JR九州の子会社が福岡と韓国・釜山を結ぶ高速船、クイーンビートルの船体の浸水を隠すなどして運航を続けていた問題。JR九州は謝罪会見を開いた上で、新たな体制で出直しをはかると発表した。
この記事の画像(7枚)「申し訳ありませんでした」深く頭を下げた謝罪に続き、「クイーンビートルは安全に対する意識、体制ができていないので当面運休」と松下琢磨常務が苦渋に満ちた表情で臨んだ記者会見。問題となっているのは高速船クイーンビートル。オーストラリアの造船メーカーが製造した赤い船体が特徴的な高速船だ。福岡と韓国・釜山を結ぶ新型船として2022年にデビュー。そのスタイリッシュな外観と優雅な雰囲気で人気だった。
浸水確認も航海日誌に「異常なし」
クイーンビートルをめぐっての問題点。まずは2024年2月12日、少量の浸水2~3リットルが確認されたが、九州運輸局には報告していないということ。さらに航海日誌などにも「異常なし」と記載していた。
その一方で、運航管理の社員が「浸水量の管理簿」を作っていたという。これは会社内部で浸水量を把握しておくためにわざわざ作ったものだ。その後、会社は浸水を把握しながら3カ月以上、クイーンビートルの運航を続けている。
そして、5月27日、博多港でのチェック作業の際に浸水量が増えていることが確認される。このとき、浸水していた量は実に736リットルに上っていた。この数字は、最初の浸水量の300倍以上で、JR九州もこの量については「危険な兆候だった」と答えている。
警報センサーの位置をずらす
そして重要なのは、浸水を知らせる警報センサーの位置。翌日、警報センサーをそれまでの高さ44㎝から1mに上げている。意図的にずらしたのだ。「反応しないようにずらした」とはっきり会見でも答えている。
そして5月30日、浸水量がさらに増えてずらしていたセンサーにも反応したため、この時点で九州運輸局に報告。このときの浸水量は約2200リットルにも上っていた。その後、運航を停止。検査を経て7月11日に運航を再開した。
一連の隠ぺいは“会社ぐるみ”
8月6日の国土交通省による抜きうち検査で発覚した隠ぺい工作。一連の隠ぺい工作は、どれだけ組織的なものだったのか。JR九州の松下琢磨・常務は「2月の、報告しないという決断についてはトップ、当時の田中社長が決断をしたということでございますので…。センサーの位置ずらしについては、運航に携わる社員が行っておりますが…、最終的には社長も知っておりますので…、これも社長の決断とお考えいただいて結構でございます」と記者会見で述べている。
繰り返された浸水とずさんな対応
JR九州は、これらの不正が子会社であるJR九州高速船の当時の田中渉社長ら上層部も把握した上で“会社ぐるみ”で行われていたと指摘。田中社長を解任した上で新体制での出直しをはかるとしているが、クイーンビートルは8月13日から運休。この影響で9月30日までの予約客、約2万2000人に影響が出ている。
「人命にダイレクトに関わるから、営利じゃなく、大事にしてほしいなと思います。結構ゾッとしますね」(男性)、「隠すというのは怖いですよね」(女性)、「あり得ないことやと思います。前のビートルは何回も乗りました。怖いですね」(男性)など、船の安全運航という根底を揺るがす問題だけに市民からは厳しい声が上がっている。
繰り返された浸水とその後のずさんな対応。謝罪会見で新たな体制で出直しをはかると発表したが、トップから退いた田中前社長も取締役としては残るとしている。果たしてJR九州高速船は本当に安全運航ができる体制に生まれ変わることはできるのか? 親会社であるJR九州にも厳しい目が向けられている。
(テレビ西日本)