SNSでウソの投資話を持ち掛け、多額の金を騙し取る「SNS型投資詐欺」。今、この被害が福岡県内で相次いでいる。福岡県警によると、2024年1月から6月にかけて県内で確認された投資詐欺・ロマンス詐欺の被害は326件。被害額は約35億円にも上る。

2024年、SNS型投資詐欺の被害に遭ったという福岡県在住の50代男性、Aさん。最初のきっかけはマッチングアプリだった。「いいね」を押したら向こうから挨拶が来たという。
マッチングアプリで知り合った「ゆみ」
3年前に離婚をし、新たなパートナーを探すためにマッチングアプリを始めたAさん。そこで出会ったのは、30代の「ゆみ」と名乗る人物。宮崎県出身で、現在は東京でデザイナーの仕事をしていると話す「ゆみ」。相手は「連絡しやすい」との理由で、アプリからLINEへの移行を提案してきたという。

「1日に、長い時は2~3時間ぐらい、やりとりをするときもありましたので。それでやっぱり心を許しちゃった」とAさんは振り返る。
自分の話を真面目に聞いてくれる「ゆみ」に対し、徐々に恋愛感情を持ち始めたAさん。ときには相手とビデオ通話も行ったという。

「やっぱり信用させるためですかね。すぐ切られましたけど。アプリの写真とはちょっと違うなという感じもしました」とAさんは、どこか不自然に感じたものの、そのときは相手に夢中で、疑うことはなかったという。
“ビットコイン”に誘う「ゆみ」
その後、LINEのやりとりを続けること1カ月。「ゆみ」から或る提案があった。「私は、ビットコインで、これだけ稼いでます。っていうのをですね、LINE上の画面で、送って来て。1日に何百万も稼いでます。っていうのをですね、言うわけですよ」(Aさん)。

ビットコインとは暗号試算の一種で、インターネット上で取引される通貨のこと。世界中で現金と同じように使用でき、資産運用にも利用されている。これまで投資経験がなかったAさんは「ゆみ」からの誘いに戸惑いもあったと話す。しかし「私の夢は世界一周旅行。と言うわけですよね。それには、やっぱりお金が、だいぶかかるから、あなたも稼がなきゃ」と言われたという。

「ゆみ」は大学生の頃に株取引を始め、ここ2~3年で2000万円稼ぐなど投資で成功してきたと話す。さらに稼いだお金で購入した高級車の写真を送って来るなど華々しい生活もアピールして来た。
ビットコイン はじめは20万円から
「取り敢えず、はじめは20万円からやってみないかって言われて、それからやってしまった」と話すAさん。すると、或るサイトのURLが送られて来た。実はこのサイトが「架空の投資サイト」だったのだ。

Aさんはこの架空の投資サイトに登録し、20万円分のビットコインを入金してしまう。さらに「ゆみ」の指示を受けて取引を進めるとサイト上では利益が出ているように表示されていた。「私も1日で何百万も稼げるから、もっとあなたもどんどんやりましょう。ばっかりでしたね」(Aさん)。

簡単に儲かると信じて、さらに入金しようとしていたというAさんだったが、その後、家族の一言で立ち止まる。「詐欺を特集しているテレビ番組を、ちょうどうちの姉が見ていまして、『あなたは、もう全く同じことやられているやん』と。それで我に返りました」。
警察から聞かされた相手の正体は!?
詐欺に遭っていると確信したAさんは警察に出向き、被害を報告。そこで聞かされたのは驚くべき内容だった。「警察が言うには、中国人が作った詐欺グループの架空サイトで、『これは全くお金がおろせません』とはっきり言われました」(Aさん)。

また、これまでのLINEのやりとりは、詐欺グループが日本語の変換ソフトを使用して行っていたことが判明した。相手とのLINEを、あらためて見返してみると確かに不審な点があったとAさんは話す。「LINEのやりとりで、私から『仲良くなりたいので、敬語使わなくていいですよ』って言ったら、『敬語の方が話しやすいんで、そっちでやりとりしましょう』みたいなふうになりまして、後々、考えてみたら変換機能って、敬語しか出ないタイプだから」とAさんは振り返る。

20万円が回収不能になってしまったAさん。悔しい気持ちは、いまもある。「お金を盗られたのは痛いですけど、やっぱり心もですね、奪われたというか、それが許せないですね」とAさんは、やり場のない思いを滲ませながら言った。

恋愛感情を利用した今回の投資詐欺だが、「被害に遭わないためのポイント」を投資の専門家、三菱UFJアセットマネジメントの代田秀雄さんに聞くと、投資に「必ず儲かる」という話はなく、一獲千金的な話は危険だという。少しでも変だと思ったら周りに相談することが重要だ。
(テレビ西日本)