鼻から接種する新しいインフルエンザワクチンが登場した。メインの対象は子どもで、従来のワクチンより効果は長持ちするが、副反応が出る確率も高いという。その長所と短所をまとめた。
新たに承認されたワクチン
インフルエンザは2023年に4年ぶりに流行し、1シーズンに2回感染する人も出て、小児用の薬が不足する事態にもなった。

今シーズンから登場した新たなワクチンは注射ではなく、スプレーで鼻から接種するタイプ。広島市内の「翠こども・耳鼻咽喉科クリニック」では、子どもへの鼻からの接種が始まっていた。

鼻から接種するスプレータイプのワクチン「フルミスト」は2023年3月に、国内での製造販売が承認され、今シーズンは対象が2歳から18歳に限定されている。

クリニックでの接種後、注射嫌いの子どもは「痛くなかった」と笑顔で、子どもを連れてきた保護者も「注射は嫌がられるが、今回は鼻からのスプレーと言ったら、すっと来てくれた」とおおむね好評だ。
このクリニックでは、「フルミスト」は承認されたばかりのため、今は積極的に広報はしていないが、希望があれば接種を行っているということだ。
半数に発熱、鼻水などの副反応
ただ、副反応も出やすいようだ。

日本小児科学会は、フルミストについて、従来のインフルエンザワクチンと予防効果は同等としている。

従来のワクチンとの違いについて、翠こども・耳鼻咽喉科クリニックの河野絢子副院長は、「新しいフルミストは生ワクチンに分類され、弱めたウイルスを直接鼻に噴霧するので、軽くインフルエンザにかかったような感じになる。半数近くに鼻水や鼻づまり、発熱などの副反応が出るという報告が上がっている」という。

また、効果の持続性については、「従来の注射ワクチンが4~5か月で効果が弱まるのに対し、フルミストは1シーズン約1年といわれていて、受験生などにはいいのでは」と指摘する。
ワクチンの弱毒性ウイルスが周りの人に移ることも
副反応以外にも気になるデメリットがあるという。

河野副院長は、「ワクチンに使われる弱めたウイルスが、周囲の人に移る可能性があるので、免疫が低下した人や乳児との接触は、接種後1~2週間は避けたほうがいい」と指摘する。

取材した石井百恵記者によると、従来の注射ワクチンは、12歳以下は1シーズン2回接種が必要なのに対し、フルミストは1回。値段は、従来型が1回3000円~3500円程度なのに対し、フルミストは7000円~8000円台。アメリカでは、20年以上前から使われているが、日本では未承認のままだったということだ。
4年ぶりに流行した2023年は11月にはインフルエンザ警報が発令された。翠こども・耳鼻咽喉科クリニックの河野副院長は、「流行前にワクチン接種できる人は受け、流行が始まったら、人込みではマスクをつけ、手洗い、うがいをすることが最低限の感染対策」と指摘する。
(テレビ新広島)