7月と8月は年間の中でも、突風被害が多い時期である。突風は、急に非常に強い風が吹く現象だ。また、局地的に発生し、その持続時間は数秒から数分程度と短い。しかし、その威力は非常に強力であり、時には大きな被害をもたらす。

夏から秋にかけて多い突風

竜巻などの突風は年間を通して発生しているが、特に夏に発生数が増える。気象庁によると、1991~2024年までに確認した突風の件数は、770件。そのうち7月と8月だけで、総数の約35%にあたる273件にものぼり、年間の中でも特に夏期に集中している。突風には主に竜巻、ダウンバースト、ガストフロントといった種類がある。

竜巻は、空から地面に向かって猛烈に回転しながら降りてくる激しい渦巻きのことだ。竜巻は非常に強い風を伴い、建物を破壊したり、車を吹き飛ばしたりする。

中国・江蘇省で起きた巨大竜巻(2023年)
中国・江蘇省で起きた巨大竜巻(2023年)
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ダウンバーストは、積乱雲から吹き降りる下降気流が地表に衝突し、水平に広がる現象だ。これにより、広範囲にわたって強い風が吹く。特に空港での離着陸時に危険である。

ガストフロントは、積乱雲の下で形成された冷たく重い空気の塊が、暖かく軽い空気の側に流れ出すことによって発生し、水平の広がりは竜巻やダウンバーストより大きく、数十キロメートル以上に達することもある。

7月24日11時50分頃、埼玉県南部で突風が発生した。埼玉県入間郡越生町(いるまぐんおごせまち)から草加市(そうかし)にかけて突風が発生し、住家の屋根のトタンの飛散などの被害があった。

埼玉での突風被害(24日)
埼玉での突風被害(24日)

発生した突風の種類は、気象庁により、ダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと判断された。その強さは風速約40m/s と推定されている。

突風の発生時には、活発な積乱雲が付近を通過中で、激しい風は比較的長時間(10 分程度)だったという証言が複数あり、このとき強い雨やひょうを伴っていたそうだ。

突風による影響や被害

このように突風によって、建物の屋根が飛ばされたり、壁が破壊されたりすることがある。特に木造建築物や古い建物は被害を受けやすい。また、道路では突風により車両が横転するなどの事故が発生することがあり、局地的な激しい突風によって、電車が脱線、横転する甚大な事故が起きる恐れもある。

突風で屋根や看板が吹き飛ばされる被害も
突風で屋根や看板が吹き飛ばされる被害も

強い風によって、樹木が倒れることがある。倒れた樹木は電線を切断したり、道路を塞いだりするため、二次的な被害を引き起こすことがある。また、電柱や電線が突風によって破壊されることで、広範囲にわたって停電が発生することがある。被害が大きいと、長時間にわたる停電を引き起こすこともある。

突風への備え

停電が発生した際に備えて、非常用電源を確保しておくことが大事だ。家庭用の発電機や蓄電池を準備しておくことで、突風による停電の影響を最小限に抑えることができる。

また事前の突風対策としては、庭やベランダにある物は風で飛ばされることがあるので、突風が予想されるときには片付けておこう。特に軽い物やプラスチック製の物は気をつけたい。

突風に吹き飛ばされた小屋の残骸
突風に吹き飛ばされた小屋の残骸

定期的に家の周りや屋根を点検して、壊れているところがないか確認する。壁の補強を行い、雨どいや屋根瓦は突風で壊れることがあるので、場合によっては修理しよう。特に古い建物は定期的な点検と補修が必要である。

家の中で安全な場所(窓が少ない部屋など)を確認しておこう。学校や公園でも安全に避難できる場所を知っておくと良さそうだ。

竜巻などの突風から身を守るための「竜巻注意情報」

天気予報やニュースを見て、突風や雷雨の予報が出ていないか確認しよう。天気アプリを使うのもおすすめだ。竜巻などの激しい突風の可能性がある場合、気象庁から情報が段階的に発表され、注意が呼びかけられている。

●半日から1日前…「気象情報」を発表
「竜巻などの激しい突風のおそれ」という表現で注意。

●数時間前…「雷注意報」を発表
落雷、ひょう等とともに「竜巻」を明記。

●0~1時間前…「竜巻注意情報」を発表
今まさに竜巻やダウンバーストなどの激しい突風が発生しやすいことを知らせる。

他には気象庁から「竜巻発生確度ナウキャスト」というのが出されている。これは、今にも発生する可能性のある地域の詳細な分布を提供している。

このような気象情報を常にチェックし、竜巻などの突風のおそれがある場合は、速やかに行動を起こすことが必要だ。

積乱雲の発達や接近に注意
積乱雲の発達や接近に注意

また、屋外では空の変化には気をつけ、積乱雲が近づくサインを見逃さないことだ。真っ黒い雲が近づいてきた、雷の音が聞こえてきた、急に冷たい風が吹いてきたといった状況は、積乱雲が近づいている兆しであり、まもなく、激しい雨と雷がやってくる。竜巻などの激しい突風が起きる恐れもある。

「竜巻注意情報」が発表されたら

屋内にいるときに突風が起こるおそれがあるときには、窓やドア、外壁から離れよう。できれば窓のない部屋が安全だ。窓が割れると危ないので、カーテンやブラインドを閉めておくと良さそうだ。

窓のない部屋があれば安心
窓のない部屋があれば安心

屋外にいるときは、すぐにコンクリート製などの頑丈な建物の中に避難しよう。車庫やプレハブなどは危険だ。もし近くに頑丈な建物がない場合は、できるだけ低い場所にうずくまったり、体を伏せたりして、風に飛ばされないようにしよう。

自転車に乗っているときは安全な場所に停めて、自転車から降りて避難しよう。風で倒れてケガをしないように注意したい。

突風は、大きな被害をもたらすことがある。自分や家族の身を守るためにも、最新の気象情報を積極的にチェックしたり、安全な場所に避難するなどの適切な判断をしたりすることが大切である。

【執筆:日本気象協会】

日本気象協会
日本気象協会

日本気象協会は1950年の設立以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行ってきました。2023年7月1日現在、355人の気象予報士が所属しています。
昨今、気象の激甚化や地球温暖化、エネルギー問題、情報化社会の進化、超高齢化・少子化社会の到来など、世の中の状況が大きく変化してきています。
日本気象協会の最大の強みは調査解析技術とリアルタイムに情報を提供できる技術を併せ持つこと。
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