中国電力が開発する全国初の「カキ幼生検出アプリ」。幼生とは、海中に漂う“カキの赤ちゃん”のこと。養殖のための幼生をAIの解析で効率よく見つける新しい取り組みだ。実証試験中の漁船に取材班が乗り込んだ。
約0.3ミリの幼生を広い海中で探す
カキ養殖が盛んな広島・廿日市市地御前。
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さまざまな装置が入った黄色いカゴを手にし、実証実験の関係者が続々と船に乗り込む。
![実証実験を行う漁船に乗り込む関係者](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/4/700mw/img_24ff47eda48b7904b26b7b09db9c9a4d223584.jpg)
たどり着いたのは沖合に浮かぶカキいかだ。
![瀬戸内海の沖合にはいくつもの「カキいかだ」が浮かぶ](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/4/700mw/img_e4244afd40f6f771417d888172d3cd88180538.jpg)
そこで船を止め、長さ2.8メートルのロープに付けたプランクトンネットを海に沈めた。探しているのは“カキの赤ちゃん”、卵からかえったばかりの「幼生」である。
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カキの幼生は、約2週間、浮遊生活を送った後に海水中の固着物に付着する。この時期にホタテの貝殻を海中に入れ、幼生を付着させることを「採苗」という。海の中に漂う幼生が“どこにどれほどいるか”というのは、カキ養殖業者にとって重要な情報だ。
採取した海水を透明の容器に入れた。しかし、約0.3ミリの幼生を肉眼で見分けるのは至難の技…。
鈴木崇義 記者:
幼生は入っていますか?
カキ養殖業者:
多い時はこの段階でわかる
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鈴木崇義 記者:
水中の黒い点みたいなものが幼生?
カキ養殖業者:
全部が全部そうとは限らない。黒い点がカキだけだったら、うちらも苦労しない
顕微鏡で人が数えていた作業をAIに
中国電力などが2024年度の実用化に向けて実証試験中の「カキ幼生検出アプリ」を活用すれば、作業の手間が大幅に省ける。実証実験では、採取した海水サンプルをカメラの入った専用装置で拡大撮影。
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アプリから画像をクラウドに送信し、AIが解析する。サンプルの解析まで船上で完結できるアプリは全国初だ。
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今までは、この作業をどのように行っていたのだろう。
漁協の担当者:
組合に持ち帰って分離し、顕微鏡を見て小さい幼生がいくつ、大きい幼生がいくつと…
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また、市販の顕微鏡を購入し、人力で数える養殖業者もいた。
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解析結果までわずか2分「ロスなく…」
画像を送信して2分ほどで、この日1回目の解析結果がスマホの画面に表示された。
結果は…「残念ながら付着期幼生はゼロ」
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“採苗に適した幼生”が検出されれば、「カキ付着期幼生」を示す赤い四角で囲われる。
![カキ付着期幼生が検出された7月25日の採取結果](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/4/700mw/img_8465665020e8e64e2213193945b0c40e233297.jpg)
しかし、この日のように“いない”ことがすぐにわかるのも養殖業者にとっては救い。
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エネルギア総合研究所・柳川敏治 副長:
フジツボの幼生はカキの幼生の付着を邪魔してしまうので、フジツボの幼生が1個体でも検出されると三角になる
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採苗は海水温や潮の流れ、天候などに左右され、長い時で1カ月、短い時は2~3日と短期間勝負。アプリで検出結果の場所も確認できるため、同業者との情報共有も簡単だ。
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マルシン水産・増木進一 代表:
アプリが実用化されたらリアルタイムにロスなく仕事ができると思っています
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ーーこれを皮切りにデジタル技術で養殖作業がよりスムーズになっていけばいい?
マルシン水産・増木進一 代表:
それは思います。究極的には、カキの殻から身を取り出す作業を機械でできれば一番いいんですけど…。そこまでできなくても、カキの幼生をAIで検知するようにデジタル技術がカキ養殖に活用される範囲が広がっていけばいいなと思っています
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カキの幼生を付着させる時期は夏。年々、過酷な暑さが養殖業者を襲っている。船上での作業時間を短くして熱中症などを防ぐためにも、アプリの実用化に期待がかかる。
(テレビ新広島)