線状降水帯の発生・1日に二度の大雨特別警報の発表があるなど、記録的な大雨に見舞われた山形。中でも被害が大きかった庄内・最上地方の最上に位置する新庄市では、夜遅くに救助要請があり、救助に向かったパトカーが流され、乗っていた警察官2人が犠牲となった。その夜、パトカーが流された現場はどのような状況だったのか、周辺の様子や近所の人の話から明らかになってきた。

どこにでもある田園風景が一変

大雨から4日経ち、パトカーを含む乗用車4台が流された現場は水がひき、田んぼに3台の車が残されているという景色に変わっていた。

流された3台の車が残ったままの現場
流された3台の車が残ったままの現場
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警察官2人の命が奪われた場所は、そこが茶色い泥水に浸かっていたとは思えない、県内のどこにでもあるようなのどかな田園風景になっていた。

今回の大雨により、山に沿って流れている新田川が大雨によって上流部ではん濫し、周辺に広がる田んぼに流れ込んだ。

当時の様子を近くに住む野崎香織さんが証言してくれた。

野崎さんによると、25日は「朝から雷と豪雨が止まらない日だった。夜までずっと、すごい雨の量で、夜中も止むことなく降り続いていた」という。

パトカーが見つかった26日、野崎さんが午前5時ごろに撮った映像では、田んぼが「水に浸かった、ただの冠水」の状態ではなく、「流れ」ができている様子が確認できた。

野崎香織さん:
結構な勢いだった。水浸し。車も半分以上水で隠れていた。この道路ができてから大雨でも水が上がった・濁流が流れたことはない。

29日、水が引いた市道の街路樹には流木が引っかかっていて、その向きを見ても新田川の流れに沿って、市道を横切るように濁流が流れていたことが推測できた。
その勢いに飲まれ、パトカーは流されたとみられている。

街灯がほとんどない現場の市道

水に流されたとの救助要請を受けた警察官2人は、現場がある程度水に浸かっていることは想像していたはずだ。ただその水が、強い流れ・濁流だったことはわからなかった・見えなかった可能性がある。

街灯がほとんどなく、状況が把握できなかった可能性
街灯がほとんどなく、状況が把握できなかった可能性

なぜなら、現場の市道には辺りを照らす街灯はほとんどない。当時も暗かったことが想像できる。

野崎さんによれば「(近くの)工業団地の明かりはあるが、道路自体は街灯で直接照らされている感じではなく暗い」という。

明かりが少なく道路の状況はほとんど見えない
明かりが少なく道路の状況はほとんど見えない

夜の現場の市道の映像では、ヘッドライトが当たり、道路脇のポールの反射材や水没した車1台はうっすらと確認できるが、約1kmある道路の状況はほとんど見えない。

当時、停電にはなっていなかったが、大雨でさらに視界は悪かったと思われる。
2人はこの暗闇の中、救助に向かい濁流に流された。

「最大級の警戒が必要」な状況

玉谷巡査長から「パトカーが流された」と110番通報があったのは、25日午後11時45分ごろ。
この少し前の11時40分、新庄市に大雨特別警報が発表されていた。

新庄市内は「これまでに経験したことのないような重大な危険が差し迫っていて、ただちに身の安全を確保し、命を守るための最大級の警戒が必要」な状況だった。

野崎香織さん:
ずっと水害があるところだと警戒するが、ここは水害があまりない。この様子を見ると『次は気を付けないといけない』と思う。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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