ふるさとに開業…日本一の「やぶ医者」に

愛媛の最南端・愛南町。人口は約2万人、このうち65歳以上の人は4割以上。
県内の自治体の中でも少子高齢化が進んでいる町。
日本一の「やぶ医者」がいるというのは、町の中心部からさらに南、高知県に近い一本松地区。

松本毅医師:
はい私が「やぶ医者」です。ただし腕の悪い医者という意味ではなくて、「名医」のことなんです

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愛南町一本松の開業医・松本毅さん、48歳。
10年前に父親の跡を継ぎ、ふるさとの愛南町にクリニックを開いた。

松本医師が「日本一のやぶ医者」だという理由。
それは、地域に根差した医療に貢献する全国の医師を称える兵庫・養父市主催の「やぶ医者大賞」に2020年、松本医師が選ばれたため。

ちなみに、この「やぶ医者」という言葉。江戸時代、この養父市に住んでいた名医が由来だとか。
しかし その後、この名医をかたるニセモノが次々現れ、いつしか「やぶ医者」は、下手な医者という意味に変わったという。(※諸説あり)

評価された「訪問診療」

松本毅医師:
私は(地元の)愛南町に帰ってきて10年たつが、10年の間に「訪問診療」…患者さんのご自宅に伺って診療することをやっていた。受賞した時は、自分のこともうれしかったが、地域での活動が認められたので、地域として評価されたんだなと二重にうれしく思った

松本医師が今回大賞に選ばれたのは、愛南町で開業以来続けている「訪問診療」が評価されたため。

松本毅医師:
以前は病院に勤務して、消化器内科で専門に特化して働いてたが、最期まで患者さんを診てあげたいという思いで、訪問診療をやりたくて愛南町に帰ってきた

愛南町で訪問診療を行っているのは、実は松本医師ただ1人。
午前中はクリニックで外来患者の診療にあたり、午後からは病院に来られない高齢者や患者のもとへ車で向かう。

訪問診療は24時間365日対応、急患の連絡が入ればすぐに駆けつける。
この日はまず、高齢の女性患者の自宅を訪れた。

松本毅医師:
足の痛みはどう?

女性患者:
じっとしてるから1つも痛み感じない。おかげさまです

松本毅医師:
せきは?

女性患者:
せきはこれぐらいのもん。100歳ですもん

耳が不自由で高齢の患者には、大きな声で丁寧に話しかけ、小さな体調の変化も見逃さないよう気を配る。

松本毅医師:
大きな息。はいはい。胸の音いいです。ばっちり

女性患者:
200歳まで生きて困らしてやろうと、家族を

松本毅医師:
200歳まで生きるかも

女性患者:
たまりますかな。こらえてやんなせ。これでたくさんです

この女性患者は、「私は幸せな年寄り。もったいない。ありがたい毎日が」と、医療の支援がある生活に満足そう。

地域医療を守るため後進を育成

松本医師が訪問診療する患者は1日5~6人。早速、次に向かう。

この時は、地域医療を学ぶ市立宇和島病院の研修医も同行し、実際に男性患者の診療にもあたった。

研修医:
チクってしますよ。手はしびれてないですか?

松本毅医師:
後でシール張って

高齢化と過疎化が進む愛南町でも、医師不足は深刻な課題。
地域医療を守るため、後進の育成も松本医師の大きな仕事となっている。

松本毅医師:
また来週来ますので、何かあったら連絡してください。お盆中も連絡とれるようになってる

男性患者:
ありがとうございます

松本毅医師:
何かあったら言ってください

普段、病院に通えない患者にとって、松本医師の存在はまさに命をつなぐ生命線。

男性患者:
なかなか良い方。病院に行こうとしても、この体じゃ行きにくい。だから来てくれたら助かる

松本毅医師:
ご自宅に行くことによって、患者さんも生き生きしてるし、なかなか病院にかかれない人を診て、喜んでもらえるのが一番うれしい

訪れた患者の喜ぶ姿が見たい…そんな松本医師の姿に、同行した研修医も地域医療の価値とやりがいを見出していた。

市立宇和島病院 研修医・鈴木遥香さん:
(やぶ医者の)意味を私も理解してなくて、本来の意味を知った。まさに「やぶ医者」だと思うので、先生を目指して頑張りたい。地域に根差した医療をできたらいいなと思う

松本毅医師:
24時間対応するのが難しいところがあって、できれば同じような志の人が、愛南町にどんどん増えてくれればと思う。このやぶ医者大賞をもらったので、励みに今後も頑張っていきたい

患者ひとりひとりの笑顔のために。そして、ふるさとの健康をささえるために…
地域医療にひたむきに取り組む、現代の「やぶ医者」の姿がそこにあった。

(テレビ愛媛)