7月、海上自衛隊の護衛艦が一時、中国の領海に“誤進入”するという前代未聞の事態が起きていた。一方、9月23日には、ロシア軍の哨戒機が日本領空を3度も侵犯し、自衛隊は史上初めて「フレア」と呼ばれる熱と光による警告を行った。ロシアや中国による領空侵犯が、なぜ今この時期に相次いでいるのか。
艦長は事実上の更迭…海自護衛艦が中国領海に“誤侵入”
7月、前代未聞の事態が起きていた。海上自衛隊の護衛艦が、一時、中国の領海に進入したのだ。木原稔防衛相は24日、この護衛艦をめぐり、次のように明かした。

木原稔防衛相:
7月に「すずつき」の艦長が交代しているというのは事実であります。

関係者によると、海上自衛隊の護衛艦「すずつき」は、7月に中国領海を事前通告なしに一時航行。

艦長は5月に就任したばかりだったが、7月に交代させられていた。事実上の更迭とも言えるが、木原防衛相は、理由を明らかにしなかった。

木原防衛相:
陸海空自衛隊というのは、様々なタイミングで人事異動しておりますので、異動理由については申し上げておりません。

国際法では、沿岸国の安全を害さない限り、領海を通航できる「無害通航権」が認められている。
ロシア軍機が領空侵犯…初の「フレア」による警告
一方、緊迫する状況は空でも起きていた。23日北海道・礼文島付近で、ロシア軍の航空機が日本の領空を3度にわたり侵犯。これを受け、自衛隊は、史上初めての対応を取った。

木原防衛相:
フレアによる警告を実施したのは、対領空侵犯措置を開始してから初めてとなります。

防衛省によると、北海道・礼文島の北方で、23日午後1時から4時前までの間にロシア軍の哨戒機1機が、3度にわたり日本の領空を侵犯。

これに対し、航空自衛隊のFー15、Fー35戦闘機が緊急発進し、無線による警告をした後、「フレア」による警告を実施した。

「フレア」とは、熱や光を放って、相手の対空ミサイルをかく乱する“おとり”などの目的で使用される、熱源弾だ。

ロシア軍機による3度の領空侵犯について木原防衛相は「(領空侵犯の)2回目、3回目が行われた。そして同じ領域にとどまっているということを考えると、挑発的な行動と考えてもおかしくない」と述べた。

岸田首相がアメリカ訪問中に起きたロシア軍機の領空侵犯。

報告を受けた岸田首相は「領土・領海・領空は断固として守り抜くとの決意のもと、国際法および国内法令に従い、冷静かつ毅然と対応すること。アメリカをはじめとする関係諸国と緊密に連携すること」など3点を指示した。
意図的?…領空侵犯相次ぐワケ
ロシアや中国による領空侵犯が相次いでいるが、なぜこの時期に相次いでいるのだろうか。まず、最近の領空侵犯についてまとめる。

防衛省によると、北海道・礼文島の北方で、23日午後1時から3時40分ごろの間にロシア軍機1機が、日本の領空を3度にわたり侵犯。
日本は航空自衛隊の戦闘機が緊急発進させ、無線による警告をした後、初となる「フレア」による警告を実施した。

さらに、8月26日には、中国軍の情報収集機が長崎県の男女群島沖の領空を侵犯。中国軍機の領空侵犯は初めてだった。
青井実キャスター:
ロシアの領空侵犯は意図的なものなのでしょうか?

立石修フジテレビ解説委員室長:
3時間の間に3回領空を侵犯。木原防衛相が「挑発的行動と考えてもおかしくない」と先ほど言ってましたが、意図的なものだったという可能性は、十分に考えられると思います。

そして、自衛隊が撮影したロシア軍機のこの部分に注目してほしい。「爆弾倉」とよばれる部分が開いているのが分かる。ここから潜水艦の位置を探る「ソノブイ」という情報機器を投下した可能性があるんですね。

この日本海周辺でロシアと中国は、実は、合同で先週まで大規模な海軍の演習を行っていた。これに対応するため、アメリカ軍も日本海周辺に原子力潜水艦を展開していた可能性があり、ロシア軍がその追尾のため、日本の領空内に入った可能性も考えられると思います。
青井キャスター:
岸田総理は、訪米中でウクライナのゼレンスキー大統領とも会談し、さらに27日には総裁選もあります。そのタイミングを狙ったという可能性はあるんでしょうか?

立石フジテレビ解説委員室長:
安倍政権で国家安全保障局長を務めた北村滋さんに話をきいたのですが、北村さんによると「権力移行期の日本の防衛能力や対応を確認したのでは」との見方を話していました。
そして、別の政府関係者も「総理がいない時、官房長官以下が総裁選でこうなっているときにやってきますね」と話していて、日本の“政治的空白”のようなタイミングを狙ったということも十分考えられるかと思います。
青井キャスター:
パックンは、今回の領空侵犯どう見ますか?

SPキャスターパックン:
日本の総裁選だけではなく、アメリカの大統領選挙中でもありますよね。 っていうことは、もしかしたら、日米同盟に揺さぶりをかけるためでもあるかもしれないですね。

青井キャスター:
今後、領空侵犯がなくなると言い切れるのか?
SPキャスターパックン:
5年ぐらい前からこういう挑発的な行動が急増して、時には年間1000回を超えたりすることもあるから、なくなることはまずないと思うんですけど、少しエスカレーションしないように祈りたいですね。
(「イット!」9月24日放送より)