東京株式市場は米ハイテク株の上昇の流れを受け、1200円以上の値上がりを見せるも、市場関係者の間には、アメリカの経済指標発表を控えて、今後、波乱含みとなるリスクがあるとの見方も出ている。
専門家は、円安水準が企業業績にプラスであると述べ、商品の付加価値を高める重要性を指摘している。
円高進行は「前向き」業績注視の大手商社
為替と株価が荒い値動きを見せる中で行われた、大手商社の決算を見ていく。

連休明けの13日、前日のニューヨーク市場でハイテク株が上昇した流れを受け、1200円以上値上がりの3万6000円台を回復した東京株式市場だったが、市場関係者の反応は、やや冷ややかだった。

今週はアメリカで、7月の消費者物価指数など、重要な経済指標となる発表が控えていることから、「場合によっては波乱含みとなるリスクがある」との見方も出ている。

日銀の追加利上げの決定に加え、7月から15円を超える円高進行、さらには前週、アメリカの景気後退への懸念から歴史的大暴落となった株価など、金融市場は波乱の夏を迎えている。
こうした中、為替と株価の影響がにじみ出たのは、大手商社の決算だ。
今後の市場について、どう見ているのだろうか。

伊藤忠商事・鉢村剛副社長:
線状降水帯に直撃を受けたようなマーケットの1日だったと思うが…。

前週、過去最大4400円以上の大暴落となった株価を「線状降水帯」に例えた、伊藤忠商事・鉢村副社長は、直近の荒れる市場について、「極端な乱高下状況に左右されない考え方で見るべきだ」との考えを示した。
また、円高進行については次のように話した。

伊藤忠商事・鉢村剛副社長:
少なくとも株がこれだけ急激に下がった、円高に向かったということで、気になるのはやはり消費の動向がどうなるか。円安が是正されていく流れというのはポジティブにとっている。

オーストラリアに所有する炭鉱の一部売却益に加え、円安の影響も追い風となった三菱商事。

為替について、三菱商事・野内CFOは「日米の金利差が縮小するという方向感で、今後はやや円高方向に進んでいく可能性が高いのでは」とする見解を示し、5月時点で1ドル=143円とした想定為替レートについても、「現時点で大きく見直す必要はない」とした。

また、火力発電事業の売却と円安などによって増益となった三井物産は、為替による業績への影響は「限定的」とした。
三井物産・重田CFOは、「緩やかに円高が進捗(しんちょく)していく、これが日本の経済マーケットにとってベストなシナリオ」との見解を示した。
金融市場が大きく揺れ動く中、各社は事業への影響は軽微だと強調しており、今後の業績の推移が注目される。
円安で業績プラスも付加価値の向上が鍵
「Live News α」では、市場の分析や企業経営にくわしい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーー為替と株価が乱高下する中での商社の決算、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
5大商社は、これまで為替レートを140円台で想定していました。それよりも円安水準にあるため、業績の押し上げに寄与しています。
例えば、三井物産は1円の為替変動で、利益は34億円のプラスに働く見通しです。円安をバネに、企業の多くが好決算となっていて、トヨタの決算を見ると、為替益は3700億円となっています。
堤キャスター:
ーーやはり為替の動きは、企業に大きな影響を与えるようですね。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
足元では日銀の追加利上げなどを背景に、円高が進行していますが、実は、130円~140円台の水準は、歴史的に見れば、十分「円安水準」であり、企業業績にプラスになるはずです。
円安という“げた”を履きつつも重要なのは、本業で稼ぐ力を高めることです。具体的には、商品の付加価値を高め、利益率を高めていくことが求められています。
日銀の利上げ抑制発言が市場を安定
堤キャスター:
ーーこれからの下期に向けての経営のポイントについては、いかがですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
株価の乱高下で、市場関係者や経営者の頭をよぎったのが、利上げで景気が冷えないか、まだデフレに逆戻りしないかということです。
それが、日銀の内田副総裁の「市場が不安定な状態で、利上げすることはない」という発言によって、少し落ち着いたように見えます。
堤キャスター:
ーー1年を通して、企業の業績は期待できるのでしょうか?
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
9日時点で、TOPIX(東証株価指数)採用の95%ほどが4月から6月期の決算を発表したと報じられています。営業利益は、前の年の同じ期と比べて10.9%増となっています。さらに、営業益を上方修正した企業数は88社と、下方修正の17社を大きく上回ります。
輸出企業は円安の恩恵を受け、内需型のサービス業もインバウンド需要を謳歌(おうか)しています。さらに、値上げできている「食品企業」や、「鉄道」、「メガバンク」なども好業績が目立ちます。
この先、アメリカの大統領選挙や中東情勢など、リスクは常にありますが、多くの企業で通期の見通しは、「増益」に着地すると見ています。
堤キャスター:
株価や為替の乱高下に左右されることなく、力強い成長ができる経営が、今、求めらているのかもしれません。
(「Live News α」8月13日放送分より)