猛暑の影響で例年より20日遅れて、カキのシーズンを迎えた。広島が生産量日本一を誇る冬の味覚。身入りが良く、うま味が強いといわれる「広島カキ」のブランド力を守るため、じっくりと生育を待っての水揚げだ。
海水温下がらず、20日遅れで水揚げ
10月21日、朝7時。広島市の沖合にあるカキいかだに向かって船は進んでいく。
この記事の画像(8枚)「ドキドキというより、やっと始まったなという感じ。みんなで頑張ろうという気持ちのほうが大きいです」
そう話すのは、米田海産の奥村崇さん。広島が生産量日本一を誇る冬の味覚「カキ」の季節到来である。
例年の水揚げは10月1日からだが、県魚連などが協議し、2024年シーズンは20日ずれ込んで10月21日から出荷開始となった。理由は異例の猛暑。海水温が下がらず、身が大きく育たないと予想されたためだ。
広島市水産振興センターの調べでは、9月17日、広島湾の海水面の温度は平年よりも5度高い29.9℃に。その後1カ月で徐々に下がり、10月15日の観測では24.8℃だったが、それでも平年より2度高く猛暑の影響による水温の「高止まり」は続いている。
「待ってもらった分、身入り良く」
広島市の米田海産が水揚げしたカキはすぐに“カキ打ち場”に運ばれ、手作業で身が取り出される。カキをむき身に加工することを広島では「カキ打ち」と呼んでいる。
とれたてのカキの身はツヤがあってプリプリ。水揚げがずれ込んだという心配も吹き飛ぶような大きさだ。
米田海産の米田礼一郎社長は「夏が暑かったので心配をしていたのですが、思っていたより良かったです。待ってもらった分、身入りは良くなると思うので、11月、12月になるにつれて例年よりいいものが提供できるのではと思っています」と期待を寄せる。厳しい夏を乗り越えたカキは順調に育っているようだ。
広島カキのブランド力を守るため
一方、懸念もある。
「半分くらいは死んでいるかもしれないですね。ある程度は毎年のことなので多少は覚悟しているのですが、最近は以前より死んだ個体が増えているように思います」と、米田社長はおもむろに話した。
水温だけでなく水質や自然環境の複合的な要因が絡み合うカキの養殖。生育を待って水揚げ・出荷をすることは、「広島カキ」のブランド力を守る前向きな判断でもある。これまでも、カキの水揚げ開始時期は生育状況によって各業者で異なり、必ずしも10月1日ではなかった。
米田社長は「決してカキの味が悪いから20日ずれたわけじゃないです。待ってもらった分、いいものが提供できると思います。広島県産のカキは他県産のカキと比べても“うま味が強い”といわれているので、楽しみに食べてもらえればと思います」と自信を見せた。
広島カキの水揚げは2025年5月ごろまで続き、例年通り「2万トン」の生産を目指している。
(テレビ新広島)