学校が抱えている課題に、企業がアプローチ

教室に響く明るい声。
行われていたのは、中学の保健体育の授業で、この日のテーマは「熱中症」。

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その原因や症状、そして対処と予防法を学ぶ。
しかし、使うのは教科書ではなく、主にパソコンと連動するプロジェクターが映し出すデータや動画。

中学生の死亡例なども交え、授業はもう1つのポイント、熱中症予防と水分補給へと進む。

岡本和隆教諭:
これまで水で十分だと思ってた人?

岡本和隆教諭:
汗をなくしたら、その分、汗に近いものを取るのが合理的じゃないか

授業を受けた生徒:
水分と塩分だけじゃなくて、糖分もしっかり取らないといけないなというふうに思った

授業を受けた生徒:
熱中症というのは、自分の中で軽く思っていて、きょう(授業を)やってみて、熱中症で死んでしまう人とかもいるので、とても怖いものだと知った

こうした知識や情報を提供・監修したのは、イオン飲料で知られる大塚製薬。
その協力により、「熱中症の教材」が出来上がり、先生に渡されていた。

岡本和隆教諭:
最近では、防災とか生活安全とかを教える内容が増えてきている。
僕たちも(新しいことを)自分で調べるというのは(時間的)限界があるので、きょうの(授業の)クオリティーを独自でと考えたらできないと思う

先生が忙し過ぎる

それぞれの分野で専門的な知見を持つ企業と組み、開発した教材を現場の先生に提供するこのシステム。

開発したのは、教育ベンチャー「ARROWS」の浅谷治希代表。
ヒントは、ARROWSが運営し、全国4万人の教員が登録するSNSサイト「SENSEIノート」にあった。
ここで教員同士が抱える悩みや課題を調査するうち、浮かび上がってきたのは先生の多忙さ。

株式会社ARROWS・浅谷治希代表:
世の中、複雑化してきて、先生に求めるものが増えてきている時代なので、
(先生への)要請が増えているにもかかわらず、先生の人数は、そんなに変わっていない。
業務領域と負担は増えていると思う

そこで、教員が教材を一から調べて作るより、専門の企業と提携、その知見を教材に導入する仕組みを確立した。

ARROWSと提携企業の間ではビジネスとなるが、出来上がった教材はSNSに登録した教員を中心に、全国の教員もネット経由で入手、無料で使える

これまでもIT企業によるネットとの接し方を学ぶ授業や、電力会社が工業高校の電気科の生徒に、その知識をどう生かすかを教える授業など、7つの教材を開発してきたこのシステム。
その狙いは。

株式会社ARROWS・浅谷治希代表:
先生が少ない手間で質の高い授業ができるというところが重要。
先生が忙し過ぎるので、先生の働き方改革が必要だなと思っている

一体になって未来の人作り

内田嶺衣奈キャスター:
松江さんも社会人向けの大学院で10年以上講義を持たれていますけれども、この試みどのようにご覧になりますか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
私もビジネスと教育をつなぐ役割を果たしてきたんですけれども、そこの実感は教育の現場で非常にビジネスの実践的な知見とか最新の情報へのニーズがすごい高いってことなんです。
ですからこれからグローバル化とデジタル化が進んでいく中で生き抜く人材を作っていくとなると、学校の先生にすべてをお任せするというのではなくて、いかにビジネスが協力できるか、この一体感を作れるかが大事だなと改めて思います。

内田嶺衣奈キャスター:
子供たちにとっては将来の夢が早く見つかるきっかけにもなりそうですよね。
そう考えると企業が果たす役割というのはとても大きいですね。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
そう思います。
企業は教育に携わるボランティアではなくて、企業の社会価値を高める取り組みだと捉え直すことがまず大事だと思うんです。

実際に東京の渋谷ではIT企業が小学校・中学校・公立の学校にプログラムの教育を提供する。
こんなことをやっているんですけれども、実際に企業からすると、自社が得意としているもの自体を教材としてもしくは人材として直接的に提供して貢献する役割が求められると思うんです。
日本はこれから人材が宝ですから学校とビジネス、企業が一体になって未来の人作りをする。
こういったことは最も大事じゃないかなと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
本当にそうですよね。
そして社会に出てから役立つことを早い時期から学べるというのはとても魅力的だと感じます。
可能性を伸ばしやすい伸ばせる環境というのが整っていくといいと思いました。

(「Live News α」8月14日放送分)