総工費150億円の日本最大のスタートアップ拠点が愛知・名古屋市にオープンした。企業間のマッチングや連携を促進する環境を提供し、さまざまな業種に「出会い」を演出することで、課題の解決と共に新たなイノベーションの創出を目指している。
空間設計で企業連携とイノベーション創出
10月31日、華やかなセレモニーで日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai (ステーションエーアイ」が開業を迎えた。
この記事の画像(8枚)愛知県・大村知事:
スタートアップ企業と一般パートナー企業が一緒に同じ建物に入って、毎日毎日マッチアップして、イノベーション起こしていく形は日本でうちだけなんです。
総工費150億円以上を費やし、名古屋市に誕生した地上7階建ての建物には、スタートアップ企業約500社に加え、トヨタ自動車や三菱UFJ銀行など200の企業や団体が入居する。企業同士がマッチングしやすい空間作りに注力している。
STATION Ai施設整備部長・大澤樹生さん:
こちらが個室で従来のオフィス、こちらに入居しているスタートアップ。反対側に固定席、こちらに事業会社が入ってもらって、ドアを開けると自分たちにできないことをスタートアップの人に相談できる。
このほか、一般客も利用できるフードコートや名古屋の景色を一望できる開放的なバー、さらにはホテルも併設されている。
日本商工会議所によると、東京以外でのスタートアップの設立では「資金調達」や「経営ノウハウの習得」などが課題となっている。
施設では、さまざまな業種が一つの屋根の下に同居し「出会い」を演出することで、課題の解決と共に、新たなイノベーションの創出を目指している。
ノウハウ共有の「集積」が企業成長のカギ
「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
日本最大のスタートアップ拠点が名古屋にオープンしましたが、この動きどう見ますか。
エコノミスト・崔真淑さん:
とても意味のある面白い取り組みだと思います。スタートアップ企業、つまり、新興のベンチャー企業拠点ができるということなんですが、東京都内にはスタートアップ拠点が多く存在しますが、全国的にはまだまだ足りていません。
単にスタートアップをサポートするだけでなく、このような集積が極めて重要なんです。様々な研究で、各企業が知識や資金調達ノウハウを伝播し合うことで集積が企業を強くするということが知られています。だからこそ、今回の名古屋のようにスタートアップが集積する場所が各地にできるのは重要です。
そして製造業の拠点としても有名な名古屋で、スタートアップが集積できる場所ができるのは、シナジーにも期待できるだけに非常に面白いと思います。
自治体主導で経済効果拡大・生存率向上目指す
堤キャスター:
今回の施設は愛知県が150億円をかけて整備したということですが、自治体などが率先してサポートする意義はなんでしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
今回は自治体が率先して集積拠点を作っているということなんですが、これは非常に意味があります。大きく2つの理由があることが、経済分野の研究で報告されています。
1つは、スタートアップ企業は、大手企業より雇用の創出力、高い利益成長率、そしてイノベーションを生み出す傾向が強く、経済成長と極めて相関が高いということが知られています。
堤キャスター:
もう1つの理由は何でしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
もう1つは、そうした新しい企業は高い成長率は見込めるのですが、非常に脆いということなんです。アメリカやヨーロッパでは、企業の5年後の生存率は50%程度と非常に高まってきています。しかし、日本の場合はそれよりも低いという一部の統計データも存在しています。だからこそ、強い日本にするためにも、自治体や政府の支援がより重要になってくるのかなと考えています。
堤キャスター:
新たなものを生み出す際には、情報の共有や支援が欠かせません。この施設がひとつの街のように、オープンな交流の場となることで、イノベーションの連鎖が起きていくことを期待したいです。
(「Live News α」11月4日放送分より)