シンプルかつ、手作りの味わい深さがある岡山県の伝統的工芸品「備前焼」。割れにくいため庶民の日用品として愛されてきたが、大量生産の工業品に押されて売上高は全盛期の4分の1程度に減っているという。
この現状を打破するため、作家たちは備前焼を“現代アート”として海外の富裕層に売り込むプロジェクトに挑んでいた。
世界の現代アート市場へ挑む!
7月26日、ヨーロッパで高値で取引される現代アートの現状を見てきたという4人の備前焼作家が記者会見を開いた。

備前焼作家の森大雅さんは、会場に展示されていた作品を指しながら「このくらいの(大きさの)作品で2000万円くらい。すごく高いなと思った」と語った。
この世界の現代アート市場に「備前焼」も割って入ろうとしている。そこで模索しているのが、海外の富裕層をターゲットにしたビジネスだ。

プロジェクトに関わるEU日本政府代表部の二宮悦郎参事官は、その可能性について「(価格は)10倍どころじゃないかもしれない。博物館に展示されるようになれば20倍とか、そういう世界になるのでは。これからの戦略次第」と話す。
世界の富裕層は資産の5%をアートで持っているというデータがあり、世界のアート市場は約9兆円と言われている。
海外で何が受けるのか研究することも必要となっていて、海外訪問を機に、備前焼作家たちは新しい作品に取り組んでいる。
ヨーロッパで好まれるオブジェ
備前焼の町、備前市伊部で作陶活動を続ける森大雅さんは、彫刻の技術を生かした、いわゆる細工物を得意としている。

この日は、森さんの作品を見たというベルギーのギャラリーから「ちょっと大きなサイズ感で作ってほしい」と依頼を受けたオブジェを作っていた。

元は手のひらサイズのオブジェだったが、ヨーロッパで好まれるのは、広いリビングでも引けをとらない大きさだという。
森さんは「アート作品を買う人は、大きい家に住んでいるのでは」と話す。
「彫刻作品として見てもらいたい」
森さんと一緒にヨーロッパを訪問した備前焼作家の馬場隆志さんも大いに刺激を受けて帰ってきた。

作業場にあった作品は従来の備前焼のイメージとは異なり、馬場さんは「彫刻作品として見てもらいたい。備前焼という感じではなく、アートとして。そういったものが受け入れられる土台を(ヨーロッパで)見たので」と語る。

大学で彫刻を学び、独創的な造形にこだわってきた馬場さんは、備前焼がアートとして評価される可能性を感じていた。
EU日本政府代表部の二宮さんは「作家は作品作りに集中して、場合によっては欧米のデザイナーと組むなど役割分担をしながら、日本の備前焼がアートとして売れていく世界を作っていく」と話し、こうした作家自身の取り組みだけでなく、海外のデザイナーと組んで魅力を引き出してもらうことも1つの手だという。

備前焼の生産が減り続けている中、海外の富裕層に注目されるためには、これまでより大きく芸術性の高い作品に取り組む、海外のデザイナーと組むなど、付加価値を付けることが重要だ。
そして、優れた物作りにはまっとうな対価を支払う仕組み作りが今、必要とされている。
(岡山放送)