東海道新幹線が60周年を迎え、各地で記念式典が開かれた。
利用者数は延べ70億人を超え、速さと安全性の維持が評価され続けている。
専門家は、新幹線は既存技術の改良を重ねた成功例であり、今後も技術を大切に育てる姿勢が重要と指摘した。
東海道新幹線が60周年…各地でファンが祝う
“夢の超特急”が、60歳の誕生日を迎えた。
この記事の画像(11枚)10月1日、東海道新幹線が開業から60年を迎えた。
東京駅をはじめ、各地の駅では朝早くから記念式典が開かれた。
12年来のファン:
5時半にお母さんに起こしてもらった。生まれたころからずっと好きで、自分の成長とともに、新幹線も成長してきた感じ。
20年来のファン:
60年ずっと走り続けていることは、鉄道ファンの1人として感慨深いものを感じる。
日本初の新幹線として開業した東海道新幹線は、当初、東京―新大阪間を4時間で移動していたが、今では2時間21分まで短縮した。
速度だけでなく、開業以来、乗客が死傷する事故はゼロと、高い安全性を維持している。
JR東海は1日、利用者から寄せられた60年分の思い出が詰まった新CMを公開した。
利用者の数は、これまでに延べ70億人以上で、「日本の大動脈」として、経済や文化の発展を支え、還暦を迎えた東海道新幹線。
始発を見送ったファン:
60年前からずっと今も、たくさんの人に乗ってもらえているのはすごい。速いのに安全なのも魅力。
京都へ向かう利用客:
これからも安全で、私たちに楽しい旅行をさせてほしい。
今後は、東京―名古屋間を40分で結ぶ「リニア中央新幹線」の開業も予定されており、新幹線は新たなステージを迎えようとしている。
JR東海・丹羽俊介社長:
ご利用いただく方の働き方、それから暮らし方、いろんなことで変化があると思います。さまざまな新しい移動のニーズにお応えできるような東海道新幹線にすべく、ブラッシュアップを重ねていきたい。
漸進的イノベーションで築いた技術力
「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーー速くて安全な旅を提供する新幹線、長内さんはどうご覧になりますか?
早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
新幹線は、鉄道の可能性を広げたイノベーションですよね。
「イノベーション」というと、これまでにない非連続な技術を開発することだと思っている方も多いようですが、実はイノベーションと呼ばれる技術開発の大半は、すでにある技術に改良を重ねて性能を引き上げる「漸進的イノベーション」と呼ばれるもので、実は新幹線もそうなんです。
在来線の車両開発で培われた技術を、さらに磨き上げて連続的に開発されました。そこには地道な試行錯誤の努力があり、巧みな調整や、進化によって車両全体の性能を飛躍的に向上させた訳です。
堤キャスター:
ーー今、新幹線のシステムを丸ごと海外に輸出する大型プロジェクトも進んでいるようですね?
早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
台湾の新幹線など今、海外でのビジネスも拡大し始めていますが、地道な改良の積み重ねこそ、日本の技術的優位性になっています。
今、さまざまな分野でイノベーションが求められていますが、それは単に目新しいモノに目をつけるのではなく、これまでの技術を大切に育てていくことも、日本の競争力強化には必要なのではないでしょうか。
技術を生かす“組織ファザード”も必要
堤キャスター:
ーー世界が驚くようなイノベーションが、これからも日本から生まれるといいですね。
早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
イノベーションを起こすためには、技術開発に加えて、ヒト・モノ・カネをつぎ込むことも必要です。
戦後、遠くへ旅する手段は、鉄道に代わって航空機が主役になると考えられていました。そのため、新幹線の開発のために世界銀行から融資を受ける際に、資金調達が難航することが予想されました。
そこで、貨物新幹線という計画を提示することで、融資にこぎ着けたということがありました。こうした本音と建て前を使い分けて外部資金を調達することを、経営学では「組織ファサード」と呼びます。
単に技術の知恵だけでなく、大きなプロジェクトを推進するための組織の知恵も、イノベーションのためには必要です。
堤キャスター:
これからも私たちの夢の超特急として、日本の輸送力を強化しつつ、海外でも、その技術によって存在感を示していくことを期待したいです。
(「Live News α」10月1日放送分より)