、この現状をどう捉えているのか。
京都府水産課 川原崎尚志課長:需要が多いからどうのこうのは非常に勝手な言い訳でしかないと思っている。 限りある資源を限りある漁業者の中で確保して、それを販売している間人ガニがないのであれば、ほかの漁港の津居山や舞鶴を使っていただく。 『きょうは間人ガニがないので津居山のカニ使っています』と正直に言っていただく必要がある。説明責任を販売される方はしていただきたい。
日本の重要な観光資源といえるブランド食材をどう守り、信頼を積み上げていくのか。 漁業者、提供する店、行政、それぞれに求められることがある。
(関西テレビ 「newsランナー」2024年11月13日放送)