2023年、札幌市ススキノのホテルで男性が殺害され、頭部が持ち去られた事件。

両親は娘の犯行計画を知らなかったと主張していたが、8月30日の裁判で父親が事前に知っていたことを示す証拠を検察が提出した。
証拠が示す 父・修被告の関与
2023年7月、札幌市ススキノのホテルで頭部を切断された男性の遺体が見つかった。

厚別区の無職・田村瑠奈被告ら親子3人が殺人などの罪で起訴されている。

8月30日、母親の浩子被告の3回目の裁判が開かれた。
予定されていた父親の修被告の証人尋問は新型コロナに感染したため延期された。

ただ、検察側は修被告が犯行計画を事前に知っていたことを示す新たな証拠を提出した。
それによれば、修被告は事件前に「漂白剤で指紋は消せる?」と検索していたほか、ネット通販で刃物を複数購入していたとされる。
6月に始まった浩子被告の裁判。
厚別区にあるこの家で、家族が異様な関係の中で暮らしていた実態が明らかにされた。

「あんたもそのくそアマもよ、どっちもよ。熟女系の風俗にでも売り飛ばせばいい。とっとと売れや、そのくそアマをよ」(田村瑠奈 被告)
父親が娘からこう言われる関係。

検察側は両親が瑠奈被告を幼いころから甘やかして育てたことを指摘している。
瑠奈被告のことを「お嬢さん」と呼ぶ一方、「私は奴隷です」などという誓約書まで書かされていた。

瑠奈被告が家族の中で圧倒的に上位にいる関係を検察側は、こう表現。
「瑠奈ファースト」
一方、弁護側も当時の状況を明らかにした。
事件翌日に瑠奈被告から発せられた言葉は。
「おじさんの頭持って帰ってきた」(田村瑠奈 被告)
「頭部の存在を気付いたのは家に持ち込まれた後。とがめることができませんでした」(田村浩子 被告)
さらに。
「私の作品を見て」(田村瑠奈 被告)
瑠奈被告は遺体の一部を瓶に入れたり、写真を撮ったりして浩子被告らに見せつけたという。
男性の頭部は自宅の浴室に置かれた。
「この世の地獄がここにある」 異様な家族関係
その異様な状況について。
「この世の地獄がここにある」(田村浩子 被告)

7月に開かれた2回目の裁判では、父親の修被告が証人として法廷に姿を見せた。

父親は娘がホテルから帰るとき、車を運転。
娘はこの時、キャリーケースからあるものを取り出す。
小ぶりのスイカくらいの大きさのものが入った、黒い袋だった。
「それ何?」(田村修 被告)
「首。拾った」(田村瑠奈 被告)
その後、遺体の一部が入った小瓶を見せられたことで、娘が男性を殺害し首を持ち帰ったことを確信したが、警察に通報することはできなかったという。

「通報はしなかったのか」(弁護側)
「すぐにでも逮捕されると思った。私の手で警察に突き出すのは娘を裏切ることになる」(田村修 被告)
「瑠奈さんにどうして殺したんだ、首を切断したんだと聞かなかったのはなぜ?」(弁護側)
「想定していなかったので言葉を失った」(田村修 被告)
犯行計画を事前に知っていたか? 検察側が証拠提出
8月30日の裁判で、検察は修被告が瑠奈被告と一緒に市内のディスカウントストアで刃物を購入していた防犯カメラの映像を証拠として提出した。
また、事件後に浩子被告が修被告にLINEこのように聞いたことを明らかにした。
「そういえば車のGPS履歴は残りますか」(田村浩子 被告)

その後、このメッセージはスマホから削除されたという。
裁判が進むにつれて異様な事実が次々と明らかになっているこの事件。
元検事の磯部弁護士は。

「修被告が事前に瑠奈被告の殺害計画を把握していたのではないかという証拠になるだろうと(検察側が)捉えているのだろう」「(検察としては浩子被告に)やましい気持ちがあったんでしょう、自分のやっていることの違法性というのを把握していたからこそ証拠隠滅的な行動をしていたんじゃないかということに(検察側は)つなげようとしているのかもしれません」(札幌みなみ法律事務所 磯部真士 弁護士)
9月5日には瑠奈被告の裁判の争点などを協議する公判前整理手続きが非公開で開かれる予定だ。