旅館が取り組む“副業のススメ”

新型コロナウイルスに悩む地方に、今、起きている変化とは。
感染拡大に苦慮する旅館が始めた“副業のススメ”を取材した。

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輝くように実るサクランボを手際よく収穫する2人の女性。
彼女たちの素顔は、老舗旅館の仲居さん。

布施美樹さん

山形・天童市にある「ほほえみの宿 滝の湯」。

この旅館で仲居として働く布施美樹さんと東海林香那さん。

東海林香那さん

夕食の準備に大忙しのようだが...。

東海林香那さん:
満杯じゃないです、全然。22のうち今日は10カ所なので半分くらい。

4月、そして5月と休業を余儀なくされたうえ、サクランボが旬を迎えた6月・7月も客足が戻っていないのが現状だという。

こうした中、今、この旅館が新たに取り組んでいるのが“副業のススメ”。
この日、2人がいたのは、天童市内の観光農園「王将果樹園」。

王将果樹園

旬を迎えたサクランボの収穫や出荷の作業を行っていた。

6,000kg分のサクランボを旅館の従業員が収穫

布施美樹さん:
本当に初めてです。本当に何もかも初めてで。

布施美樹さん

実は、毎年2万人以上がサクランボ狩りに訪れるこちらの農園だが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の懸念からすべて中止に。

6,000kg分のサクランボを自力で収穫する必要があったため、地元旅館の従業員が副業として働くことになった。

従業員の健康維持、スキルアップに副業は重要

ほほえみの宿 滝の湯・山口敦史社長:
仕事がないので会社に来られない、ずっと家にいる、これは彼らにとって非常にストレスがたまってくる。従業員の心身ともに健康を維持するためにも(副業は)非常に重要なこと。

ほほえみの宿 滝の湯・山口敦史社長

今後も継続して、この副業を勧めていくという旅館側。

その背景には、仲居さんの収入面だけではない本業に還元するある効果が得られているから。

東海林香那さん:
サクランボは山形でも有名なものなので、副業をしたことで県外から来たお客さまに伝えられることも多くなって、接客に対してのスキルアップができたのではないか。

東海林香那さん

日本全国の宿泊施設や観光地が打撃を受ける今、地方の副業は新たな地域経済の循環の手段として期待される。

山口敦史社長:
人口が減ってきますから、地方は特に。
こうなったときにもっともっと生産性を上げなければいけない。
地域全体の生産性を上げなくてはいけない。
副業は余った時間や人材を配分するので、非常に(最適な)生産性の上げ方だと思います。

多様性は不確実性への備えに

内田 嶺衣奈キャスター:
メガバンクが副業を認めるなど、働きながら別の仕事を持つことが珍しくなくなってきましたね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏:
終身雇用の時代は1つの会社で勤め上げるから副業は御法度だったと思います。
ただ、今の時代は副業は企業にとっても従業員にとってもお互いにメリットがあるのかもしれません。

副業は会社にとっては様々な社外の経験をしてきた社員が、社外の知識を企業に取り込むというメリットも考えられるわけです。

内田 嶺衣奈キャスター:
働く側のメリットはどんなことがあるのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏:
個人の場合にはまず収入のプラスがあります。
また、新しい世界を見て人的ネットワークが広がるし、本業と副業を両立させる効率性のスキルも上がるかもしれません。

そうした人材は企業にとって宝と見た方がいいです。
多様性は不確実性への備えとなります。アフターコロナの時代、不確実性に対応するために多様な人材を確保しておくことは企業にとってメリットになるので、もはや副業を禁止する理由は無いのかもしれません。

内田 嶺衣奈キャスター:
そうですね。働き方が多様化している今、自分の強みを伸ばしていけるのはとても良いことだと思います。副業のつもりで始めた仕事が気が付けば本業になる。そんなことも十分にあり得るのでは無いでしょうか。

(「Live News α」8月12日放送分)