噴火湾のエビかご漁で、異変が続いている。
高級なボタンエビが取れずオオズワイガニが大漁。
網を壊すため厄介者と言われていたが、地元では、商品価値を生み出そうと試行錯誤している。
厄介者“オオズワイガニ”が大漁

北海道南部の森町で9月から始まったエビかご漁。
港に戻った船をのぞいてみると、大量に水揚げされているのはオオズワイガニ。
この日は4.4トン取れた。

一方、かごにいるボタンエビはほんの少しだ。
この日の水揚げは68キロ。
オオズワイガニの65分の1だった。
「エビかごにズワイガニばかりで良くはない。エビだと(1キロ)5000円ぐらいだが、カニは1000円もしない。海が変わって来ているのではないか」(漁師 川村明功さん)
ボタンエビ取れずオオズワイガニ大漁

地元の漁協によると、オオズワイガニは5年前の水揚げ量は0.3トンで、エビかごの網を壊す厄介者と言われていた。
ただ、年々右肩上がりで増え、2023シーズンは135トンと主役のボタンエビの約20倍に。
今シーズンも既に80倍だ。
一体、何が起きているのだろうか。
海の異変― いったい何が?

「原因はよく分かっていないというのが正直なところ。数十年に一度、大量発生を繰り返しているようだ。噴火湾では1980年代半ば、年間数千トン揚がった記録が残っている」(道立栽培水産試験場 渡野辺雅道 研究主幹)
オオズワイガニは以前は漁師が地元の人に無料で配っていたが、あまりに取れすぎるので、商品価値を生み出すため販路が確立されてきている。
地元スーパーでは100グラム48円ほどの値が付いている。
「けっこう遠くの方からクーラーボックスや発泡スチロールを持って買いに来る人はいる」(フォーレスト森共同購買会 水口輝彦さん)
オオズワイガニ そのお味は?

主役のボタンエビのお株を奪う存在にまでなっているオオズワイガニ。
そのお味は…
「いただきます。カニの味がとても濃くておいしいです。これがなんで厄介者なんでしょうか」(小町麻紀カメラマン)
身がたっぷり詰まったオオズワイガニ。
寿司店の大将は森町名物となっている「いかめし」を引き合いに、カニでの町おこしを提案している。

「いかめしは夏に小さいのが取れて、これをどうするかとなってご飯を詰めて駅で販売したのが始まり。カニもそういう感じで全国に広めていきたい。(オオズワイガニが)厄介者ではなく、貴重なものになってくれれば」(寿司真岡 石岡真喜雄さん)
森町では、オオズワイガニのブランド化にも取り組んでいる。地元の水産加工販売などを手掛ける会社は、2年前からブランド「北森(ほくしん)」を展開し、主に東京に出荷している。豊洲市場の関係者からは、「見入りも味もよく、日本海のズワイガニに引けをとらない」と評価が高いという。
ブランド化に取り組む浜口社長は、「せっかく漁でとれているので、無駄にしたくない。漁師さんも大変なので、地元のオオズワイガニの認知度をアップしていきたい」と話している。