電話番号の下4桁「0110」。警察署の番号としてよく使用されている番号だ。いま、この番号を悪用したニセ電話詐欺が福岡でも横行している。

2024年9月3日に録音された「アライ」と名乗る人物からかかってきた「ニセ電話」の音声が残されている。

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残された偽電話の音声

■音声記録(2024年9月3日)
▼アライと名乗る人物「私は警視庁捜査2課のアライと申します」
▽女性「アライ、何さんですか?」
▼アライと名乗る人物「アライ、ケンイチです」
▽女性「アライ、ケンイチさん」
▼アライと名乗る人物「はい、新しいに井戸の井と書いて新井です。健康の健に、漢字で一、二、三の一で、健一です。捜査協力はできますか?」

警視庁捜査2課の「新井健一」と名乗った犯人。電話を受けた40代の女性は、自らを疑い深い性格と考えていたが「私の名前を電話のなかでフルネームでちゃんと言ってきましたし、しかも途中で8年前ぐらいに住んでたときの住所を言ってきたんですよ」と驚く。

女性の個人情報を次々に言い当てた新井。さらに女性は「あなたの〇〇銀行が、どうちゃらこうちゃらって言われて、何か、あれ?て思って」と自分が普段から使用している銀行まで新井が把握していたと話す。

電話番号の下4桁が「0110」

そして今回の「ニセ電話」の特徴は『電話番号の下4桁が0110』だということ。下4桁0110は、警察署の番号としてよく使われている。「新井」の堂々とした口ぶりも相まって、女性は次第に本当に警察からの電話なのでは…との思いを強めたという。

その上で「新井」は「あなた名義のキャッシュカードが、兵庫県の容疑者の家で押収された。被害届が出され、あなたにも容疑がかかっている」と畳みかけてきた。女性は「受け答えがもう、いかにも本当きっと警察がかけてきたら、こういう対応するのかなって思うような堂々とした感じの電話だったから、やっぱりそうなのかなって思っちゃいましたよね」と振り返る。

相次ぐ0110の番号を悪用したニセ電話

このところ全国で0110の番号を悪用したニセ電話が相次ぎ、警察が新手の詐欺として警戒を強めている。福岡でも9月、北九州市小倉北区に住む30代の男性が被害に遭っている。警察からの電話だと信じ「容疑者から外れるには、金が必要だ」と言われるがまま87万円を振り込んでしまったのだ。また4月には大野城市の20代男性が合わせて800万円をだまし取られている。

今回、電話を受けた女性は途中で警視庁から兵庫県警に電話を転送すると言われたことに違和感を覚え、詐欺だと気付いた。逆に女性は新井を問い詰めていく。

■音声記録(2024年9月3日)
▽女性
「新井健一さん、どちらの所属でしたっけ?」
▼新井と名乗る人物「私は警視庁です。東京です。電話での捜査協力はできますか?」
▽女性「兵庫県警でしたっけ?」
▼新井と名乗る人物「はい、そうです」
▽女性「じゃあ、兵庫県警に私から電話しますね。電話番号はご存じですか?」
▼新井と名乗る人物「099-500-0110です」

警視庁だったはずが兵庫県警に

追い込まれた揚げ句、「新井」が指定してきた番号は結局、どの警察署のものでもなく、架空の番号だった。この対応に懲りたのか「新井」の番号に記者が電話すると「こちらはNTTドコモです。おかけになった番号ではお繋ぎすることができません…」と自動音声がむなしく流れた。電話はすでにつながらない状態になっていたのだ。

今回の0110詐欺についてネットワークセキュリティなどの詳しい神戸大学の森井昌克名誉教授は「海外の会社で、異なった任意の電話番号を通知するサービスがある。そこと契約すれば、どんな番号でも表示させることが可能になります」と表示された電話番号を鵜呑みにしないよう注意を呼びかける。

電話番号の偽装表示。実在する警察署などの番号が表示されるケースだけではなく、さらに怖いのが「自宅」や「実家」の電話番号が表示されるケースだ。

「警察」だけではなく「自宅」「実家」も

電気通信事業者協会が紹介している事例によると、実家の番号が表示され、その電話に出ると「強盗に入った。親は無事だが金を用意しろ」と言われたという。その内容を信じた被害者は現金を振り込んでしまったが、その後、詐欺だと判明した。

警察もまず「電話でのお金の話にはすべて詐欺と疑うこと」。そして少しでも不審に感じたときは警察や家族に相談するよう注意を呼び掛けている。

(テレビ西日本)

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