5年前に再開された商業捕鯨。 国は新たに「ナガスクジラ」という大型のクジラの捕獲を解禁すると発表した。『幻の鯨』が食べられるようになるかもしれない。

【動画】1頭から25トンの肉がとれる「ナガスクジラ」の商業捕鯨が解禁

■クジラ肉の消費量は1960年代と比べると100分の1以下に

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鯨といえば、かつて学校給食の定番メニューとして登場するなど、“低カロリーで高タンパク”な料理として生活を支えていた。しかし今、鯨肉の消費量は年間およそ2000トンと、ピーク時の1960年代と比べると100分の1以下しかない。

街の人に聞いいてみると…

-Q.鯨料理、食べますか?
21歳女性:食べないです。

17歳女性:食べたいと思ったことないかもしれない。水族館でしか見たことないから、『食べるんだ!』って感じ。

70代女性:鯨世代。最近はあまり食べてないけど、(鯨料理が)ある店に行ったら食べる。

70代男性:値段が高くなったから、何年も食べられていない。

■“幻のクジラ”ナガスクジラの商業捕鯨は50年ぶり 食文化復活の起爆剤となるか

食卓から消えゆくクジラをめぐって、新たな動きがあった。

水産庁 捕鯨室 坂本孝明室長:調査を行う中で、ナガスクジラの資源が豊富であることが確認することができました。ナガスクジラを商業目的で捕るのは、約50年ぶりの形になります。

水産庁は31日、商業捕鯨としてナガスクジラを日本の近海で捕獲していくことを決めたのだ。商業捕鯨は、国際的に反捕鯨の風が強まり1988年に中止されたが、日本は5年前にIWC(=国際捕鯨委員会)から脱退し、再開していた。

今は、ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラという小型・中型の3種類を捕獲している。

■ナガスクジラの肉 現在輸入品で「100グラム1万円」の部位も 国産は「幻の鯨」

ナガスクジラの特徴は…

記者リポート:私の頭の上にあるのが、ナガスクジラの標本です。全長20メートルにもなり、かなり大きいです。

ナガスクジラは大きいもので80トンにもなり、日本が捕獲しているクジラの2倍から10倍クラス。1頭からおよそ25トンもの肉がとれるという。国内にはアイスランドからの輸入品が流通しているが、市場に多くは出回らず、高級な部位になると100グラム1万円ほどと、他のクジラと比べても価格が高い傾向にある。

くじらの田井 田井謙吉さん:(国産は)幻の鯨ですね。昔の味がよみがえってくるんじゃないかという期待感は持っています。

クジラの町として知られる和歌山県太地町。 今は小型のミククジラが主に捕獲されているが、かつては南極海でとれたナガスクジラが商品として並んでいたこともあった。ナガスクジラの漁に携わったことがある元漁師からも期待の声が…

元漁師:ナガスクジラ1頭捕ったら、ミンククジラの20頭30頭分、それ以上かもしれない。鯨になじみがない人は、ナガスクジラを好むんじゃないですか。

■ナガスクジラを実際に食べてみると「甘味がつよい」

一体、どんな味がするのか。 関西テレビ竹上萌奈キャスターが、アイスランド産のナガスクジラを食べることができる鯨料理店を訪ねた。

鯨料理店「むらさき」今川義雄さん:これが刺身です。

竹上萌奈キャスター:色んな種類があるんですね。

まずはお刺身をいただくことに。 一般的に食べられているイワシクジラは…
竹上萌奈キャスター:ほろほろとして柔らかい。血合いの味はするが、全然、生臭くない。

続いて、お目当てのナガスクジラは…
竹上萌奈キャスター:おいしい。イワシクジラは肉っぽかった。こちらは魚のようなねっとりした甘さ。

他のクジラに比べて大型のため、脂がのって甘味が強いのが特徴だという。

ステーキもいただいた。
竹上萌奈キャスター:触感がやわらかい。さっぱりした味なので、ついつい手がのびてしまう。これだったら牛・豚・鶏・鯨もありなんじゃないか。第四の選択肢になるかも。

-Q.輸入と国産は何が違う?
鯨料理店「むらさき」今川義雄さん:まず鮮度が違いますね。日本近海で捕って、すぐ生で出そうとなると出せますから。もっと値段を安くしてもらって、学校給食とかに出してもらって、食文化が消えてしまいますから、若い人に食べてほしい。

50年ぶりとなる幻のクジラ。食文化復活の起爆剤となるのだろうか。

■「食べる自由と、資源を守る、その両方の責任を負いながら」

鯨料理店の今川さんは「鯨通の方は、鯨の味が強いお肉を好む」と話していた。鯨の種類に優劣はないが、竹上キャスターのように初めて食べる世代にとっては、食べやすいナガスクジラの方が受け入れられるのではないかということだ。

newsランナーのスタジオでアイスランド産のナガスクジラを試食したジャーナリストで番組コメンテーターの鈴木哲夫さんは、「魚の刺身のようでもあり、肉のようでもあり、ちょうどその中間ぐらいで癖がない」と話した。

■「ナガスクジラ解禁」でクジラを食べる文化は復活するのか

そもそも日本では、鯨肉を食べる食文化があり、1970年代ごろまでは多く消費されていた。しかし商業捕鯨の停止などもあり、消費は落ち込み、5年前に商業捕鯨が再開された後も消費は回復しない状況が続いている。ナガスクジラの解禁で、クジラを食べる文化は復活するのだろうか。

ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:捕鯨というのは政治的にも、クジラを捕るのは良くないなどと海外から批判されていました。でも、食文化というのは国が違えば違うわけじゃないですか。逆に言うと、絶対日本では食べないというものも、海外では平気で食べたりするわけでしょう。だから僕は、日本人が鯨を食べるのは『あり』だと思います。ただ一方で食文化というのは、好きに食べるけれども、資源として守る責任もある。今回は資源が豊富になったので捕ろうということになりましたが、これがまた少なくなってきたら、ちょっと自制しようかなとかね。食文化は自由に食べる文化、これを認めていい。でも一方で、資源として守っていく、その両方の責任を負いながら進めていくべきではないかと思います。

すでにナガスクジラの漁に出ている船があるそうだ。今後、鯨食文化が広がっていくかどうか注目だ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月31日放送)

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