納め過ぎ分の「還付申告」は確定申告期間と関係ない
この記事の画像(4枚)2018年分所得税の確定申告期間の終了が3月15日に迫った。最終週に入り、全国の税務署は混雑の度合いを増している。順番がまわってくるまで、窓口では1時間以上待たされるケースも多い。しかし、すべての申告を確定申告期限までに終えなくてはいけないかというと、そうではない。
給与などから源泉徴収されていた税金が払い過ぎになっていて、超過分を返してもらう「還付申告」の場合は、確定申告期間と関係なく行うことができるのだ。2018年分の場合は、2023年末までの約4年9か月、申告書の提出が可能で、たとえば、こんなケースが対象になる。思い当たる場合はチェックしてみよう。
1: 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎになっているとき
2: 災害などで資産に損害を受けたとき
3: 医療費が一定額以上にかかったとき
4: ふるさと納税など特定の寄付金を払ったとき(ワンストップ特例を適用しない場合)
スマホ申告は「5つのステップ」で完了
このうち、3や4のケースで税金を還付してもらう場合は、今年から、スマートフォンで簡単に申告できる新たなシステムが利用できるようになっている。これは、従来からある電子申告・納税システム「e-Tax」の新バージョンだ。
「e-Tax」は、申告書の記入から提出までインターネット上で完結できるというものだが、これまで、パソコンなどで手続きする際には、マイナンバーカードとカードリーダーを用意する必要があった。所得税申告での「e-Tax」の利用率は、2017年分で54.5%と、前の年に比べて1.0ポイントの増加にとどまり、伸びはいまひとつの状態が続いている。
そこで、いつでもどこでも手軽に申告できるようにしようと、国税庁が始めたのが「スマホ申告」。専用画面の案内に従って入力・送信し、申告書の控えはPDF形式で端末に保存できる。
「作成コーナーへアクセス」「提出方法など選択」「金額など入力」「送信」「申告書データを保存」という5つのステップで完了するというのが売りで、国税庁は、オンライン申告の普及を加速させたい考えだ。
税務署でIDなど入手が必要だが、勤め先近くでもOK
便利な「スマホ申告」だが、注意点もある。
まず、IDとパスワードを取得するため、あらかじめ、1度は、税務署に出向く必要があるということだ。運転免許証など本人確認書類を提示して、IDとパスワードを発行してもらわなくてはならない。ただし、居住地を管轄する税務署でなくてもOKで、勤め先に近いところで済ませることもできる。
もうひとつは、この申告ができるのは、会社員らが、「医療費」とふるさと納税など「寄付金」についての控除のみを受け、税金を還付してもらう場合に限られるということ。副業により、2か所以上から給与を受けていたり、原稿料などの所得があって、申告が必要になるときは利用できない。
「医療費」控除の少額特例もスマホ申告が可能
「医療費」をめぐる控除では、少額でも税還付を受けられる「セルフメディケーション税制」と呼ばれる特例が導入されているが、スマホ申告は、この特例を使って申告する場合も利用できる。
従来の「医療費控除」の適用条件が、治療費や薬代などが1年で10万円を超えること(所得の合計額が200万円以上の場合)だったのに対し、「セルフメディケーション税制」は、特定の市販薬の購入額が年間1万2000円を上廻れば、税が軽減される仕組みで、金額面でのハードルが低い。
たとえば、社会保険料などを差し引いたあとの課税所得が600万円の人が、家族の分も含め、対象の薬を1年間で合計5万円分購入した場合、従来の制度では、治療費などを含め支払った医療費全体が10万円を超えていないと減税されなかったが、この特例を使えば、所得税・住民税あわせておよそ1万1500円分が軽減される(復興特別所得税含む)。
医師の処方していた薬を一般向けに転用(スイッチ)し、カウンター越しに(Over The Counter)買えるようにした「スイッチOTC」と呼ばれる医薬品が特例の対象で、ドラッグストアなどでは広く見られるようになった。
この特例と従来の医療費控除との併用は不可となっていて、双方が適用できるとき、いずれが有利かは実際に計算してみる必要があるが、スマホ申告は、どちらの制度を使う場合でも対応可能だ。
確定申告の期間終了まで1週間を切った。
納税システムや制度を上手に使って、手続をスムーズに完了させたいところだ。