8日に気象庁から臨時情報の「巨大地震注意」が発表された。日頃の備えを再確認して、地震の発生に注意しながら通常の生活を送ることが呼びかけられている。
今回の地震に関して、南海トラフ巨大地震や避難行動に詳しい、京都大学 防災研究所の矢守克也教授に詳しく聞いた。
■7日以内の「後発地震」は平常時の5倍の確率 専門家は…
この記事の画像(7枚)まず今後の地震発生のリスク。 地震が発生する可能性はあくまで確率、数字の話だ。
「先発地震」と呼ばれる地震、今回でいうと8日に宮崎県を中心として起きた大きな地震があたる。この「先発地震」がMw(モーメントマグニチュード)7.0以上の場合、7日以内にM(マグニチュード)8級の「後発地震」が起きた過去の事例を見ていくと、1437件中6件、約0.5%の確率となる。
平常時の約0.1%と比べると、5倍ほど確率が上がっていることが分かる。
この確率について、矢守教授は次のような見解を述べた。
京都大学 防災研究所 矢守克也教授:2つの見方があるので、皆さんもどう考えたらいいのかと思っておられると思います。
まず1つの見方は、(平常時)0.1%、(過去の事例によると今回)0.5%と出ています。普段は0.1%しかない南海トラフ地震がいきなり起こる確率。それに比べると、8日のような中規模の地震があった後に、1週間程度の間に続いて起こる確率が0.5%あるので、5倍。この数字は計算の仕方によって変化しうるので、計算の仕方によっては10倍くらい(の確率)になっているんじゃないかという考え方もあります。そう思うと、普段よりだいぶ確率が上がっているということで、普段よりはギアを上げてほしいという風にお願いしているわけです。
しかし、もう1つの見方があって、冷静に見ていただくと、0.5%=『200回に1回なのか』という見方も可能です。そうすると、必要以上に何もかもキャンセルして、何もかも閉めてということをしたり、皆が普段買う10~20倍も物を買い始めると、そのことがもたらすマイナス面の方が社会に大きく出てしまうので、ここは0.5%という数字の小ささにも、冷静に目を向けてほしいと思います。
■目安として1週間程度は備えの再確認を
「巨大地震注意」の情報について、関西テレビの神崎デスクは次のように話す。
関西テレビ 神崎博報道デスク:『巨大地震注意』というのは、あくまで確率論です。過去の世界中の地震のデータを集めてきて、調べていくと『これくらいの確率で起きますよ』という話なので。実は『1週間ずっと同じ緊張感を持ってください』という話ではなく、濃淡があって、過去のデータを見ると、6回大きな地震が1週間以内に起きていると。その6回というのは、地震が起きた当日、翌日、翌々日、この3日間で6回大きな地震が起きているというのがあるんです。
なので、今回(8日)の地震でいうと、9日と10日に起きる確率が高いので、この3日間は注意しましょうと。1週間という目安はあるんですけども、1週間たったら安全なのかというとそういうわけでもなくて、実は2週間くらいたってから大きな地震が起きているケースもあります。あくまでも1週間というのは目安でしかないということです。
南海トラフの震源域、過去の地震の発生状況を見てみる。1854年の地震では、1回目の大きな地震から32時間後に同程度の揺れが襲っている。しかし、1944年の地震では、1回目の地震から2年後に大きな地震が襲っている。こういったケースもあります。 事例ごとにスパンが大きく異なるが、目安として1週間程度は地震への備えの再確認をしてほしいと呼びかけている。
■震源地周辺への帰省や海辺への旅行は控えるべき?
視聴者から質問がきている。
「明日(10日)から鹿児島県の主人の実家に帰省予定です。行っても大丈夫ですか?」
京都大学 防災研究所 矢守克也教授:私の考えですが、今回の『巨大地震注意』という情報の元では、帰省といった通常されているようなことは、普通に続けていただいていいと思います。ただ、そこにメリハリをつけるということで、普段は例えば、特にチェックしないとしても、ご実家周辺の地震・津波リスクや、あるいは地震による土砂災害のリスクについて、この際調べてみようということはされた方がいいと思います。
特に、このお正月に、まさに多くの方が帰省されている時に大きな地震が能登半島でありました。そういうことを考えても、普段していないことをプラスアルファで1つ、2つするという心がけが、この『巨大地震注意』という情報の元では大事だと思います。
帰省先のハザードマップや避難先がどこにあるのかということを調べておく必要があるだろう。
次の質問。「海辺への旅行は控えた方がいいですか?」
京都大学 防災研究所 矢守克也教授:海水浴場自体が閉まっているところもあるようですが、開いているところもあると思います。そういうところは十分、海水浴場も警戒されていると思うので、指示を受けながら、いざという時にどこへ逃げられるのか確認するとか。あるいは海辺でビールをたくさん飲むのを楽しみにされている方もいらっしゃると思いますが、今回はちょっと控えていただいて、すぐに逃げられるというマインドをちゃんと持っておく。そういうところをちょっと心がけていたただくと、注意しながら楽しめるのではないでしょうか。
何かあった時の備えを忘れないようにしていただきたい。
■今回の情報を“自宅の安全性を確認する”機会に
続く質問。「旅行先で地震が起きた時のために持っておくといいものは?」
京都大学 防災研究所 矢守克也教授:特におすすめしたいのは、自分自身とか、ご家族だけに必要な、大事なもの。例えば私だったらメガネのスペア、予備なんですが、一般的に必要な水や食料は周りから、旅行先や帰省先でも比較的容易に手に入れる方法が分かるかと思うのですが、自分だけが必要なものや、飲まないと体調にかかわる薬とか。そういうものは特に、この1週間程度は大きな災害が起こるかもという情報が出ているので、普段以上に気をつけて、予備を携帯しておくということを心がけるといいと思います。
「子どもに留守番の時、地震が来たらどうすべきと伝えたらいい?」 これは難しいが、どうなのだろうか。
京都大学 防災研究所 矢守克也教授:難しいですね。でも、例えばこれを機会に、自宅が地震に対してどれくらい安全なのか、不安があるのか。子ども部屋やリビングの家具の固定などが進められているのかどうかということを、子どもにどういう指示を出すかを考える前に、家族全員でチェックするという機会にしていただくと、今回の情報を前向きに生かせると思うんです。情報が出たからといって、地震・津波が必ず来るとは限らないので、いわゆる“外れ”になる可能性も高いです。その時に『外れた』と思うのではなく、家族でそういうことを始めるいいきっかけになったと思えるように活用してもらうことが大事だと思います。
「みんながたくさんの水などを買って商品がなくなるということは避けるべきですが、3日分程度の備えで良いのでしょうか?」という声もあった。
京都大学 防災研究所 矢守克也教授:標準の目安としては、3日ではなく、大きな災害になるといろんなところで同時多発するので、外からいろんなものを持ってくることもできなくなることを見越すと、最近は『1週間分くらいは用意しておきましょう』と言われています。
ただ、これを聞いてみんなが1週間分を買いに今日行くと、そのことがもたらす混乱もあるので、できれば平時の間にストックを増やす努力をしましょう。
また、災害に関して根拠のない情報やデマが出回ることも懸念される。気象庁や自治体の公式情報を参考にしていただきたい。
(関西テレビ「newsランナー」2024年8月9日放送)