台風10号は、27日~28日にかけて強い勢力で日本列島に接近、上陸のおそれがある。予想される最大瞬間風速は60メートルと、電柱や樹木をなぎ倒すほどの猛烈な風が吹き荒れることが考えられる。暴風だけではなく大雨、高潮にも厳重な警戒が必要だ。いつどこで、どんな影響が出てくるのか。
本州に“直撃”のおそれ
台風10号は23日午後3時現在、マリアナ諸島付近にあり発達しながら北上し、24日には強い勢力となる見通しだ。そして、27日~28日には本州にかなり接近するおそれがある。

日本の南から日本付近にかけての海面水温は28℃~30℃以上と高い状態が続いている。台風は、この暖かい海からの水蒸気をエネルギーにして、日本付近に近づいても発達を続けそうだ。
26日午後3時には、中心気圧は950ヘクトパスカルとなる予想。中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は60メートルと予想され、走行中のトラックが横転したり、一部の住家が倒壊したりするおそれがある。また、警報級の大雨や大しけとなる可能性がある。
台風接近前も大雨に要注意!
台風が接近する前から気をつけたいのが大雨だ。
日本付近には、太平洋高気圧の縁をまわる暖かく湿った空気が流れ込んでいる。さらに、25日頃から日本海沿岸に前線がのびることによって、その前線に向かって暖かく湿った空気の流入が強まりそうだ。

このため、台風の接近前から太平洋側だけでなく、日本海側でも雨の量が多くなる可能性がある。台風が接近してからは台風本体の発達した雨雲がかかり、断続的に激しい雨が降り、さらに雨の量が多くなるおそれがある。
台風が接近する27日ごろから東海・近畿・四国などでは大雨のおそれがあり、特に高波の可能性が高くなる。28日は北海道や東北、北陸、関東でも大雨の可能性が高くなりそうだ。
記録的な暴風・高潮・高波のおそれも
台風による大雨だけではなく、高潮や高波、暴風なども警戒したい。
今回の台風は、中心気圧が低い状態で日本付近に接近するおそれがある。このため、気圧の低下によって海水面が吸い上げられる効果と、強い風によって海水が海岸に吹き寄せられる効果が重なり、高潮が発生する可能性がある。

もし、台風が予報円の中心線を進んだ場合、紀伊半島の西側付近を通過する予想だ。この場合、台風の進路の右側にあたる三重県や愛知県などの湾では強い南風によりさらに吹き寄せ効果が大きくなり、潮位が高くなることが予想される。また、満潮時刻と重なった場合、さらに潮位が高くなることが考えられる。

過去に同じようなコースを進んだ台風は1959年の台風第15号「伊勢湾台風」だ。
高潮により死者・行方不明者が5000人以上にのぼる大災害となった。当時と現在とでは、災害対策の状況は大きく異なるが、警戒が必要なことに変わりない。
海岸付近には近づかないなどのほか、最新の気象情報を確認し安全に行動できるうちに避難するようにしよう。

もし、台風が予報円の西側を進んだ場合、2018年の台風第21号と似たコースを通る。このときは、関西空港が高潮により冠水し、四国や近畿を中心に記録的な暴風となり建物の屋根が飛ばされ、トラックが横転、建設現場のクレーンが折れるなど各地に大きな被害に見舞われた。また、大規模な停電も起きた。
台風の進路にはまだ幅がある状態で、影響エリアが少し東へ移ってきている。この先も直撃を受けるエリアが変わってくる可能性があるため、最新の台風情報をこまめに確認しよう。また、大雨や暴風による冠水や停電などへの備えも進めておきたい。
早めの確認と備えをしよう
大雨や暴風が予想される場合、事前に3つの点について確認したり、備えたりしておこう。
1.雨どいや側溝などを掃除して、水はけを良くしておくこと。落ち葉などで側溝が詰まって水が流れないと、道路が冠水する原因となる。
2.屋外に置かれている「飛ばされやすいもの」(物干し竿、鉢植え、ゴミ箱など)は、しっかり固定するか、室内にしまうなどの対策をしよう。商店などでは、看板が飛ばされたり、自動販売機が倒れたりしないか、確認することだ。
3.暴風で飛ばされてきたもので窓ガラスが割れないよう、窓は鍵をかけ、雨戸があれば閉める。窓ガラスにガムテープを貼ると、風圧に耐えられるようになる。もしガラスが割れても、破片が飛び散るのを防ぐために、カーテンも閉めておこう。
【執筆:日本気象協会】