9月末に広島市で起きた大規模な道路陥没。

被害があった建物は、解体される可能性も指摘される中、取材を進めると関西各地でも同様のリスクがあることが分かってきた。

【動画】突然の『道路陥没』近隣住民は避難生活 原因は工事や自然現象などさまざま 「高度成長期から50年。インフラ整備の転換点」

■道路陥没は突然発生 原因は掘削工事か

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「建物の中にいらっしゃる方は、直ちに避難してください」

9月26日、広島市西区で突然発生した道路の陥没。

幅15メートル、長さ40メートルにわたった陥没は、周辺の11の建物で、傾きやひびなどの被害を出した。

事故原因として指摘されているのが、雨水管を整備するための掘削工事。

広島市などによると、地盤の中の空洞に地下水がたまっていたものが、工事の影響で漏れだし、空洞が崩れたことで、地表の地盤も沈下した可能性があるということだ。

住民:これは人災で間違いないですか?
広島市の担当者:詳細はまだ分かっていませんが、工事がきっかけで起きた事故だと認識。
住民:質問の答えになっていない。
広島市の担当者:自然災害ではないということです。
住民:人災と言いたくないんでしょ。

今も22世帯38人が避難所やホテルなどでの生活を余儀なくされている。

■道路の空洞を調査する会社を取材 「陥没のリスクを事前に把握は非常に難しい」

一度起きると生活への影響が長引く道路陥没。

事前にその予兆を見つけることはできないのだろうか。

「newsランナー」は、行政などの依頼を受けて、道路の空洞を調査する会社を取材した。

アイレック技建 杁山義弘さん:道路の下にある空洞を見逃さないようにするためにだいたい10センチ感覚でとることが多いです。

この会社では、地下を調べるレーダーを搭載した調査車両で道路を走り、データをとって解析。

その結果を元に、より疑いのある場所を手押し型のレーダーで詳細に調べるという。

問題のない地盤と比較すると、空洞の疑いがある場所は、三日月状に映る。

しかし、どこに陥没のリスクがあるのか、事前に把握することは非常に難しいという。

アイレック技建 杁山義弘さん:国交省が発表している資料ですと、年間、原因が不明なもの含めて1万件程度発生している。関西に限らず、どこで起きるかわからないので、いつでも起こる可能性はある。

■関西でも自然の影響で道路の下に空洞発生

いまも市民生活に影を落とすの広島市の道路陥没。

実は、関西各地にも道路陥没のリスクは潜んでいる。

記者リポート:9月27日に空洞が発見され、2日間通行止めにして調査を行ったということです。

淡路市のこちらの道路は、波による影響などで道路の下に空洞が発生。

その大きさは幅3.5メートル、深さ3.5メートルにも広がっていたという。

パトロール中に異変に気が付いたため、陥没は未然に防げたものの、海や川の近くなどは、このような自然の影響による事故のリスクもあるということだ。

兵庫県洲本土木事務所 辻元裕二課長補佐:浸食といいまして、波をかぶると中の方の土がぬけていく。(この地域は)全体的にそういう危険性はあるので、常にパトロールして変動がないか調査している。

■「冬季風浪」で工事期間限られ 市民生活への影響長引く

さらに、南あわじ市では去年9月に発生した道路陥没の影響がいまも続いている。

記者リポート:南あわじ市のこちらの道路、陥没が発生して1年1カ月がたった今も、通行止めがされています。

ことし12月末の工事完了を目指しているが、長引く工事には海岸道路特有の事情が…。

(Q.まだ復旧に至らないのはなぜ?)
兵庫県洲本土木事務所 藤井健夫課:冬季風浪(とうきふうろう)の影響もありまして、12月末から3月末くらいまで波がきつくて、こういう道路つくっても、波で壊れてしまう。道をつくるのも4月にならないとつくり始められない。冬季風波が影響してくるのが、ここの現場の特殊事情だと思う。

■都市部特有のリスク「繰り返し地下を掘る」「埋設物が多い」

また、道路陥没は郊外だけではなく、都市部特有のリスクも存在すると指摘するのは、土木計画が専門の小池教授だ。

案内してもらったのは、うめきた2期をはじめとする大規模な再開発が進む大阪駅周辺。

神戸大学大学院 小池淳司教授:博多駅の近く、今回の広島、このあたりでも大阪(駅)近辺でも、何度も何度も掘り返して工事をしているので、どこが空洞化してるか、非常に分かりにくい。

8年前に福岡県、博多駅前で起きた地下鉄の延伸工事中の大規模な陥没事故。

都市の中心部は、繰り返し地下を掘って開発が行われるほか、埋設物も多いことなどがリスクにつながるそうだ。

神戸大学大学院 小池淳司教授:色んなパイプとかケーブルが入っている場所。それから元々、自然条件で地下水が流れやすい場所。こういった所はリスクが高いと言えますし、ここ(大阪駅)は上から掘っているが、矢板というのでせき止めてるが、矢板から地下水が漏れて、それをきっかけに砂が抜けて、その周りで陥没するということが起きる。

■専門家は「インフラ整備の転換点」との指摘も

小池教授によると、「近年は技術の進歩が進み、10年前に比べれば大幅に安全性は高まっている」ということだが、「そのリスクを完全に排除することも、また困難だ」ということだ。

日本全国で大規模な道路開発が進んだ高度経済成長期から50年以上がたった今は、まさにインフラ整備の転換点だと指摘する。

神戸大学大学院 小池淳司教授:インフラ、コンクリートの耐久年数っていうのは50年から100年って言われていて、ちょうどこれから差し掛かる段階。このメンテナンスをきっちりしておかないと、インフラが使えないどころか、地域とかエリア全体が衰退化していくことにつながりかねない。住民の直接サービスの方が優遇されるという傾向があるので、私たち国民がインフラ投資に対して、少し寛容になる必要がある。

私たちの生活に欠かせない道路。

見えづらいリスクとどう向き合っていくのか考えていく時代がきている。

(関西テレビ「newsランナー」2024年10月8日放送)

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