9月9日の話題は海の異変だ。函館では、通常はほとんど水揚げされないカツオが連日大量に水揚げされている。降ってわいたような豊漁に喜ぶ声がある一方で、戸惑う人も。いったい何が起こっているのだろうか。
新鮮なカツオの刺身。醤油につけるとあっという間に表面に脂が広がるほど脂がのっている。
「カツオ」異例の水揚げ

函館市の南茅部漁港では、例年この時期はサケやホッケの漁が中心だ。しかし、連日水揚げされているのはカツオだ。通常、カツオは8月から9月にかけて三陸沖まで北上するのだが…
「カツオは8月末から9月にかけて、取れる船で120~130匹ほど。大きさは3キロから4キロ。大きいものは6キロくらい」(漁師 尾上美彦さん)

南茅部漁港ではこの日揚がったカツオは約100匹。8月末から9月9日までに6トンから7トンもの水揚げがあったという。
地元での評判と期待

降ってわいたような豊漁に、函館市内の鮮魚店では。
「こんなに鮮度が良くてこれだけ脂があって、本当に初めて」(紺地鮮魚 紺地慶一さん)
新鮮で身が締まっているため、包丁が入らないほどだという。

「函館で見たことがないので、食べてみたいと思った」(購入客)
「カツオ買いました。函館の近海で取れているので応援したい」(購入客)
こちらの飲食店でも早速メニューに加えた。

「カツオ定食」。この日は1000円だ。
「おいしい、脂が結構乗っている。南茅部産のカツオは食べたことがない」(来店客)
喜びの一方 戸惑いも

めったに食べられない地元産のカツオ。喜びの反面、こんな声も。
「南茅部でカツオが取れるのは考えられない。変だよね」(えみちゃんの店 笑和 堀川絵巨さん)
「いつまでも函館がイカの街だって言っている場合ではない。『ブリ踊り』や『カツオ踊り』を踊らなければならない時代が来るのかも」(来店客)
カツオを水揚げする漁業関係者も。

「はっきり言って"余計なもの"が来た。本来ここにいる魚がいなくなる」(漁師 尾上美彦さん)
本来この時期に取れるサケやホッケの漁への影響を懸念している。
海水温の上昇が原因か?

なぜ北海道でカツオが異例の水揚げをされているのか。
専門家によると、暖流の黒潮の勢力が強く北海道沖の海水温が例年より3度から4度高くなっていることが影響しているという。
さらに…。

「暖流の渦ができて、襟裳沖の暖流の渦にカツオが分布していて、そこから(北海道南部に)流れ込んでいると考えられる」(水産資源研究所 水産資源研究センター 津田裕一さん)
函館から噴火湾にかけての海水温は9月下旬まで高い状態が続くと予想されており、カツオの水揚げもまだ続きそうだ。

イカの街と言われた函館だが、年々イカの水揚げ量は減少している。
2011年には2万8542トンあったが、その後急激に減少。
代わりにブリの豊漁が続き、2019年にはブリがイカと逆転。2020年には1万トンを超えた。
ブリに続いてカツオが取れ始めた。流通、加工、販路の問題も含め、今後函館名物がどう変っていくか注目される。