66年ぶりとなる球団数の増加に伴い誕生したプロ野球新球団「くふうハヤテ」の最初のシーズンは120試合で28勝、勝率.250でウエスタンリーグのダントツ最下位だった。ただ、防御率リーグ5位の投手がヤクルトと育成契約を結び、好成績を残せばNPBへの道が開けることを証明。一方で限界を感じ引退する選手もいる。
待望の新球団はゼロからのスタート

くふうハヤテの赤堀元之 監督は「ゼロからのスタートだったのでどうなるかなという部分はシーズン初めにあったし、ほんとに勝てるのかなと(思った)」と、開幕当時の本音を吐露した。
66年ぶりとなる球団数の増加に伴い誕生したプロ野球の新球団「くふうハヤテ」は、静岡市の10年以上にわたる球団誘致構想がようやく実現した形だ。
NPB(日本プロ野球機構)のファーム・リーグ拡大方針に伴い、都内に本社を置くハヤテグループが名乗りを上げ、静岡県に新球団が誕生した。

同時期に参入したオイシックス新潟が独立リーグのチームを母体にしたのに対し、くふうハヤテはゼロからのスタートだった。
静岡県藤枝市出身の赤堀監督の下、トライアウトやスカウトで獲得した選手36人が集い、2024年1月に新たな一歩を踏み出す。

NPBから参入を承認されてからわずか1カ月半という短期間でのスタートだった。
静岡ゆかりの選手も8人が参加。
初代キャプテンは地元・静岡西高校出身の高橋駿 選手で「野球が大好きというのをこのグラウンドで表現して、元気と笑顔を静岡に届けられたらいい」と抱負を語った。
開幕戦は連敗スタート その後も…

ただ2軍とはいえ、対戦相手は実力ある球団。
ホームにオリックスを迎えた開幕戦はWBC日本代表・宮城大弥 投手が調整登板で立ちはだかり、連敗スタートとなった。
それでも開幕7戦目、2023年のセリーグ王者・阪神を相手についに初勝利をあげる。
最後は、静岡にゆかりのある常葉菊川高校出身の田中健二朗 投手(元DeNA)が締めて、歴史の1ページが刻まれた。

4月には3連勝を記録するなどファンの期待も高まったが、その後は先制されると追いつけないまま敗れる試合が続き、赤堀監督が目指す「守備から主導権を握る野球」ができなかった。
最終戦の本拠地には最多の2355人

ウェスタンリーグ6チームの最下位で厳しい戦いが続く中、9月29日に本拠地「ちゅ~るスタジアム清水」で行われた最終戦。
最終戦には参入初年度の最後の挑戦を応援しようと今季最多の2355人の観客がつめかけた。

試合は2本のホームランが飛び出すなど くふうハヤテが見せ場を作ったが、この日も敗戦。今季は120試合で28勝84敗8分で勝率は.250に終わった。
同時に参入したイースタンリーグのオイシックス新潟は126試合で41勝79敗6分、勝率は.342だった。
くふうハヤテ・赤堀元之 監督:
来年は1つでも多く勝ちを皆様と一緒に分かち合えるようにやっていきたい
他球団と契約…目標は1軍
勝つことでチームは成長し、勝つことで選手は次なるステージに進む。
1軍への参戦がないくふうハヤテの選手にとって、ここは既存のNPB12球団へのアピールの場だ。

それを実現させたのが西濱勇星 投手だ。
オリックスから戦力外通告を受け、くふうハヤテに入団した西濱は今シーズン最速155kmの速球を武器に防御率リーグ5位と活躍し東京ヤクルトとの育成契約を勝ち取った。
西濱勇星 選手:
今度こそ支配下選手に上がって、1軍で活躍できるように頑張りたい
限界を感じ引退するベテランも
一方、自らの限界を感じ引き際を決めた選手もいる。
プロ生活18年、ソフトバンクで日本一にも輝いた35歳のベテラン・福田秀平 選手だ。
俊足好打の彼は新天地で再起をかけ、球団初のサヨナラ勝利の立役者になるなどチームの顔として活躍してきたが、持病の肩甲骨の痛みが治まることはなく、現役生活に終止符を打った。
新球団最大の功労者はこれから新たな人生を歩んでいく。

くふうハヤテ・福田秀平 選手:
静岡のいろいろな方たちとも出会うことができて、すごく大きな1年だったと思う。ハヤテは“伸びしろ”しかないチームだと思うので陰ながら応援していきたい
観客動員数を増やすために
数々のドラマはファンを魅了する反面、そこには課題もあった。くふうハヤテ・池田省吾 球団社長は、「チームができたことはかろうじて知ってもらえたけど、『いつどこで試合をやっているんだ?』とよく言われる」と苦笑する。

平均入場者数は約800人と当初の目標はクリアしたが、開幕戦や最終戦など球団が力を入れる試合では集客に課題が残った。
開幕戦は目標4000人だったが実際には1631人、最終戦は3000人の目標に対して2355人だ。
静岡市の中心部から離れた球場は交通アクセスが悪く駐車場も少ないため、想定よりも観客は集まらなかった。

そこでくふうハヤテはプロ球団では稀な試みを実施した。JR清水駅から球場まで観客を送るため、チームの遠征用バスを運行させたのだ。
利用者は「ファンが乗っていいのかなとドキドキします」と喜ぶ。

さらに「県民の無料招待日」なども設け、幅広い世代のファン獲得を目指した。
くふうハヤテ・池田省吾 球団社長:
みなさんにも試合に来て楽しんでいただけるような環境をしっかり作っていきたい
2024年 新設球団として確かな一歩を踏み出したくふうハヤテ。
ゼロからのスタートで試行錯誤の1年だったが、これからもきっと静岡県の野球界の発展に貢献してくれるだろう。
(テレビ静岡)